近年、「スマートシティ」という言葉をニュースや行政の資料でよく目にするようになりました。しかし、具体的に何を指しているのか、どんな技術が使われているのか、自分たちの暮らしにどう関係するのかを説明できる人は意外と少ないかもしれません。スマートシティとは、AI・IoT・ビッグデータなどの先端技術と官民データを組み合わせ、都市や地域が抱えるさまざまな課題を解決しながら、住民の生活の質(QoL)を高めていく取り組みのことです。国土交通省の資料では、「新技術を活用して都市の計画・整備・管理運営を全体最適化し、持続可能な都市または地区を実現する取り組み」と説明されています。
この記事でわかること
- スマートシティは「技術導入」が目的ではなく、「課題解決の手段」である
- 交通・防災・エネルギー・行政サービスなどを横断的に最適化する
- 住民・企業・行政の三者が恩恵を受ける仕組みを目指している
- 国内では実証段階から実装段階へ移行しつつある
- スーパーシティ構想など、より広範な取り組みへと発展している
- シンガポールやエストニアなど海外でも国家規模の取り組みが進む
- 実際にスマートシティを支える主要企業や、企業主導で進む先進事例もある
スマートシティとは何か

スマートシティは、単に最新技術を街に取り入れるプロジェクトではありません。少子高齢化・人口減少・インフラ老朽化・エネルギー問題など、都市が直面する構造的な課題に対して、デジタル技術を活用しながら持続可能な解決策を探る取り組みです。ここでは、定義と考え方の基本を整理します。
定義と基本的な考え方
内閣府や国土交通省の資料によると、スマートシティとは「ICT・AI・IoT・官民データなどの新技術を活用し、都市や地域が抱える諸課題の解決と新たな価値創出を図る取り組み」と定義されています。重要なのは、技術そのものが目的なのではなく、あくまでも課題解決の「手段」として位置づけられている点です。
たとえば、高齢化が進む地方都市では移動手段の確保が大きな課題です。この問題に対してAIを活用したデマンド交通(需要に応じて運行する乗合交通)を導入するのは、スマートシティの取り組みの一例です。技術を導入することが先にあるのではなく、「何を解決したいか」が出発点になります。
また、スマートシティは「分野横断」で考えることが求められます。交通・防災・エネルギー・医療・行政サービスなど複数の分野をバラバラに最適化するのではなく、データを共有・連携させながら全体として最適な状態を目指すことが本質です。
なぜ今スマートシティが注目されるのか
日本では、人口減少・高齢化・インフラの老朽化・財政制約といった問題が同時進行しています。これらは従来の方法だけでは解決が難しく、新たなアプローチが必要とされています。スマートシティはその答えの一つとして、国内外で急速に関心が高まっています。
国際的にも、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の目標11「住み続けられるまちづくりを」との親和性が高く、世界各国でスマートシティ政策が推進されています。日本においても、国土交通省・内閣府・経済産業省などが連携してスマートシティの実装を支援しています。
スマートシティが目指す持続可能なまちづくりの発想は、地方創生とSDGsの取り組みとも重なる部分が多くあります。両者のつながりについては地方創生とSDGsとは?取り組み事例や背景を徹底解説で詳しく紹介されています。
スマートシティでできること

スマートシティは、私たちの日常のあらゆる場面に関わります。交通や防災から、医療・教育・行政手続きまで、デジタル技術を使って利便性と安全性を高めるさまざまな取り組みが含まれます。具体的にどのようなことが実現できるのかを見ていきましょう。
交通・モビリティ分野
スマートシティの代表的な分野のひとつが交通です。AIを使って信号のタイミングをリアルタイムで制御し、渋滞を減らす「インテリジェント交通システム」は、すでに国内各地で実証が進んでいます。また、自動運転バスやAIデマンド交通の導入によって、過疎地域でも移動手段を確保しようとする試みも増えています。
駐車場の空き情報をスマートフォンで確認できる仕組みや、電車・バス・カーシェアを一つのアプリでまとめて予約・決済できるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)も、スマートシティの重要な要素です。これらが連携することで、自家用車に頼らない移動が現実的になります。
防災・安全分野
IoTセンサーを河川や斜面に設置して、大雨時の水位や地滑りのリスクをリアルタイムで把握する取り組みが各地で行われています。収集したデータをAIが解析して危険を早期に検知し、自動で住民に避難を呼びかけるシステムも実用化が進んでいます。
また、平時から住民の属性情報(高齢者や障害者の分布など)をデータとして管理しておくことで、災害時の避難支援を効率化することもできます。防犯カメラとAI画像解析を組み合わせた犯罪抑止の取り組みも、安全なまちづくりの一環として進んでいます。
エネルギー・環境分野
スマートグリッド(次世代送電網)を活用することで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを効率よく管理・配分できます。家庭・企業・電力会社の間でエネルギーの需給情報をリアルタイムに共有し、無駄のない電力利用を実現します。
スマートメーターの普及により、各家庭の電力使用量を細かく把握できるようになりました。このデータを分析することで、ピーク時の節電を促したり、異常な電力消費からトラブルを早期発見したりすることも可能です。
行政・市民サービス分野
行政手続きのデジタル化(オンライン申請・電子署名・マイナンバーカードとの連携)は、スマートシティの基盤となる取り組みです。住民が役所に出向かなくてもさまざまな手続きができるようになることで、高齢者や障害者の利便性も大きく向上します。
データを活用した政策立案(EBPM:証拠に基づく政策立案)も重要な要素です。人口動態・移動データ・医療データなどを分析することで、より的確な行政計画を策定できます。
スマートシティのメリット

スマートシティの取り組みがもたらす恩恵は、住民・企業・行政のそれぞれにとって異なる形で現れます。ここでは三者の視点からメリットを整理します。
住民にとってのメリット
住民にとって最も直接的なメリットは、日常生活の利便性と安心感の向上です。交通の最適化による渋滞解消・移動の効率化、医療データの共有による診察のスムーズ化、行政手続きのオンライン化による時間短縮など、日々の「不便」や「不安」が減っていきます。
高齢者や障害者にとっても、デジタル技術を活用したサポートが充実することで、自立した生活を続けやすくなります。遠隔医療や見守りセンサーの活用は、その代表例です。
企業にとってのメリット
企業にとっては、都市が持つデータと自社のサービスを組み合わせた新しいビジネスモデルを生み出す機会が広がります。たとえば、移動データと購買データを組み合わせた商業施設の立地分析や、スマートビルのエネルギー管理サービスの提供などが考えられます。
物流分野では、配送ルートの最適化や自動倉庫の導入により、コスト削減と生産性向上を同時に実現できる可能性があります。企業の社会的責任(CSR)の観点からも、環境負荷を低減するスマートシティへの参画は評価されやすくなっています。
行政にとってのメリット
行政にとっては、限られた財源と人材でより質の高い公共サービスを提供できる点が大きなメリットです。データ活用によって政策の効果を客観的に測定し、改善サイクルを回しやすくなります。インフラの予防的メンテナンスにAIを活用することで、修繕コストの削減も期待できます。
スマートシティの課題と注意点

スマートシティには多くの可能性がある一方で、実装を進めるうえで乗り越えるべき課題もあります。技術的な問題だけでなく、社会的・制度的な側面も含めて理解しておくことが大切です。
プライバシーとデータガバナンスの問題
スマートシティでは大量の個人データを扱うため、プライバシーの保護が最重要課題のひとつです。誰が・どのようなデータを・どの目的で使うのかを明確にするルール(データガバナンス)を整備しないと、住民の信頼を失う可能性があります。
防犯カメラや顔認証技術の活用については、安全性向上への期待と、監視社会への懸念が共存しています。技術の導入にあたっては、住民への丁寧な説明と同意形成のプロセスが欠かせません。
デジタルデバイドへの対応
スマートシティの恩恵を全ての住民が等しく受けるためには、デジタル機器の操作が不得意な高齢者や、インターネット環境が整っていない層への対策が必要です。スマートフォンを持っていることを前提にしたサービスだけでは、情報格差(デジタルデバイド)が生まれてしまいます。
デジタルとアナログを組み合わせたハイブリッドな対応や、タブレット端末の貸出・操作サポートといった支援策を並行して進めることが重要です。
縦割り行政と連携の壁
スマートシティは分野横断的な取り組みであるため、従来の縦割り行政の構造とぶつかることがあります。交通・医療・教育・環境など各部署がそれぞれにデータを管理していると、横断的な活用が難しくなります。
組織を横断したデータ連携や、官民パートナーシップの構築には、制度的な整備と行政内の意識改革が必要です。これは技術の問題というより、人と組織の問題といえます。
初期コストと持続可能性
スマートシティの整備には一定の初期投資が必要です。センサー・通信インフラ・プラットフォームの構築費用は小さくなく、とくに財政基盤が弱い自治体にとってはハードルとなることがあります。また、実証実験が終わった後に事業が継続されるかどうかも課題です。補助金に頼った取り組みは、支援が終わると停止してしまうケースがあります。
国内のスマートシティ事例

日本各地でスマートシティの取り組みが進んでいます。ここでは、規模や特徴の異なる代表的な事例を紹介します。いずれも、地域の課題を出発点にして、技術を活用した解決策を模索している点が共通しています。
自治体DXという切り口では、NTTデータが手がけてきた地方創生DXの事例からも、データ活用による地域課題解決の実践的なノウハウを学ぶことができます。NTTデータの地方創生DX事例から学ぶ、地域課題解決の実践ノウハウで具体的な取り組みが紹介されています。
会津若松市(福島県)
会津若松市は、日本のスマートシティ推進の先進事例として国内外から注目されてきた都市です。2011年の東日本大震災後の復興を契機として、データを活用したまちづくりを積極的に進めてきました。市民向けのアプリを通じて行政情報・観光情報・医療情報などを一元的に提供する取り組みは、全国的なモデルとなっています。また、会津大学と地元企業・行政が連携し、データ活用の人材育成にも力を入れています。
柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)
柏の葉スマートシティは、東京大学・千葉大学・三井不動産などが連携して開発した複合都市開発プロジェクトです。エネルギーの自律的な管理(スマートグリッド)、高齢者向け見守りサービス、健康づくり支援など、多様な取り組みが一体的に進められています。エリアエネルギーマネジメントシステム(AEMS)によって、地域全体の電力需給を最適化する仕組みは、日本国内でも先進的な事例です。
北九州市(福岡県)
北九州市は、製造業の集積地としての強みを活かしながら、省エネルギーと環境技術を核にしたスマートシティを推進しています。八幡東区の日明地区では、市・大学・企業が連携してスマートコミュニティの実証実験を行い、エネルギー使用量の削減効果が確認されています(具体的な数値は公表資料を参照)。アジア向けに日本のスマートシティノウハウを輸出する「スマートシティ海外展開」にも積極的です。
つくば市(茨城県)
研究学園都市として知られるつくば市は、自動運転バスの公道走行実証実験を国内でもいち早く進めた都市です。国の「スーパーシティ型国家戦略特区」にも選定されており、先端技術の実証と規制緩和を組み合わせた取り組みが注目されています。また、市内の歩行空間データを整備して自動走行ロボットの配送実証を行うなど、モビリティ分野で先進的な取り組みを続けています。
海外のスマートシティ事例
スマートシティは日本国内に限らず、国全体でデジタル化を進める国もあります。ここでは、国家レベルで取り組みを進めるシンガポールとエストニアの事例を紹介します。
シンガポール「Smart Nation」
シンガポールは「Smart Nation」という国家戦略のもと、政府主導でデジタル化を進めてきた国です。信頼(Trust)・成長(Growth)・地域社会(Community)の3つを柱に掲げ、行政手続きのデジタル化から高齢者などへのデジタル活用支援まで、一貫した政策として取り組んでいます。IMD(国際経営開発研究所)による2026年のSmart City Indexでは世界9位、World Digital Competitiveness Rankingでは世界1位にランクされており、国際的な評価も高い水準にあります(Smart Nation Singapore公式サイトより、2026年8月時点)。
エストニア「e-Estonia」
エストニアは「e-Estonia」という取り組みのもと、行政手続きのほぼすべてをオンラインで完結できる仕組みを整備してきました。電子IDによる本人確認基盤(e-Identity)と、行政サービスをオンラインで提供する仕組み(e-Governance)が中核です。これまでに150以上の国・地域から6,670件を超える視察団を受け入れており、自国の電子政府モデルを海外に紹介する取り組みも積極的に行っています(e-Estonia公式サイトより、2026年8月時点)。都市そのものより行政サービスのデジタル化に重心を置く点が、シンガポールとの違いです。
参照:e-Estonia
スマートシティで使われる技術

スマートシティを支える技術は多岐にわたります。それぞれの技術が単独で機能するのではなく、組み合わさることで都市全体の最適化が実現します。主要な技術の概要を理解しておくと、スマートシティの取り組みへの理解が深まります。
IoT(モノのインターネット)
IoTは、センサーや通信機能を備えた「モノ」がインターネットを通じてデータを送受信する技術です。スマートシティでは、河川水位センサー・交通量センサー・スマートメーター・見守りカメラなど、街のあちこちにIoTデバイスが設置されます。これらが収集するリアルタイムデータが、都市管理の基盤となります。
AI(人工知能)と機械学習
IoTが収集した膨大なデータを分析し、パターンを見つけて予測・判断を行うのがAIです。交通渋滞の予測、エネルギー需要の最適化、異常検知、チャットボットを使った行政問い合わせ対応など、スマートシティの多くの場面でAIが活用されています。
ビッグデータとデータ基盤
スマートシティでは、行政・民間・センサーなどさまざまな場所から大量のデータが生まれます。これを安全に収集・蓄積・分析・共有するためのデータ基盤(プラットフォーム)の整備が不可欠です。各地でデータ連携基盤の構築が進んでおり、標準化の取り組みも行われています。
こうした分野横断型のデータ連携基盤の代表例として、官民のデータをつなぐ「ウラノス・エコシステム」も近年注目を集めています。仕組みの詳細はウラノス エコ システムとは?日本のデータ連携基盤をわかりやすく解説で解説しています。
5GとLPWA
5Gは高速・大容量・低遅延の通信規格で、自動運転や遠隔医療など、リアルタイム性が求められるサービスを支えます。一方、LPWA(低消費電力広域通信)は、少ない電力で広範囲にデータを飛ばせる通信技術で、電池駆動のセンサーが広い地域に分散するスマートシティ向きです。用途によってこれらの通信技術を使い分けることが重要です。
デジタルツイン
デジタルツインとは、現実の都市をデジタル空間上に精巧に再現した「仮想都市」のことです。この仮想都市上でシミュレーションを行い、新たなインフラ整備や交通規制の効果を事前に検証することができます。内閣府や国土交通省が推進する「3D都市モデル(PLATEAU)」はその代表的な取り組みです。
スマートシティとスーパーシティの違い

スマートシティに関連した言葉として「スーパーシティ」があります。ニュースで混同して使われることがありますが、両者には明確な違いがあります。正確に理解しておくと、政策動向を把握しやすくなります。
スーパーシティとは
スーパーシティは、2020年に成立した「スーパーシティ法(国家戦略特別区域法の改正)」に基づいた制度的な枠組みです。スマートシティの取り組みをさらに一歩進めて、大胆な規制緩和・データ連携・住民の合意形成を前提に、生活丸ごとのイノベーションを目指す特区です。
スマートシティが主に個別分野(交通・エネルギーなど)の課題解決を目指すのに対し、スーパーシティは「丸ごと未来都市」を標榜し、医療・教育・交通・行政・エネルギーなど複数分野を一体的に変革することを狙います。つくば市・大阪市などがスーパーシティ型国家戦略特区に選定されています。
参照:つくば市「国家戦略特別区域諮問会議において、つくば市をスーパーシティとして指定することが決定されました」(2022年4月指定、2026年8月時点で継続中)
スマートシティのこれからの展望

スマートシティは実証から実装へと移行する段階を迎えており、国内外でその動きが加速しています。将来の都市像と、私たちの暮らしへの影響を展望してみましょう。
実証から実装へ
これまでのスマートシティの多くは実証実験の段階にとどまっていましたが、近年は「実装化支援」が政策の重点に置かれるようになっています。内閣府が推進する「スマートシティ関連事業府省庁連絡会議」では、各省の事業を横断的に調整しながら、全国各地への実装を促進しています。
生成AIの活用可能性
2023年以降に急速に普及した生成AI(大規模言語モデル)は、スマートシティの行政サービスや市民コミュニケーションを大きく変える可能性があります。行政の問い合わせ対応の自動化・多言語対応・高齢者向けのやさしい情報提供など、具体的な活用が模索されています。ただし、情報の正確性や個人情報の取り扱いに関する課題も並行して議論されています。
地方都市への広がり
スマートシティの取り組みはかつて大都市や特定の新興都市に集中していましたが、近年は地方の中小都市にも広がっています。人口減少・担い手不足・移動困難といった課題が深刻な地方ほど、スマートシティの技術が「生活インフラの維持」に直結します。コスト面での障壁を低減するため、複数の自治体が連携して取り組む「広域スマートシティ」の構想も出てきています。
スマートシティに取り組む主要企業一覧
スマートシティは自治体だけで実現できるものではなく、都市OSの構築やコンサルティング、エネルギー・モビリティ分野のソリューションを提供する企業の存在が欠かせません。ここでは、公式サイトで事業内容を確認できる企業を五十音順に紹介します。以下は2026年8月時点で確認できる情報に基づく編集部独自の紹介であり、掲載順に優劣の意味はありません。
アクセンチュア
アクセンチュアは、都市OS(データ連携基盤)の設計から実装までを一貫して支援する総合コンサルティング企業です。都市戦略の策定、都市OS基盤の構築、交通・教育など複数分野にまたがるサービス設計、官民連携の推進までを支援範囲としています。2011年から会津若松市のスマートシティ推進を継続的に支援し、2015年から都市OSを運用してきた「会津モデル」を、国内外の他地域に展開している点が特徴です。
NEC
NECは、データ連携基盤となる都市OSと、防災・エネルギー・医療・モビリティ・観光など分野別サービスを組み合わせたスマートシティ事業を展開しています。自治体・企業・住民が一体となって取り組める枠組みの提供を支援範囲としています。「地域固有のらしさ」を軸に、その地域に合わせてサービスを組み替えられる設計を掲げている点が特徴です。
参照:NEC スマートシティ
日立製作所
日立製作所は、行政データ・センサーデータ・モビリティデータなどを集約する都市OSと、住民向けサービスを組み合わせて提供しています。自治体向けのデータ統合基盤の構築から、福祉・医療・行政効率化まで幅広い分野を支援範囲としています。デジタル庁推奨モジュールやOSSをベースに、自社のLumadaサービスと組み合わせたビルディングブロック方式を採用している点が特徴です。
参照:日立製作所 スマートシティ(自治体:公共ITソリューション)
富士通
富士通は、行政のデジタルトランスフォーメーション(自治体DX)を中心に、住民サービスの利便性向上と職員の業務効率化を両立させるソリューションを提供しています。申請・届出のオンライン化から、福祉分野の業務システム、LGWAN連携基盤まで幅広く支援範囲としています。限られた行政リソースの中で「地域社会全体の最適化」を掲げ、住民向けサービスと庁内業務の両面から支援している点が特徴です。
パナソニック
パナソニックは、エネルギー管理・スマートホーム・セキュリティ・モビリティ・医療などを組み合わせた街づくり自体を手がけている点が他社と異なります。神奈川県藤沢市の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」では、街区の企画からエネルギーマネジメントシステムの導入までを支援範囲としています。「Tech innovation」から「Lifestyle innovation」への転換を掲げ、100年続く持続可能なまちを目標にしている点が特徴です。
参照:パナソニック Fujisawa SST スマートシティ事業
| 企業名 | 主な支援領域 | 特徴 | 参照 |
|---|---|---|---|
| アクセンチュア | 都市OS構築・コンサルティング | 会津若松市を起点とした「会津モデル」の展開 | 公式サイト |
| NEC | 都市OS・分野別サービス | 地域固有の特性に合わせたサービス設計 | 公式サイト |
| 日立製作所 | データ統合基盤・住民サービス | デジタル庁準拠のビルディングブロック方式 | 公式サイト |
| 富士通 | 自治体DX・行政業務効率化 | 住民サービスと庁内業務の両面を支援 | 公式サイト |
| パナソニック | 街区開発・エネルギーマネジメント | 街づくり自体を自社で手がける | 公式サイト |
企業が主導するスマートシティ事例
スマートシティは自治体が主導するケースだけでなく、民間企業が自ら街づくりを手がけるケースもあります。ここでは、企業が主導して開発・運営しているスマートシティを、事業開始が早い順に紹介します。
三井不動産「柏の葉スマートシティ」(千葉県柏市)
三井不動産は、2005年から柏の葉エリアで公・民・学連携によるまちづくり「柏の葉スマートシティ」を進めています。エリアエネルギーマネジメントシステム(AEMS)による電力融通、健康まちづくり、起業支援施設「KOIL」の運営などを事業範囲としています。2016年に国際的な環境認証「LEED-ND」で日本初のプラチナ認証を取得している点が特徴です。
トヨタ自動車「Woven City」(静岡県裾野市)
トヨタ自動車は、東富士工場の跡地に実証都市「Woven City」を建設し、企業やスタートアップ(Inventors)と住民(Weavers)が実際に暮らしながら新しい製品・サービスを検証する場を提供しています。Phase 1の建設を2024年10月に完了し、2025年秋以降トヨタの従業員とその家族約100人が入居を開始、将来的には全フェーズで約2,000人規模への拡大を計画している点が特徴です(トヨタ自動車公式サイトより、2026年8月時点)。
東急不動産・ソフトバンク「Smart City Takeshiba」(東京都港区)
東急不動産とソフトバンクは、竹芝地区で「Smart City Takeshiba」を共同で推進しています。人流データ・来街者属性データ・道路状況・水位などをリアルタイムで収集し、複数の事業者が活用できるデータ流通プラットフォームの構築を事業範囲としています。2020年に東京都「スマート東京」実現プロジェクトに採択され、都市OSやデジタルツインを活用した防災力強化にも取り組んでいる点が特徴です。
よくある質問

参照:国土交通省「令和8年度スマートシティ実装化支援事業の公募」
スマートシティの整備費用は、自治体が全額を負担するケースは多くありません。国土交通省は令和8年度「スマートシティ実装化支援事業」として、都市サービス実装タイプ(上限3,500万円)、戦略的スマートシティ実装タイプ(上限5,000万円)の2種類の補助を用意しており、民間企業との官民連携(PPP/PFI)の枠組みで整備を進めるケースが一般的です(国土交通省より、2026年1月時点)。
スマートシティでは多くのデータを扱うため、個人情報の保護は最重要の課題です。個人情報保護法・マイナンバー法などの法令に基づいた適切な管理が前提となり、各自治体や事業者が独自のデータポリシーを定め、住民への説明と同意形成(インフォームドコンセント)を行うことが求められます。住民が自分のデータをどのように使われているかを確認・制御できる仕組みの整備も、今後の重要な課題です。
スマートシティに「向いている都市」「向いていない都市」という区別はありません。大都市では交通・エネルギー効率化や高度な行政サービスのデジタル化が中心になりやすく、地方都市では移動困難・医療アクセス・防災・農業DXなどの課題解決が焦点になります。規模の大小に関わらず、地域固有の課題を出発点として取り組みを設計することが成功の鍵です。
スマートシティの取り組みは、行政や企業だけが進めるものではありません。自治体が開催するワークショップや意見募集に参加すること、行政のアプリやサービスを実際に使って感想をフィードバックすることが、住民として関わる具体的な方法です。デジタルリテラシーを高めることも、スマートシティの恩恵を受けるうえで大切な準備といえます。
スマートシティはインフラの制御を含めてデータ連携基盤に依存するため、サイバー攻撃を受けた場合の影響範囲が広くなるリスクがあります。信号制御やエネルギー管理などの都市機能がネットワーク障害や不正アクセスで停止すれば、住民の生活に直接影響します。データ連携基盤のセキュリティ対策や、障害発生時に手動運用へ切り替えられる体制の整備が、技術導入と並行して求められます。
まとめ

スマートシティとは、AIやIoTなどの技術を活用して都市や地域の課題を解決し、住民の生活の質を高めるまちづくりの取り組みです。技術導入が目的ではなく、課題解決の手段として位置づけることが重要です。プライバシー保護やデジタルデバイドといった課題にも向き合いながら、住民・企業・行政が連携して進めていくことが、スマートシティを成功させる鍵になります。
この記事のまとめ
- スマートシティは「課題解決の手段」であり、技術導入自体が目的ではない
- 交通・防災・エネルギー・行政など複数分野を横断して最適化することが本質
- 住民・企業・行政の三者がそれぞれ異なるメリットを受ける
- プライバシー保護・デジタルデバイド・縦割り行政が主な課題
- 会津若松・柏の葉・北九州・つくばなど国内で先進事例が蓄積されている
- IoT・AI・5G・デジタルツインなどの技術が組み合わさって機能する
- スーパーシティはスマートシティをさらに発展させた制度的な枠組みである
- 実証から実装へのフェーズに移行しており、地方都市への広がりも加速している
- シンガポール・エストニアなど、海外でも国家規模でのデジタル化が進んでいる
- 都市OSやコンサルティングを提供する企業、企業主導のスマートシティ開発も広がっている


