環境コミュニケーション大賞は、環境省と一般財団法人地球・人間環境フォーラムが主催してきた企業の環境報告を表彰する制度で、令和2年度(第24回)を最後に休止しており、2026年9月時点で新たな募集は行われていません。
この記事でわかること
- 環境コミュニケーション大賞の基本的な仕組みと主催者
- 環境報告部門・環境経営レポート部門の評価区分
- 24回にわたる実施の歴史と休止に至った現状
- 休止後に案内されている後継の表彰制度
- 環境コミュニケーション大賞の受賞企業例と、報告書制作を支援する会社
環境コミュニケーション大賞とは

環境コミュニケーション大賞とは、CSR報告書・統合報告書・環境経営レポートなど多様な媒体での優れた環境報告を表彰し、企業の環境コミュニケーションの質の向上を促す制度です。
主催は環境省と一般財団法人地球・人間環境フォーラムで、日本経済新聞社が後援していました。対象は企業が発行するCSR報告書・統合報告書・環境経営レポートなど、環境に関する情報を含む報告書全般です。単独の環境報告書だけでなく、統合報告書の中の環境関連の記載も評価対象に含まれていた点が特徴です。
似た名前の表彰制度に統合報告書アワードがありますが、こちらは財務情報と非財務情報を統合した報告書全体の完成度を評価する制度で、環境コミュニケーション大賞のように環境報告そのものに特化していたわけではありません。両者の違いは統合報告書アワードの3種類を解説した記事で詳しく取り上げています。
この制度が評価してきたのは、単に環境活動の量ではなく、読み手であるステークホルダーに活動の意図と成果がどれだけ伝わるかという「伝え方」の質です。企業が排出量削減や生物多様性保全に取り組んでいても、その内容が投資家や消費者に正しく伝わらなければ評価にはつながりません。環境コミュニケーション大賞は、活動そのものよりも報告書という媒体を通じたコミュニケーションの巧拙に焦点を当てていた点で、他の環境系の認定制度とは性格が異なります。
参照:環境省 環境コミュニケーション大賞(2026年9月確認)
部門と評価カテゴリー
環境コミュニケーション大賞には「環境報告部門」と「環境経営レポート部門」の2部門があり、部門ごとに複数の賞区分が設けられていました。
環境報告部門は主に大企業が対象で、環境報告大賞・気候変動報告大賞・環境報告優秀賞・気候変動報告優秀賞・生物多様性報告特別優秀賞・信頼性報告特別優秀賞など、テーマ別に細分化された賞区分が用意されていました。環境経営レポート部門は、中小事業者など、より簡易な環境経営レポートを発行する事業者を対象とした部門で、大賞・優秀賞・優良賞・新人賞の区分がありました。第24回の実績では、環境報告部門で優良賞が26点、環境経営レポート部門で優良賞が25点選出されており、上位の大賞・優秀賞だけでなく裾野の広い表彰が行われていたことがわかります。
| 部門 | 主な受賞区分(例) | 主な対象 |
|---|---|---|
| 環境報告部門 | 環境報告大賞、気候変動報告大賞、環境報告優秀賞、気候変動報告優秀賞、生物多様性報告特別優秀賞、信頼性報告特別優秀賞、優良賞 | CSR報告書、統合報告書、環境報告書などを発行する企業 |
| 環境経営レポート部門 | 大賞、優秀賞、優良賞、新人賞 | 中小事業者などが発行する環境経営レポート |
環境報告部門には、このほかにも大学や独立行政法人などの公的機関を対象にした「環境配慮促進法特定事業者賞」という区分があり、京都大学や千葉大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが受賞しています。環境コミュニケーション大賞は民間企業だけでなく、環境配慮促進法にもとづき環境報告書の作成が義務づけられている独立行政法人や国立大学法人も評価対象に含めていた点が、他の企業向けアワードとは異なる特徴です。
評価の担い手も部門・区分によって異なり、最上位の「大賞」は環境大臣賞、その下の「優秀賞」は地球・人間環境フォーラム理事長賞、生物多様性や信頼性など特定テーマの特別優秀賞はそれぞれの分野の団体(サステナビリティ情報審査協会など)が名を連ねるという構成でした。単一の審査主体がすべてを評価するのではなく、複数の専門機関が分野ごとに評価に関わっていたことも、この制度の特徴のひとつです。
参照:環境省 第24回環境コミュニケーション大賞 受賞一覧(別紙)(2021年公表分)
沿革|24回にわたる実施の歴史

環境コミュニケーション大賞は、第24回まで継続的に開催された長期実施のアワードで、毎回数十社規模の企業が受賞していました。
主催者である地球・人間環境フォーラムの公式ページには、第1回から第24回までの受賞企業一覧が掲載されており、業種を問わず幅広い企業が参加してきたことが確認できます。近年の受賞では、第22回(2019年公表)にトヨタ自動車や味の素、第23回(2020年公表)にコニカミノルタや丸井グループ、第24回(2021年公表)に住友林業やキリンホールディングスが上位の大賞・気候変動報告大賞を受賞しています。具体的な受賞企業の例は、後述の「受賞企業の例」で紹介します。
受賞企業の顔ぶれを見ると、製造業・小売業・金融業・エネルギー業など特定の業種に偏らず、幅広い分野の企業が名を連ねていることがわかります。第22回では優良賞だけで59点が選出されており、上位の大賞・優秀賞を狙う大企業だけでなく、地域の中堅企業や地方自治体まで参加していました。長年にわたり業種横断で開催されてきたことが、環境コミュニケーション大賞を環境報告分野における代表的な表彰制度たらしめていた理由のひとつといえます。
参照:一般財団法人地球・人間環境フォーラム 環境コミュニケーション大賞(2026年9月確認)
休止中の現状と後継となる表彰制度
環境コミュニケーション大賞は令和2年度(第24回)の開催を最後に休止しており、2026年9月時点で再開の発表はありません。休止の理由は環境省の公式サイトでも明示されていません。
環境省は、環境報告部門にこれまで応募していた企業に対して「ESGファイナンス・アワード・ジャパン[環境サステナブル企業部門]」への応募を、環境経営レポート部門の事業者に対しては「エコアクション21 オブ・ザ・イヤー」への応募を案内しています。エコアクション21の認証制度自体の費用や取得支援会社については、エコアクション21とは?費用相場と取得支援会社を解説した記事で取り上げています。
ESGファイナンス・アワード・ジャパンは、環境コミュニケーション大賞とは主催の枠組みが異なり、投資家・金融機関・企業を対象にした5部門構成のアワードです。環境報告そのものではなく、環境関連のリスクと機会を経営戦略に組み込んだ開示や取り組みを評価する制度である点が異なります。5部門は、年金基金や保険会社などを対象にした「投資家部門」、銀行など間接金融を担う機関向けの「金融機関部門」、証券会社や格付機関などの「金融サービス部門」、グリーンボンドなどで資金調達した企業・団体向けの「資金調達者部門」、そして環境コミュニケーション大賞の環境報告部門の受け皿にあたる「環境サステナブル企業部門」で構成されています。環境サステナブル企業部門は企業規模を問わず応募できる点が特徴です。
一方、環境経営レポート部門の受け皿であるエコアクション21 オブ・ザ・イヤーは、エコアクション21中央事務局が運営する制度で、エコアクション21の認証・登録事業者を対象としています。環境コミュニケーション大賞の環境経営レポート部門が中小事業者を主な対象としていた点を引き継ぐ形の後継制度になっています。
参照:環境省 ESGファイナンス・アワード[環境サステナブル企業部門](2026年9月確認)
環境コミュニケーション大賞 受賞企業の例

環境コミュニケーション大賞では、業種を問わず幅広い企業が上位の大賞・気候変動報告大賞を受賞してきました。ここでは直近3回(第22回〜第24回)の大賞・気候変動報告大賞の受賞企業を、受賞回の新しい順に紹介します。同一回内は五十音順としており、順位や推奨順を示すものではありません。環境報告優秀賞や優良賞も含めると受賞企業はさらに多数にのぼりますが、ここでは各回の最上位区分にあたる大賞・気候変動報告大賞の受賞企業に絞って取り上げます。
| 企業名 | 受賞回 | 受賞名 |
|---|---|---|
| キリンホールディングス株式会社 | 第24回 | 気候変動報告大賞 |
| 住友林業株式会社 | 第24回 | 環境報告大賞 |
| コニカミノルタ株式会社 | 第23回 | 環境報告大賞 |
| 株式会社丸井グループ | 第23回 | 気候変動報告大賞 |
| トヨタ自動車株式会社 | 第22回 | 環境報告大賞 |
参照:環境省 第24回環境コミュニケーション大賞の受賞作品決定について(2021年公表分)、環境省 第23回環境コミュニケーション大賞の受賞作品決定について(2020年公表分)、環境省 第22回環境コミュニケーション大賞の受賞作決定について(2019年公表分)
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングスは、ビール・飲料・医薬を中核とする総合飲料メーカーで、第24回環境コミュニケーション大賞の気候変動報告大賞を「キリングループ環境報告書2020」で受賞しました。グループの環境報告書で気候変動対応の取り組みを継続的に開示してきた点が評価されています。原材料調達を農業に依存する飲料メーカーとして、気候変動リスクを事業インパクトの観点から説明している点が特徴です。
住友林業株式会社
住友林業は、木材・住宅事業を主力とする企業で、第24回環境コミュニケーション大賞の環境報告大賞を「住友林業グループ サステナビリティレポート2020」で受賞しました。サステナビリティレポートと統合報告書の両方で森林価値創造に関する情報を開示している点が特徴です。森林経営から木材・建材の製造流通、住宅建築、木質バイオマス発電までを「木」でつなぐ事業構造そのものを、森林のCO2吸収や炭素固定への貢献として報告書全体で一貫して説明しています。
参照:住友林業 公式サイト
コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタは、複合機・計測機器などを手がける精密機器メーカーで、第23回環境コミュニケーション大賞の環境報告大賞を「コニカミノルタCSRレポート2019」「コニカミノルタ環境報告書2019」で受賞しました。CSRレポートと環境報告書を分けて発行し、環境分野の開示を掘り下げている点が評価されています。全社的なCSR活動の報告に加えて、環境分野に特化した報告書を別途用意することで、開示の専門性を高めている構成です。
株式会社丸井グループ
丸井グループは、小売・フィンテック事業を展開する企業で、第23回環境コミュニケーション大賞の気候変動報告大賞を「共創経営レポート2019」「VISION BOOK 2050」で受賞しました。財務情報と非財務情報を一体化した「共創経営レポート」という形式で開示を行っている点が特徴です。レポート名にも表れているとおり、投資家との「共創」を軸にした経営姿勢を報告書の構成全体に反映させている点が評価されています。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は、第22回環境コミュニケーション大賞の環境報告大賞を「環境報告書2018 -トヨタ環境チャレンジ2050に向けて-」「Sustainability Data Book 2018」「Annual Report 2018」の3媒体で受賞しました。「トヨタ環境チャレンジ2050」という長期目標を軸に環境報告書を構成している点が評価されています。単年度の実績報告にとどまらず、2050年に向けた長期目標との整合性を軸に据えている点が特徴です。
環境報告書・サステナビリティレポート制作を支援する会社
環境コミュニケーション大賞そのものは休止していますが、後継制度への対応や自社の環境報告の質を高めたい企業向けに、報告書の企画・制作を支援する会社を五十音順で5社紹介します。並び順に優劣の意味はありません。各社とも紙媒体・Web媒体の両方に対応し、企画立案から取材・原稿作成・デザイン・印刷までを一貫して支援している点は共通していますが、得意とする業種やコンサルティングの深さには違いがあるため、自社の課題に合わせて比較検討することをおすすめします。
統合報告書の制作会社をより幅広く比較したい場合は、統合報告書制作会社8社を比較した記事もあわせてご覧ください。
| 会社名 | 主なサービス | 対応範囲 |
|---|---|---|
| ココラボ | サステナビリティレポート・統合報告書制作 | 企画・取材・デザイン、Web/紙面の複合展開 |
| 三幸企画 | CSR・サステナビリティレポート制作 | 企画立案から取材・原稿・デザイン・校正までワンストップ |
| SOMPOリスクマネジメント | CSR・統合報告書制作支援 | 戦略立案からデザイン・DTP・印刷までの一貫支援 |
| 日経印刷 | 統合報告書・サステナビリティレポート制作 | マテリアリティ特定支援、TCFD対応、第三者レビュー |
| ブレーンセンター | サステナビリティレポート企画・制作 | GRI/SASB準拠の開示評価、ベンチマーク分析 |
ココラボ
ココラボは、サステナビリティレポートと統合報告書の両方の制作を支援する会社です。国際基準への準拠だけでなく、企業ごとのストーリーや価値観を反映した独自性のある報告書づくりを重視している点が特徴です。紙媒体・Webサイト・デジタルブックなど複数の発信形式に対応しており、SDGs・サステナビリティ戦略の策定支援や研修も合わせて提供しています。
三幸企画
三幸企画は、企画立案から取材・原稿作成・デザイン・校正までをワンストップで対応するCSR・サステナビリティレポート制作会社です。製造業・金融・ITなど業種を問わず上場企業の制作実績があり、GRI・TCFD・TNFDといった国際的なフレームワークの動向を踏まえながら、経営戦略と結びついた「自社らしいサステナビリティ」の可視化を支援しています。
参照:三幸企画 CSR・サステナビリティレポート制作サービス
SOMPOリスクマネジメント
SOMPOリスクマネジメントは、企画・戦略立案からデザイン・DTP・印刷までを一貫して支援する会社です。マテリアリティ特定やKPI設定などのコンサルティングと報告書制作を一体で提供している点が特徴です。国際統合報告評議会(IIRC)のフレームワークを踏まえ、財務情報と非財務情報を統合した開示によって、投資家をはじめとするステークホルダーとの対話と長期的な企業価値向上を後押しする姿勢を打ち出しています。
参照:SOMPOリスクマネジメント サステナビリティレポート・統合報告書作成支援
日経印刷
日経印刷は、統合報告書・サステナビリティレポートの制作に加えて、マテリアリティ特定支援やTCFD対応、第三者レビューまでを含めたコンサルティングを提供する会社です。自社でもCSR報告書を発行し、実践に基づく助言を行っている点が特徴です。倫理ハンドブックやSDGsブック、教育用マンガといった社内浸透ツールの制作や、ESGに関する最新動向を紹介する無料セミナーも定期的に開催しています。
ブレーンセンター
ブレーンセンターは、GRIスタンダードやSASBスタンダードなど国際基準をふまえた開示評価と改善提案を強みとするサステナビリティレポート制作会社です。同業他社とのベンチマーク分析をもとに、短期・中長期の改善計画を提案しています。Webサイトとの連動も見据えたうえでどの情報を開示するかを整理し、社内の複数部門にまたがる情報収集や合意形成のプロセスを円滑化する支援も行っています。
参照:ブレーンセンター サステナビリティレポートの企画・制作
よくある質問
環境コミュニケーション大賞について、よくある質問に回答します。
応募できません。令和2年度(第24回)を最後に休止しており、2026年9月時点で募集や応募受付は行われていません。環境省の公式サイトでも新たな募集の告知は見当たらず、応募を検討していた企業は後述する後継制度を確認することになります。
環境省の公式サイトでも休止の理由は明示されておらず、「令和2年度の開催をもって休止」という事実のみが案内されています。公式に理由が説明されていない以上、本記事でも推測にもとづく理由の断定は行いません。
あります。環境報告部門はESGファイナンス・アワード・ジャパン[環境サステナブル企業部門]、環境経営レポート部門はエコアクション21 オブ・ザ・イヤーへの応募が案内されています。どちらも環境省が関わる制度で、これまで環境コミュニケーション大賞に応募していた企業・事業者の規模や対象読者に応じて案内先が分かれています。
環境報告部門は主に大企業のCSR報告書・統合報告書・環境報告書を対象とし、環境経営レポート部門は中小事業者などが発行する簡易な環境経営レポートを対象としていました。賞区分の細かさにも差があり、環境報告部門はテーマ別に複数の特別賞が設けられていた一方、環境経営レポート部門は大賞・優秀賞・優良賞・新人賞というシンプルな構成でした。
統合報告書アワードは財務情報と非財務情報を統合した報告書全体の完成度を評価する制度で、環境コミュニケーション大賞は環境報告に特化していた点が異なります。また統合報告書アワードは現在も開催されている一方、環境コミュニケーション大賞は休止中という運営状況の違いもあります。
まとめ
環境コミュニケーション大賞は、環境省と地球・人間環境フォーラムが主催してきた企業の環境報告を表彰する制度で、環境報告部門と環境経営レポート部門の2部門・24回にわたって開催されましたが、令和2年度を最後に休止しています。休止後は、環境報告部門の企業にはESGファイナンス・アワード・ジャパン[環境サステナブル企業部門]、環境経営レポート部門の事業者にはエコアクション21 オブ・ザ・イヤーへの応募が案内されています。
過去の受賞企業を見ると、業種を問わず幅広い企業が環境報告の質で評価されてきたことがわかります。制度自体は休止していますが、環境報告書やサステナビリティレポートで自社の取り組みをどう伝えるかという課題は、後継制度の登場によって形を変えて続いています。過去の受賞企業の開示内容を参考にしながら、自社の環境報告の質を高めたい場合は、今回紹介した制作支援会社への相談も選択肢のひとつになります。