アニマルウェルフェアとは?5つの自由と国の指針・達成目標を解説

アニマルウェルフェアは、家畜を快適な環境で飼うことでストレスや疾病を減らし、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつなげるという考え方です。日本では2023年7月に農林水産省が畜種ごとの飼養管理指針を示し、2026年7月にはその「実施が推奨される事項」について令和12年度(2030年度)を目標年とする達成目標が設定されました。取り組む主体は生産者だけではありません。畜産物を仕入れる食品メーカーや小売業にとっても、調達方針の策定と情報開示に直結する経営課題になっています。

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアについて」(2026年9月時点)

この記事でわかること

  • アニマルウェルフェアの定義と国際原則「5つの自由」の中身
  • 農林水産省が示した8本の飼養管理指針と、法令との関係
  • 2026年7月に設定された達成目標と、2030年度に向けた具体的な目標値
  • 生産現場の調査で明らかになった、畜種に共通する弱点
  • 企業が調達・開示で押さえるべき論点と、相談できる認証・支援団体

アニマルウェルフェアとは何か

アニマルウェルフェアとは、動物が生きて死ぬ状態に関連した、動物の身体的および心的状態を指す言葉です。日本語では「動物福祉」と訳されます。

この定義は、世界の動物衛生の向上を目的とする国際機関である国際獣疫事務局(WOAH)の勧告によるものです。農林水産省は、家畜を快適な環境下で飼養することでストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながると説明しています。動物のためだけの取り組みではなく、経営の合理性と両立する考え方として位置づけられている点が特徴です。

農林水産省が国としての指針づくりに踏み切った背景には、畜産物の輸出拡大と、重要性が増すSDGsへの対応という国際的な動向があります。国際基準であるWOAHの陸生動物衛生規約が示す水準を満たしていくことが、指針の基本的な考え方として掲げられています。

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアについて」(2026年9月時点)、農林水産省「アニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針のポイント」(令和5年7月)

国際原則「5つの自由」とは

アニマルウェルフェアの状態を捉える国際的な原則が「5つの自由」です。農林水産省の畜産局長通知も、この5つの自由の確保に向けて、国際基準を満たすための具体的な対応をまとめたものが畜種ごとの技術的な指針であると位置づけています。

5つの自由現場での意味
飢え、渇き、栄養不良からの自由生理的要求を満たす飼料と水を、毎日過不足なく与える
恐怖および苦悩からの自由手荒な扱いや突発的な行動を避け、丁寧に取り扱う
物理的、熱の不快さからの自由暑熱対策・寒冷対策と換気で、快適な畜舎環境を保つ
苦痛、傷害、疾病からの自由除角や去勢の方法と時期に配慮し、疾病時は速やかに獣医師の診断を受ける
通常の行動様式を発現する自由横臥、起立、毛繕いなどのために十分な空間と運動の機会を与える

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針のポイント」(令和5年7月)

動物愛護管理法との関係

産業動物についても、動物の愛護及び管理に関する法律に基づく基準がすでに存在します。「産業動物の飼養及び保管に関する基準」(昭和62年10月9日総理府告示第22号)がそれにあたり、管理者および飼養者は産業動物の生理、生態、習性等を理解し、愛情をもって飼養するよう努めることが定められています。

ただしこの基準は一般原則を示すもので、畜種ごとの飼養方法まで踏み込んだものではありません。畜種ごとの具体的な飼養管理の水準を示しているのが、農林水産省の技術的な指針のほうです。両者は所管も性格も異なるため、企業が自社の調達基準を書くときは、どちらを参照しているのかを明示しておくと社内でも取引先でも誤解が生じにくくなります。

参照:環境省「産業動物の飼養及び保管に関する基準」(2026年9月時点)

日本の指針はどうなっているのか

飼槽に並んで飼料を食べる乳用牛の群れ

日本のアニマルウェルフェアの基準は、農林水産省が令和5年7月26日に公表した8本の技術的な指針にまとまっています。6畜種と、輸送・農場内安楽死の2分野が対象です。

それ以前は、公益社団法人畜産技術協会が国の支援を受けて作成した民間の自主的な指針が使われていました。ただし、実施が推奨される事項と将来的な実施が推奨される事項の区分が明確でないという課題があり、国が自ら指針を示す形に見直されています。

指針の対象通知番号(令和5年7月26日付け)
乳用牛5畜産第1063号
肉用牛5畜産第1064号
5畜産第1065号
採卵鶏5畜産第1066号
ブロイラー5畜産第1067号
5畜産第1068号
家畜の輸送5畜産第1069号
家畜の農場内における安楽死5畜産第1070号

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアについて」(2026年9月時点)

「実施が推奨される事項」と「将来的な実施が推奨される事項」

各指針の項目は2つの区分に分かれています。いま実施が推奨される事項と、将来的な実施が推奨される事項です。前者は現在の飼養実態を踏まえて達成が見込める水準、後者はより先を見据えた水準にあたります。

たとえば豚の指針では、ストールについて「壁や上の棒にぶつかることなく自然な姿勢で起立でき、隣の豚を邪魔せず快適に横臥できる適切な大きさのものを用いる」ことが実施が推奨される事項です。一方で「繁殖雌豚はなるべく群で飼うよう努める」は将来的な実施が推奨される事項に置かれています。採卵鶏でも、砂浴びのエリアやついばみのエリア、止まり木の設計に関する項目は将来的な事項です。

この区分は、企業が調達基準を書くときの現実的な線引きに使えます。取引先の農場に何を今すぐ求め、何を中期の改善目標として合意するかを、国の区分に沿って整理できるためです。

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針のポイント」(令和5年7月)

指針に法的な強制力はあるか

指針は畜産局長通知として発出されたものであり、罰則を伴う法規制ではありません。ただし農林水産省は、可能な項目については補助事業のクロスコンプライアンスの対象とする方針を示しています。補助事業の要件として組み込まれれば、実質的な影響力は通知の枠を超えます。

また、指針の発出後は実施状況を国がモニタリングすることも通知に明記されており、実際に令和5年度の試行調査と令和6年度の本格調査が実施されています。「守らなくてもよい目安」ではなく、進捗が測られる基準として運用されている点は押さえておく必要があります。

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針のポイント」(令和5年7月)

2026年7月に達成目標が設定された

農林水産省は令和8年7月31日付けで、指針のうち「実施が推奨される事項」の達成目標を設定しました。最初の目標年は令和12年度(2030年度)です。

目標の根拠になったのは、令和6年度に実施された生産現場の本格調査です。調査では各項目について「あてはまる」「ややあてはまる」などの選択肢で実施状況を聞き取り、その2つを合計した「あてはまる計」の割合が達成度の指標とされました。目標値はこの現状値をもとに機械的な考え方で設定されています。

ルール内容
達成の水準「あてはまる計」が90%に達すること
すでに90%以上の項目90%以上を維持しつつ「あてはまる」の割合向上を目指す(現状維持)
80%未満の項目現状から10ポイントの向上を暫定目標とする
畜種共通の4項目現状値に関わらず一律で90%を目標とする
目標設定期間食料・農業・農村基本計画等の見直し時期に合わせ、5年間ごとを基本とする
調査頻度隔年で実施する

参照:農林水産省「家畜の飼養管理に関する技術的な指針のうち『実施が推奨される事項』の達成目標について」(令和8年7月31日付け8畜産第1276号)

畜種共通で目標が置かれた4項目

持続的な経営を図るうえで基礎となる項目として、4項目が畜種横断で重点化されました。アニマルウェルフェアに関する知識の習得、危機管理マニュアル等の整備、その関係者間での共有、自然災害等に備える事前対策の実施の4つです。

この4項目は、いずれも設備投資ではなく管理体制の問題である点が共通しています。そして現状値を見ると、飼養管理そのものの項目より明確に低い水準にとどまっています。

項目乳用牛肉用牛採卵鶏肉用鶏
アニマルウェルフェアの指標や改善方法について知識を身に付けている69.8%74.5%78.6%83.0%74.2%69.8%
危機管理マニュアル等を整備している60.8%57.9%68.1%73.4%69.8%56.4%
危機管理マニュアル等を全ての農場関係者と共有している56.1%58.0%68.5%73.3%60.6%54.8%
自然災害等の影響に備え、可能な限り事前に対策をとっている78.6%78.1%84.0%88.4%98.8%78.5%

数値は令和6年度調査の「あてはまる計」です。令和12年度の目標はいずれも90で、すでに90%以上の肉用鶏の事前対策(98.8%)のみ現状維持とされています。総回答数は乳用牛375件、肉用牛760件、豚491件、採卵鶏409件、肉用鶏1,306件、馬387件です。

危機管理マニュアルの関係者間共有は、馬の54.8%から採卵鶏の73.3%まで、すべての畜種で目標の90に届いていません。取引先の農場に何を求めるかを考えるうえで、まず埋まっていないのが設備ではなく管理体制の部分だという事実は押さえておく価値があります。

参照:農林水産省「家畜の飼養管理に関する技術的な指針のうち『実施が推奨される事項』の達成目標について」(令和8年7月31日付け8畜産第1276号)

畜種ごとに残る課題

飼養方式そのものに踏み込む項目では、90%に届かず暫定目標が置かれたものがあります。達成水準の90%ではなく、現状から10ポイント上乗せした数値が目標になっている項目が、その畜種の構造的な課題を示しています。

畜種項目現状値令和12年度目標
乳用牛繋ぎ飼い方式の牛が、繋がれていない状態で十分に運動できるようにしている46.6%57
分娩予定日の少なくとも1日前に、繁殖雌豚が利用できる巣材を提供している68.5%79
採卵鶏換羽処理の際、24時間以上の絶食は行わないようにしている63.0%73
肉用鶏24時間の間に、継続した暗期を適切に設けている60.1%71
肉用鶏チェックリスト等を用いて定期的に飼養管理の現状を確認している53.8%64

最も低いのは乳用牛の繋ぎ飼いに関する項目で、令和12年度の目標も57にとどまります。国の目標設定自体が、2030年度時点でも半数近い農場では達成されない前提で組まれているということです。調達側の企業がここに一足飛びの水準を求めても、供給が付いてきません。

参照:農林水産省「家畜の飼養管理に関する技術的な指針のうち『実施が推奨される事項』の達成目標について」(令和8年7月31日付け8畜産第1276号)

世界の動向と日本の位置づけ

屋外の草地で過ごす採卵鶏

EUでは採卵鶏の飼養方式が法令で規制されており、日本は指針という推奨の枠組みでこれに追随している段階です。規制の有無が、日本と欧州の最も大きな違いです。

EUの理事会指令1999/74/ECにより、改良が加えられていないケージ(非エンリッチドケージ)は2012年1月1日以降、使用が禁止されています。認められているのは、1羽あたり750平方センチメートル以上のケージ面積を確保するエンリッチドケージか、有効面積1平方メートルあたり9羽を超えない飼養密度で鶏が自由に動ける代替システムのいずれかです。いずれの方式でも、営巣場所、止まり木、床材へのアクセスが求められます。

日本には、飼養方式そのものを禁じる法令はありません。前述のとおり採卵鶏の指針でも、砂浴びのエリアや止まり木に関する項目は「将来的な実施が推奨される事項」に置かれています。輸出を伸ばそうとすれば相手国の水準と向き合うことになり、これが国として指針を整えた動機のひとつでもあります。

参照:European Commission「Laying hens」(2026年9月時点)、農林水産省「アニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針のポイント」(令和5年7月)

なぜ企業の経営課題になるのか

アニマルウェルフェアは、畜産物を扱う企業にとって調達方針と情報開示の論点になります。生産現場を持たない食品メーカーや小売業でも、方針の策定と取引先への確認が求められるためです。

実際に、小売や食品メーカーが自社サイトで方針を公表する例が増えています。方針を出すこと自体が目的ではなく、何を対象に、どの原則に沿って、どこまで確認しているのかを説明できる状態にすることが実務の中身です。指針への準拠状況を取引先に確認している旨を明記している企業もあります。

開示のルールづくりの動きとあわせて考えると位置づけがはっきりします。制度の全体像はサステナビリティ開示の義務化と対象企業の記事で整理しています。

一方で、コストの問題は避けて通れません。キユーピーは自社サイトで、ケージ飼いには衛生的な飼育管理や労働生産性の面で長所があり買い求めやすい卵の価格につながっている一方、5つの自由をより高めると人件費や飼育設備の費用が増え、卵の値段は高くなると説明しています。調達方針を書く前に、その負担を誰がどう引き受けるのかを社内で詰めておく必要があります。

参照:キユーピー株式会社「鶏のアニマルウェルフェア」(2026年9月時点)

酪農と乳業ではどこが論点になるのか

屋根付きの運動場で自由に動く乳用牛

酪農では、繋ぎ飼い方式の牛に十分な運動をさせられているかが最大の論点です。令和6年度調査での実施率は46.6%で、6畜種の全項目のなかでも特に低い水準にあります。

乳用牛の指針は、このほかに除角を角が未発達な生後2か月以内に行うこと、断尾は牛の健康とアニマルウェルフェアの向上に寄与しないため行わないこと、分娩牛には床が平面で乾燥した分娩区域を提供することなどを求めています。断尾を行っていない農場の割合は87.7%で、令和12年度の目標は90とされました。

参照:農林水産省「家畜の飼養管理に関する技術的な指針のうち『実施が推奨される事項』の達成目標について」(令和8年7月31日付け8畜産第1276号)、農林水産省「アニマルウェルフェアに関する新たな飼養管理指針のポイント」(令和5年7月)

生乳は農場を特定しにくいという構造

生乳は複数の農場のものが集乳の段階で混ざるため、鶏卵のように「この農場のものだけを平飼いに切り替える」という調達の組み替えが難しい原料です。乳業では、個別の農場を指定するより、生産者団体や取引先全体と足並みを揃える形の取り組みになりやすいという構造上の違いがあります。

明治グループは「明治グループ調達ポリシー」と「明治グループファームアニマルウェルフェアポリシー」に基づき、生乳と鶏卵の調達で取引先と協働して取り組むとしています。JA全農も「全農グループ アニマルウェルフェアポリシー」を定め、畜産販売事業、畜産生産事業、酪農事業を対象に位置づけています。生産と流通の両側から枠組みを作る動きが進んでいます。

参照:明治ホールディングス株式会社「原材料調達」(2026年9月時点)、全国農業協同組合連合会「アニマルウェルフェアに関する取り組み」(2026年9月時点)

飼養管理の改善は需要とセットで動く

飼養方式の見直しには設備投資と手間が伴い、その負担は最終的に生乳の生産コストに乗ります。改善を続けられるかどうかは、牛乳・乳製品の需要が保たれているかどうかに左右されるため、消費側の取り組みも同じ課題の一部です。

牛乳・乳製品の消費拡大については、農林水産省と一般社団法人Jミルクが2022年6月に「牛乳でスマイルプロジェクト」を立ち上げ、酪農乳業界だけでなく官民を挙げて取り組む活動推進フレームとして運営しています。参加対象は酪農乳業関係者に限らず、さまざまな業界の企業、団体、自治体に開かれています。都道府県の牛乳普及協会による料理コンクール、酪農体験や工場見学、食品メーカーとの共同企画などが登録・掲載され、2026年8月時点で1,260メンバーが参加しています。生産現場の改善を語るときに、それを支える需要側の枠組みがどこにあるのかを合わせて見ておくと、取り組みの全体像がつかみやすくなります。

参照:牛乳でスマイルプロジェクト(2026年9月時点)

企業が取り組むときの進め方

最初にやるべきことは、自社が扱う畜産物の畜種を特定し、対応する国の指針を読むことです。方針の文章を書くのはそのあとになります。

  1. 自社が調達している畜産物の畜種を洗い出し、該当する技術的な指針を特定する
  2. 指針の「実施が推奨される事項」と「将来的な実施が推奨される事項」を分けて読み、自社が求める水準の線を引く
  3. 農林水産省が公開しているチェックリストを使い、主要な取引先の現状を確認する
  4. 確認結果を踏まえてアニマルウェルフェア方針を策定し、対象範囲と原則、確認方法を明記して公表する
  5. 認証の取得や外部の支援が必要な範囲を切り分け、認証機関や支援団体に相談する

チェックリストは乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、ブロイラー、馬、輸送の7種類がPDFとWORDの両形式で公開されています。取引先へのヒアリング項目を自作する前に、まず国が配布しているチェックリストをそのまま使うほうが、後の調査結果との比較もしやすくなります。

評価の枠組み全体をどう組み立てるかは、サステナビリティ企業として評価される基準の記事も参考になります。

参照:農林水産省「アニマルウェルフェアについて」(2026年9月時点)

アニマルウェルフェアの認証・支援を行う主な団体

認証や支援を行っている団体は、認証機関、業界の自主的なコミュニティ、企業向けのコンサルティングに分かれます。以下は法人格を除いた名称の五十音順で、順位付けではありません。

団体名種別主な対象特徴
株式会社アニマルウェルフェア民間企業農場・畜産事業者、食品製造業認定獣医師による審査と、認証食材を使った商品開発の支援
アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ・ジャパン一般社団法人企業・鶏卵生産者ケージフリー鶏卵の方針づくりとロードマップ作成の支援、生産者と企業のマッチング
アニマルウェルフェア畜産協会一般社団法人乳牛・肉牛の農場、食品製造業農場認証と食品認証の2本立てで認証マークを付与
アニマルウェルフェアフードコミュニティジャパン会員制コミュニティ飼育農場、食品企業、消費者「3ヵ年AW改善計画」の作成・公表がロゴ使用の条件
畜産技術協会公益社団法人生産者・行政畜種別の事例集やパンフレットの作成、検討会の運営
日本GAP協会一般財団法人農場(農産・畜産)JGAP(畜産)の管理点にアニマルウェルフェアの項目を持つ

株式会社アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェアの審査認定と、企業向けの商品開発支援を行う民間企業です。

支援の範囲は、農場・畜産事業者に対するAW審査認定から、製造業に向けた認証食材を使った商品コンセプトの提案、動物や食品に関わる職種向けの講座、AW認定審査員の資格認定まで広がっています。認証が受けられなかった場合も、取得に向けたコンサルティングを提供する点が特徴です。認定獣医師が審査を担当します。

参照:株式会社アニマルウェルフェア公式サイト(2026年9月時点)

一般社団法人アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ・ジャパン

ケージフリー鶏卵への移行を企業と生産者の両側から支援する一般社団法人です。

企業ポリシーの立案と開示、ケージフリー政策導入ロードマップの作成、最新のアニマルウェルフェア情報の共有までを支援範囲としています。あわせて鶏卵生産者への技術サポートも行っています。ケージフリー卵の生産者と購入を希望する企業を結ぶ無料会員制プラットフォーム「ケージフリーネット」を運営している点が特徴で、方針を出したあとの調達先探しまで視野に入っています。

参照:一般社団法人アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ・ジャパン公式サイト(2026年9月時点)

一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会

国内で初めてアニマルウェルフェア認証制度を開始した一般社団法人です。

認証は乳牛部門と肉牛部門に分かれ、それぞれ農場認証と食品認証があります。対象は、飼育方法や環境に関する認証基準を満たした農場と、その農場で生産された畜産物を主原料とする食品の製造業者です。農場だけでなく、その原料を使った食品にも認証マークを出せる二段構えの制度になっているため、加工品を扱う企業でも表示に使えます。事務所は北海道河西郡中札内村にあります。

参照:一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会公式サイト(2026年9月時点)

アニマルウェルフェアフードコミュニティジャパン

アニマルウェルフェア畜産による食品の供給を実践する、生産者と消費者による会員制のコミュニティです。

正会員はビジネス会員、消費者個人会員、AW改善評価委員会の研究者・専門家会員に分かれ、ビジネス会員はさらに「アニマルウェルフェア飼育農場会員」と「アニマルウェルフェア食品企業者」で構成されます。飼育農場会員のうち「3ヵ年AW改善計画」を作成・公表した会員だけが、同団体の商標登録ロゴとウェルフェアフード用語を使用できる仕組みが特徴です。公表した3年目にAW改善評価委員会の評価と助言を受けます。未作成の農場会員は1年間の猶予のうちに作成されない場合は退会となります。各農場の計画はPDFで公開されているため、取引先の改善状況を確認したい企業は公開資料をそのまま参照できます。

参照:アニマルウェルフェアフードコミュニティジャパン「会員の種類」(2026年9月時点)

公益社団法人畜産技術協会

畜産に関する技術の向上発達を目的とする公益社団法人で、国のアニマルウェルフェア施策の実務を支えてきた団体です。

農林水産省の新しい指針ができる前は、国の支援を受けて民間の自主的な飼養管理指針を作成していました。現在は肉用牛・豚・ブロイラーの事例集や「知ってる?アニマルウェルフェア」などのパンフレットを作成し、農林水産省のサイトからも紹介されています。達成目標年の設定に係る検討会の情報を掲載しているのもこの協会で、制度の背景まで追いたい場合の一次的な参照先になります。

参照:公益社団法人畜産技術協会「アニマルウェルフェア」(2026年9月時点)

一般財団法人日本GAP協会

JGAPとASIAGAPという2つの認証プログラムを開発・運営する一般財団法人です。

認証は農産と畜産に分かれ、畜産部門には専用の基準文書と研修プログラムが用意されています。アニマルウェルフェアは独立した認証ではなく、JGAP(畜産)の管理点のひとつとして組み込まれている点が他と異なります。同協会は農林水産省の新指針の公表を受けて、基準書の管理点との対応関係を会員に案内し、基準改定の検討を進めるとしています。会員数は2026年7月7日時点で232会員です。

参照:一般財団法人日本GAP協会公式サイト(2026年9月時点)

アニマルウェルフェアに取り組む企業の事例

自社サイトで方針を公表している企業を3社取り上げます。五十音順で、順位付けではありません。

イオン

イオンは2026年3月に「イオンアニマルウェルフェア方針」を制定しました。

対象は商品やサービスに関わる畜産動物、愛玩動物、伴侶動物、展示動物で、対象種は哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類の脊椎動物としています。原則として5つの自由の尊重を掲げています。動物の特性や事業への関与度などを踏まえて対象種の優先順位を定め、段階的に取り組みを進めるという進め方を明記している点が特徴です。小売業として畜産動物以外まで対象に含めている例になります。

参照:イオン株式会社「イオンアニマルウェルフェア方針」(2026年9月時点)

キユーピー

キユーピーグループは、採卵鶏のアニマルウェルフェアを持続可能な鶏卵の生産と調達における重要課題と位置づけています。

WOAHが示す5つの自由に賛同し、その原則に沿った採卵鶏の飼養が重要だとしたうえで、調達している鶏卵が飼養管理指針に即して飼養された鶏のものであることを確認しています。農林水産省の「採卵鶏の飼養管理に関する技術的な指針」への準拠状況の確認も進めているとしています。飼養方式と卵の価格の関係を自社サイトで正面から説明している点が、方針の表明だけで終わらない特徴です。

参照:キユーピー株式会社「鶏のアニマルウェルフェア」(2026年9月時点)

日本ハム

日本ハムは2021年11月10日に「ニッポンハムグループアニマルウェルフェアポリシー」を制定し、5つの自由の推進を基本原則としています。

畜種ごとの取り組みを具体的に公開しており、豚では妊娠期母豚のストール廃止、歯切りの原則禁止、8時間以上の長時間輸送の禁止、全農場・食肉加工場へのカメラ設置を挙げています。鶏では細霧装置による暑熱ストレスの軽減やセミウインドウ鶏舎での自然光の導入、牛では日よけ設備の設置などです。サステナビリティ委員会での討議から経営会議での審議、取締役会への報告という意思決定体制まで明記している点が、方針の実行を担保する仕組みとして参考になります。

参照:日本ハム株式会社「アニマルウェルフェア」(2026年9月時点)

よくある質問

アニマルウェルフェアについて検索されることの多い疑問をまとめました。

Q
アニマルウェルフェアと動物愛護は何が違うのですか
A

アニマルウェルフェアは動物の身体的および心的な状態そのものを指す概念で、動物愛護は動物への接し方を含むより広い考え方です。日本では動物の愛護及び管理に関する法律に基づく「産業動物の飼養及び保管に関する基準」が一般原則を定めており、畜種ごとの具体的な飼養管理の水準は農林水産省の技術的な指針が示しています。所管が環境省と農林水産省に分かれているため、企業が自社基準を書くときはどちらを参照しているかを明示しておくと混乱を避けられます。

Q
農林水産省の指針に法的な強制力はありますか
A

罰則を伴う法規制ではありませんが、実施状況は国が調査で把握しています。農林水産省は可能な項目について補助事業のクロスコンプライアンスの対象とする方針を示しており、令和5年度の試行調査と令和6年度の本格調査が実際に行われました。令和8年7月には達成目標も設定され、調査は今後隔年で実施されます。

Q
日本のアニマルウェルフェアは海外に比べて遅れているのですか
A

飼養方式を法令で規制しているかどうかという点では、EUのほうが先行しています。EUでは理事会指令1999/74/ECにより非エンリッチドケージの使用が2012年1月1日以降禁止されていますが、日本には飼養方式そのものを禁じる法令がありません。日本は指針という推奨の枠組みで、達成目標を設定して段階的に水準を上げる方式をとっています。

Q
アニマルウェルフェアに対応するとコストは上がりますか
A

飼養方式の変更を伴う項目については上がります。キユーピーは自社サイトで、5つの自由をより高めると人件費や飼育設備の費用などが増加し、卵の値段は高くなると説明しています。一方で、危機管理マニュアルの整備や知識の習得といった管理体制の項目は設備投資を伴わず、令和6年度調査で最も達成率が低かった部分でもあります。

Q
アニマルウェルフェアの認証にはどのようなものがありますか
A

アニマルウェルフェアを単独で認証する制度と、より広い認証の一部として扱う制度があります。前者の例が一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会の農場認証・食品認証で、後者の例が一般財団法人日本GAP協会のJGAP(畜産)です。JGAP(畜産)ではアニマルウェルフェアが管理点のひとつとして基準に組み込まれています。

まとめ

アニマルウェルフェアは、2023年7月の指針公表と2026年7月の達成目標設定によって、理念の段階から進捗が測られる段階へ移りました。令和12年度という目標年と、隔年で行われる調査という物差しがすでに置かれています。

企業側の実務は、方針文を書くことではなく、扱う畜種の指針を読み、国のチェックリストで取引先の現状を確かめ、その結果を踏まえて求める水準の線を引くという順序で進みます。令和6年度調査で最も達成率が低かったのは設備の項目ではなく、知識の習得と危機管理マニュアルの整備・共有という管理体制の項目でした。取引先に働きかける余地も、まずそこにあります。

外食や小売の現場でどのような評価軸が使われているかは、日本サステイナブルレストラン協会の星評価の記事もあわせてご覧ください。

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

Webマーケティングを行う編集チーム。 サステナビリティ・社会課題・企業の取り組みをテーマに、 実務経験に基づいた情報発信を行っています。