AGRISTは、宮崎県新富町に本社を置く農業ロボットの企業で、ピーマンやきゅうりの自動収穫ロボットを中心に事業を展開しています。導入費は公式サイトに掲載がなく、購入やレンタルの条件は問い合わせで案内されるため、この記事では公式情報から確認できる仕組みと仕様、導入の条件、導入事例、同じ課題に取り組む他社、社会への効果を整理します。
この記事でわかること
- AGRISTの会社概要と、創業から現在までの歩み
- 収穫ロボットの仕組みと、2024年モデル・2026年モデルの仕様
- 料金の確認方法と、導入できるハウスの条件
- 公式に公開されている導入事例
- 収穫ロボットに取り組む他社3社との比較表
- 農業の担い手不足に対するAGRISTの社会的な意義
AGRISTとはどんな会社か|事業の全体像
AGRISTは、AIとロボットで農業の人手不足に取り組む企業です。2019年10月に創業し、AI農業、農業ロボット、スマート農業の3つを事業の柱にしています。
公式サイトでは、AGRISTは「テクノロジーで世界の食糧課題を解決する」ことを掲げています。事業は、収穫画像を解析するAI農業、安価でシンプルなロボットをコンセプトにした農業ロボット、ロボットを活用しやすい次世代ビニールハウスを設計するスマート農業の3つに分かれています。宮崎県新富町には自社の農場があり、自治体、企業、JAと連携して実証を重ねています。
会社概要
AGRIST株式会社の概要は次のとおりです。設立は2019年10月で、本社は宮崎県児湯郡新富町にあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | AGRIST(アグリスト)株式会社 |
| 設立 | 2019年10月 |
| 代表者 | 代表取締役 斎藤潤一、代表取締役 秦裕貴 |
| 本社 | 宮崎県児湯郡新富町富田南一丁目53番地1 |
| 拠点 | AIロボット農場(鹿児島県東串良町)、AIロボット試験場(宮崎県新富町)、AGRIST常総農場(茨城県常総市) |
| 事業内容 | AI農業、農業ロボット、スマート農業 |
資本金は会社概要のページに記載がないため、必要な場合は登記情報などで確認してください。
創業から現在までの歩み
AGRISTの歩みは、農家の声から始まっています。公式サイトの沿革によると、2017年に農家が主体の勉強会「儲かる農業研究会」で自動収穫ロボットの必要性を聞いたことが出発点です。2019年10月に創業し、2020年4月には国のスマート農業実証に参加してピーマン自動収穫ロボットを6台製造しました。
その後は、2021年12月に鹿児島県東串良町とピーマン自動収穫ロボットの普及に向けた包括連携協定を結び、2022年10月には第10回ロボット大賞で農林水産大臣賞を受賞しています。2023年7月にはタカミヤの農場できゅうり自動収穫ロボットの導入を始め、2026年7月には農林水産省の「開発供給実施計画」の認定を取得しました。
AGRISTの収穫ロボットの仕組みと仕様

AGRISTの収穫ロボットは、カメラで果実を見分け、ハウスの畝間を走って収穫する機械です。ピーマン、きゅうりなどの果菜類に対応しています。
ロボットはどのように収穫するのか
公式サイトの製品ページによると、ロボットに搭載されたカメラが果実を認識し、自動収穫ボタンを押すと任意の場所から収穫を始められます。スマートフォンやパソコンから操作でき、不具合が起きたときや稼働が終わったときはスマートフォンに通知が届きます。
収穫だけでなく、ハウス内を巡回しながら環境データを集め、栽培の補助に使うとされています。対象はピーマン、きゅうり、その他の果菜類です。
2024年モデルと2026年モデルの仕様の違い
製品ページには2世代のモデルが載っています。2026年モデルは畝間の移動が自動になり、連続稼働が約12時間に延びています。
| 項目 | 2024年モデル | 2026年モデル |
|---|---|---|
| 重量 | 60kg | 130kg |
| 収穫性能 | 1個/分 | 1本/分 |
| 畝間移動 | 手動 | 自動 |
| 連続稼働 | 約10時間 | 約12時間 |
| 充電時間 | 約5時間 | 約5時間 |
これらの性能値は、公式サイトが「理想環境下において」と条件を付けた数値です。実際のハウスでの収穫量を示すものではないため、導入を検討する場合は自社のハウスでの実証結果を確認する必要があります。
AGRISTの収穫ロボットの料金と導入条件
AGRISTの収穫ロボットの導入費は、公式サイトに掲載されていません。購入やレンタルの条件は、問い合わせフォームを通じた案内になります。
料金は非公開でレンタルの実績はある
製品ページには導入費の記載がなく、価格を知るには問い合わせが必要です。一方で、レンタル形式での提供実績はあり、詳しくは次の導入事例の項で紹介します。
料金の目安がないため、他社の相見積もりや補助金の併用も含めて、自社の収穫量と人件費から必要性を検討することになります。
導入できるハウスの条件
製品ページには、導入するハウスに求められる条件が作物別に書かれています。畝幅やネットワーク回線、剪定の状態が条件になるため、ハウスの状況によっては導入前に整備が必要です。
| 作物 | 主な条件 |
|---|---|
| ピーマン | 畝幅1,100〜1,200mm、ネットワーク回線があること、剪定が行き届いていること |
| きゅうり | つる下ろし栽培であること、レールが平らに設置されていること |
| 共通 | ロボットがハウス内にある状態での薬散と硫黄燻煙は避ける |
視察は、投資、新規事業、協業を検討している人が対象で、電話での問い合わせは受け付けていません。
AGRISTの収穫ロボットの導入事例
AGRISTの収穫ロボットは、JAや農業法人のハウスで実際に使われています。ここでは、AGRIST自身が公式サイトで公開している3つの事例を紹介します。
北海道のJA新冠・ホクレン・JAきたそらち
AGRISTは、2026年9月10日付のニュースで、AI搭載の自動収穫ロボットを北海道の3拠点にレンタルしたと報告しています。レンタル先はJA新冠(ピーマン、勉強会のための1日レンタル)、ホクレン農業協同組合連合会(きゅうり)、JAきたそらち(きゅうり)で、ホクレンは7月1日から8月31日、JAきたそらちは7月2日から10月31日の期間です。
目的は、収穫作業の省力化と省人化を進め、北海道の労働力不足の解消に向けた社会実装の第一歩にすることとされています。台数と収穫量の成果は公表されていません。
参照:AGRIST株式会社公式サイト「北海道でAI搭載自動収穫ロボットをレンタル実施」
埼玉県羽生市のタカミヤ「愛菜 羽生農場」
タカミヤは、埼玉県羽生市の「愛菜 羽生農場」(ハウス面積6,100平方メートル)で、きゅうり収穫ロボットを2台購入しました。2024年からの取り組みで、収穫時の人手不足を補う目的で使われています。成果は公表されていません。
JA全農いわてでのピーマン収穫ロボットの実証
AGRISTは、サステナビリティのページで、ピーマン自動収穫ロボットをJA全農いわてで実証した事例を、プロジェクト例として載せています。期間は7月から10月と書かれていますが、年と収穫量の成果は記載されていません。
収穫ロボットに取り組む他社3社と比較

農業の収穫や作業を自動化する企業は、AGRIST以外にも国内にあります。ここでは、各社の公式サイトで確認できた3社を、AGRISTと同じ項目で並べます。
掲載の順番は社名の五十音順で、優劣や推奨の順位ではありません。公式サイトで確認できなかった項目は「公表なし」としています。公式サイトで検証できた企業が3社のため、3社のみを掲載しています。
| 項目 | AGRIST | inaho | トクイテン | レグミン |
|---|---|---|---|---|
| 取り組みの対象 | ピーマン・きゅうりの収穫 | トマト・アスパラガスの収穫 | ミニトマトの収穫 | 露地野菜の農薬散布(ネギ・キャベツ・ブロッコリー) |
| 仕組み | カメラで果実を認識し畝間を走行 | AIで収穫時期を判断 | 吸引式で果実をヘタから分離、AIが熟度を判定 | LiDARで畝を検出し自律走行、遠隔操作も可能 |
| 提供形態 | 購入・レンタルは問い合わせ | RaaS(利用型) | 公表なし(自社農場で運用) | 公表なし |
| 公表している実績 | 導入台数は公表なし | 2025年のオランダ試験で収穫率45%以上で安定 | 2026年4月に1台で1日31kgを収穫 | 連続稼働は最大8時間、タンク容量300L |
| 設立 | 2019年10月 | 2017年1月17日 | 2021年8月6日 | 公表なし |
inaho株式会社
inahoは、神奈川県藤沢市に本社を置き、トマトとアスパラガスの自動収穫ロボットを提供する企業です。
支援範囲は、収穫ロボットのほか、農業参入を目指す法人向けの作目・作型の提案、ハウス施工、資材手配、AIやロボットの受託開発に及びます。料金体系はRaaS(Robot as a Service)で、スナックトマト収穫ロボットは初期投資不要とされています。
日本とオランダで事業を展開し、ベルギーでも2026年の試験が予定されているのが特徴です。同社のニュースによると、2025年のオランダ試験では収穫率が45%以上で安定し、試験の条件として、1台あたり20kg/時以上の収穫速度、1haあたり4台での対応を挙げています。
参照:inaho株式会社公式サイト、inaho株式会社「会社概要」、inaho株式会社「スナックトマト収穫ロボットのベルギー拡大」
株式会社トクイテン
トクイテンは、名古屋市に本社を置き、愛知県知多市の自社農場でミニトマトの吸引式収穫ロボットを運用する企業です。
支援範囲は、自社で開発した収穫ロボットを自社農場で運用する段階です。ロボットは畝間のレールを走り、AIで熟度を判定して収穫適期の果実を選びます。
弱い吸引力で果実を傷つけずにヘタから分離する点が特徴で、収穫機構は特許を取得したと公表されています。2026年5月25日に実証を完了し、栽培スタッフが日常業務として稼働させる体制に移りました。
参照:株式会社トクイテン公式サイト、株式会社トクイテン プレスリリース(PR TIMES、2026年6月1日)
株式会社レグミン
レグミンは、埼玉県深谷市に本社を置き、農薬散布ロボットを開発するアグリテックのベンチャーです。
支援範囲は、免許が不要で使える農薬散布ロボットの提供と、農薬散布をまかせるBPOサービスの実証です。ネギ、キャベツ、ブロッコリーなどの露地野菜で、傾斜や凹凸のある圃場でも散布できます。
LiDARの点群データで畝を見つけて自律走行する点が特徴で、遠隔操作とスマートフォンアプリでの散布管理にも対応しています。山陰酸素工業と鳥取県内で農薬散布BPOサービスの実証を行う契約を結んだと、2026年5月12日付のニュースで発表しています。
参照:株式会社レグミン公式サイト「ロボット」、株式会社レグミン「農薬散布BPOサービスの実証契約」
AGRISTが社会に与える良い影響
AGRISTの収穫ロボットは、農業の担い手が減るなかで収穫の人手を補い、化学肥料や燃料の削減にもつなげようとする取り組みです。
担い手が減る農業で収穫の人手を補う
日本の農業では、中心となる働き手が減り続けています。農林水産省によると、基幹的農業従事者は、2020年の農林業センサスで136.3万人、2025年の農林業センサスで103.6万人、令和8年の農業構造動態調査で98.7万人です。平均年齢は67.7歳で、働き手の大半が65歳以上です。
| 調査 | 基幹的農業従事者 | うち65歳以上 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|
| 2020年 農林業センサス | 136.3万人 | 94.9万人 | 67.8歳 |
| 2025年 農林業センサス | 103.6万人 | 72.1万人 | 67.7歳 |
| 令和8年 農業構造動態調査 | 98.7万人 | 69.3万人 | 67.7歳 |
なお、令和8年の数値は標本調査による推計値で、全数調査のセンサスと直接比べる場合は注意が必要だと農林水産省が注記しています。
収穫は、ピーマンやきゅうりのように実が次々になる作物では、長い期間にわたって人手が必要な作業です。AGRISTは導入台数や削減できた人手を公表していないため、国全体の規模に対する割合は示せません。ただし、2026年6月30日付で認定された開発供給実施計画では、きゅうり栽培の下葉かきと摘果を自動化し、対象作業の労働時間を60%削減することを目指していると公表しています。これは計画の目標であり、達成した成果ではありません。
参照:農林水産省「農業労働力に関する統計」、AGRIST株式会社公式サイト「開発供給実施計画の認定を取得」
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化学肥料・燃料・農薬を減らす計画
AGRISTは、自社の鹿児島県東串良町の農場について「みどり認定(環境負荷低減事業活動実施計画)」を取得しています。対象の経営面積は28.8アールで、計画期間は2026年1月から2031年1月です。
計画の目標は3つあります。化学肥料は窒素換算で年間186kgを167kgへ約10%減らし、燃料の消費量とCO2排出量はおおむね10%、化学農薬の使用回数と散布量は約20%減らすことです。肥料は、経験と勘による施肥から、EC値とpHのデータに基づく施肥量の最適化に変えます。農薬は、天敵資材や微生物農薬を使う総合的病害虫管理を広げます。
これらはいずれも計画上の目標値で、達成された実績ではありません。実績が公表された時点で確認することが必要です。
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自治体・JAと組んで地域に広げる
AGRISTは、収穫ロボットを自社だけで使うのではなく、自治体やJAと組んで地域に広げる形をとっています。公式サイトの沿革では、2021年12月に鹿児島県東串良町と包括連携協定を結び、2026年3月には北海道深川市、株式会社HPRS、きたそらち農業協同組合と包括連携協定を結んだと記載されています。
ロボットを導入する農家の負担を、地域全体で分け合う仕組みづくりが狙いです。国の認定や補助、自治体との協定を通じて導入を進めるため、小規模な農家でも使いやすい形になるかどうかが今後の焦点になります。
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よくある質問
AGRISTについて、よく聞かれる質問に公式情報をもとに答えます。
AGRISTは、宮崎県新富町に本社を置き、AIとロボットで農業の人手不足に取り組む企業です。2019年10月に創業し、ピーマンやきゅうりの自動収穫ロボット、収穫画像を解析するAI、ロボットを活用しやすい次世代ビニールハウスの設計を事業にしています。
導入費は公式サイトに掲載されておらず、価格は問い合わせて確認する必要があります。購入やレンタルの条件も問い合わせフォームで案内されます。
レンタルの実績はあります。AGRISTのニュースでは、北海道のJA新冠、ホクレン、JAきたそらちの3拠点にAI搭載の自動収穫ロボットをレンタルしたと報告されています。
公式サイトの製品ページには、ピーマン、きゅうり、その他の果菜類が載っています。ピーマンは畝幅1,100〜1,200mm、きゅうりはつる下ろし栽培が導入条件です。
視察は、投資、新規事業、協業を検討している人が対象です。電話での問い合わせは受け付けておらず、問い合わせフォームから連絡します。
まとめ
AGRISTは、農業の人手不足に対して、自動収穫ロボットと次世代ハウスで応える企業です。導入費は非公開ですが、レンタルの実績があり、導入できるハウスの条件も公開されています。
社会への効果は、担い手が減る農業で収穫の人手を補うことと、みどり認定で化学肥料、燃料、農薬の削減を計画していることです。ただし削減の数値はいずれも目標であり、導入台数や成果は公表されていません。検討する場合は、AGRISTと他社の仕様を同じ項目で見比べ、自社のハウスでの実証を依頼することが現実的です。