まちのコインを解説|仕組み・使い方・料金と導入地域の事例

まちのコインは、面白法人カヤックが提供するスマートフォン向けの電子コミュニティ通貨です。円に換金できないコインを地域の活動や店舗の体験とやり取りすることで、人と地域のつながりをつくります。アプリは無料で、導入費用を負担するのは自治体や運営団体の側です。この記事では、まちのコインの仕組みと使い方、料金、導入地域の事例を整理し、同じ地域課題に取り組む企業とも比べながら、社会に与える影響を公開情報から確認します。

この記事でわかること

  • まちのコインの仕組みと、一般的な地域通貨との違い
  • コインの貯め方と使い方、換金や有効期限の扱い
  • 運営側が負担する料金と、導入地域の事例
  • 同じ地域課題に取り組む企業とサービスの比較表
  • 利用者数を関係人口の全体像と比べた規模感

まちのコインはどんなサービスか

神奈川県の商店街で、シャッターの絵や店先の看板が並ぶ路地を歩く人

まちのコインは、地域のスポットで体験とコインをやり取りし、人と人の距離を縮める電子コミュニティ通貨のアプリです。

まちのコインの運営会社と基本の仕組み

まちのコインを提供しているのは、鎌倉市に本社を置く面白法人カヤックです。スマートフォンのアプリで、地域のお店や団体が「スポット」として登録し、お金で買えないうれしい体験を用意します。利用者は、清掃などの地域活動に参加したりスポットを訪れたりしてコインを受け取り、貯めたコインをスポットの体験や特典と交換します。

コインの設計は地域ごとに異なります。住民、店舗、導入した自治体や団体が、コインのもらい方とあげ方を一緒に決める方式です。地域ごとに通貨名も変わり、生駒市では「くるり」、鎌倉市では「クルッポ」、日置市では「とっぱ」と呼ばれています。

観光客や仕事で訪れた人など、地域の外から来た人も使えるようにして、関係人口を増やすことを狙っています。

参照:カヤック「コミュニティ通貨(まちのコイン)」(2026年10月確認)

まちのコインと一般的な地域通貨の違い

一般的な地域通貨は、地域内での消費を増やすために、円に近い感覚で使えるよう設計されます。まちのコインは目的が異なり、お金を使う仕組みではなく、地域の活動に参加するきっかけをつくる仕組みとして作られています。

主な違いは次の表のとおりです。

比べる点一般的な地域通貨まちのコイン
主な目的地域内での消費拡大を目的とするものが多い地域活動への参加と、人のつながりづくり
コインの入手制度ごとに異なる地域活動への参加やスポットでの体験で受け取る
円への換金制度ごとに異なるできない(運営側の公表による)
利用者主に地域の住民住民に加え、地域外の来訪者も想定

まちのコインの使い方とコインの貯め方

使い方はアプリを入れて地域を選び、スポットで体験してコインを貯め、別のスポットで使う流れです。

  1. App StoreまたはGoogle Playでアプリをダウンロードします。
  2. アプリで地域を選びます(生駒市の例では「生駒」)。
  3. スポットのQRコードを読み取るなどして、コインを受け取ります。
  4. 貯めたコインを、スポットが用意した体験や特典と交換します。

手順は、カヤックが公表した生駒市の導入事例に沿っています。地域によって、コインの名前ともらえる量は変わります。

コインのもらい方と使い方の具体例

生駒市の「まちのコイン・くるり」は、2025年1月27日から本格運用が始まりました。市内40以上のスポットで使えます。市民活動推進センター「ららポート」では、個人ボランティアに登録して市内の活動に参加すると、500くるりを受け取れます。たこ焼き店では、くるりと交換して個数を増やす特典が用意されています。

このように、コインの出口は「割引」ではなく「体験の増量」や「お店の人との交流」であることが多く、買い物の値引きを期待すると想定とずれます。

参照:カヤック「奈良県初!生駒市でコミュニティ通貨「まちのコイン・くるり」を導入」(2025年3月25日)

換金はできるのか、有効期限はあるのか

まちのコインは日本円などの法定通貨に換金できません。カヤックの公式ページも、法定通貨への換金性がないため、紙の地域通貨より低コストで運営でき、原資も要らないと説明しています。

コインには有効期限があり、期限が切れたコインは回収されて、あらためて配られます。貯め込んで使わないままにせず、スポットでの体験に使うことが前提の設計です。

まちのコインの料金は誰がいくら負担するのか

アプリは無料で、料金を負担するのは導入する自治体や運営団体です。公表された新価格は初期費用0円、月額10万円でした。

項目内容時点
アプリの利用無料(カヤックの導入事例ページの記載)2025年3月
導入時の初期費用0円2021年12月に提供開始した新価格
月額費用10万円2021年12月に提供開始した新価格
従来の価格初期費用200万円から、月額10万円から2021年11月までの価格
決済手数料無料2021年12月に提供開始した新価格
コインの有効期限発行から最大180日2021年当時の公表

表の料金は、カヤックが2021年に発表した新価格です。運営団体の負担は月額10万円で、基本のセットアップは運営団体が管理画面から行い、カヤックはアドバイザーとして支援する形でした。コンセプトの設計や加盟店のサポートなどの支援業務は、運営団体の希望に応じて受けられます。

現在の価格はカヤックの公式ページに載っていないため、導入を検討する場合は問い合わせフォームで確認してください。

参照:カヤック「コミュニティ通貨「まちのコイン」の全国拡大を目指し12月から新価格で提供開始」(2021年)

まちのコインの導入地域と自治体の事例

山を背景に商店や飲食店が並ぶ、地方の駅前の通り

公式サイトの地域一覧には、2026年10月時点で17の地域が載っています。ここでは3つの導入事例を見ます。

公式サイトの地域一覧には、智頭、鴻巣、池袋、生駒、秋葉原、日置、高知市、シモキタ、多度津、厚木、八尾、鎌倉、相模原、渋谷区、八女、日立、滋賀県が並びます。厚木、鎌倉、相模原には「神奈川県SDGsつながりポイント」の付記があります。導入地域数は資料によって数字が異なるため、数え方に注意が必要です。

公表元導入地域数時点と数え方
カヤック(日置市との連携協定の発表)27地域2024年9月。終了と試行の地域を含みます。運営中は20地域と別に記載
カヤック(ふるさと住民登録制度の発表)31地域2026年8月
まちのコイン公式サイトの地域一覧17地域2026年10月に確認した掲載数

参照:まちのコイン「導入地域」(2026年10月確認)

鎌倉市は「SDGsつながりポイント事業」でクルッポを運営

鎌倉市では、まちのコインを使ったコミュニティ通貨「クルッポ」を、鎌倉市SDGsつながりポイント事業の中で運営しています。総務省は令和6年度ふるさとづくり大賞(団体表彰)にカヤックを選び、SDGsへの行動変容と人のつながりを促す取り組みを評価の理由の一つに挙げました。受賞者の決定は令和7年1月14日です。

カヤックのページには、利用者数などの実績の数値は載っていません。成果は受賞の事実の範囲で受け止めるのが妥当です。

参照:カヤック「総務省「ふるさとづくり大賞」(団体表彰)をカヤックが受賞!」(2025年1月31日)

日置市は人口減少への対策として導入を決めた

鹿児島県日置市とカヤックは、2024年9月24日に連携協定を結びました。目的は、人口減少で不足する地域の担い手を、関係人口との関わりで補うことです。日置市では、ごみ拾いやマイバッグの持参でコインを受け取り、地元のお店で方言を教わる体験などに使う計画でした。通貨名は「とっぱ」で、2024年10月26日の開始が予定されていました。

カヤックは、日置市の人口が2065年に約2.6万人まで減ると見込まれていると紹介しています。2015年から約47%の減少にあたり、国立社会保障・人口問題研究所の推計を日置市の人口ビジョンが引用した数字です。

参照:カヤック「日置市とカヤックが連携協定を締結」(2024年9月25日)

渋谷区はデジタルスタンプラリーで町会や商店会を回遊させた

渋谷区では、2024年6月2日の「渋谷おとなりサンデー」で、まちのコインのアプリ「まちのコイン・ハチポ」を使ったスタンプラリーが初めて導入されました。複数のイベントを回るとコインを受け取れる仕組みで、地域をまたいだ交流を狙っています。当日は地元の90以上の団体が参加しました。

開催団体はアプリ経由で利用者にメッセージを送れるため、イベントが終わった後も接点を保てるとしています。

参照:カヤック「渋谷おとなりサンデーが6月2日に開催。地元90団体以上が参加」(2024年5月30日)

関連記事:地域おこしとは?制度・メリット・成功事例をわかりやすく解説

同じ地域課題に取り組む企業とサービス

地域の担い手不足と関係人口づくりには、食・旅・金融・自治体向けサービスなど、さまざまな企業が取り組んでいます。

ここでは、まちのコインと同じく地域とのつながりを増やす事業を、公式サイトで確認できた5社だけ取り上げます。並べる基準は運営主体名の五十音順で、順位やおすすめの順ではありません。

サービス運営主体取り組みの対象仕組み公表している実績設立年
まちのコイン面白法人カヤック地域活動への参加と人のつながり円に換金できない電子コミュニティ通貨2026年8月時点で31地域、約18.9万人(カヤックの公表)公表なし
ポケットマルシェ株式会社雨風太陽生産者と消費者の関係づくり農家や漁師から食材を直接買えるアプリなど約16,000品目を扱う(時点の記載なし)公表なし
おてつたび株式会社おてつたび地域の人手不足と旅の費用地域の手伝いをして報酬を得ながら旅するサービス50歳以上の夏と盆の応募が前年同月比2.1倍(2026年7月23日発表)2018年7月18日
アクアコイン君津信用組合地域内でのお金の循環電子地域通貨。加盟店で決済第4回優良加盟店表彰を開催(2026年5月7日の報告)公表なし
ふるさとチョイス株式会社トラストバンク自治体の財源確保と地域事業者の支援ふるさと納税サイトと、地域通貨「chiica」などガバメントクラウドファンディングの累計5,000件超(2026年8月17日発表)公表なし
さるぼぼコイン飛騨信用組合地域内でのお金の循環電子通貨アプリ。加盟店で決済や送金加盟店約2,000店舗(時点の記載なし)公表なし

表の内容は、各社の公式ページに書かれた範囲のみです。公表のない項目は「公表なし」としています。

株式会社雨風太陽(ポケットマルシェ)

株式会社雨風太陽は、農家や漁師から旬の食材を直接買えるアプリ「ポケットマルシェ」などを運営しています。ミッションは「都市と地方をかきまぜる」ことです。

事業は、食、電気、人流の3領域にわたります。食ではポケットマルシェのほかに、食べ物付きの情報誌「食べ通信」やふるさと納税の仕組みがあります。電気では畑の上に太陽光発電設備を置くソーラーシェアリングを進め、人流では親子の地方留学や農泊を手がけています。

特徴は、買い物を入口にして、都市の消費者と地方の生産者の関係を育てようとしている点です。

参照:株式会社雨風太陽「公式サイト」(2026年10月確認)

株式会社おてつたび

株式会社おてつたびは、旅先で地域の手伝いをして報酬を得る「おてつたび」を運営しています。報酬は最低賃金以上で、宿泊は無料です。交通費は支給されません。

地域の人手不足を、旅をしたい人の力で補う仕組みです。仕事を通じて地域の人と関係をつくり、知らない地域に行くきっかけにしてもらうことを目指しています。

特徴は、地域の人手不足と旅費の負担という2つの困りごとを、同じ仕組みで扱っている点です。

参照:株式会社おてつたび「会社概要」(2026年10月確認)、株式会社おてつたび「おてつたびとは」(2026年10月確認)

君津信用組合(アクアコイン)

君津信用組合は、電子地域通貨「アクアコイン」を提供しています。木更津市の施策と連携して、ポイント還元のキャンペーンや加盟店の表彰を行っています。

公式サイトでは、2025年に木更津市の生活費支援として20%のポイント還元を実施し、予算に達して同年8月14日に終了したと報告されています。らづFitという歩数アプリとの連携も案内されています。

特徴は、金融機関が運営する通貨として、加盟店の表彰やイベントまで地域で一体で動かしている点です。

参照:君津信用組合「アクアコイン」(2026年10月確認)

株式会社トラストバンク(ふるさとチョイス)

株式会社トラストバンクは、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営し、企業版ふるさと納税、自治体向けのDXサービス、地域通貨事業も手がけています。ビジョンは「自立した持続可能な地域をつくる」ことです。

2026年8月17日には、ガバメントクラウドファンディングの累計プロジェクト数が5,000件を超えたと発表しました。

特徴は、寄付、自治体のDX、地域通貨を組み合わせて、自治体の財源と地域経済の両方に関わっている点です。

参照:株式会社トラストバンク「公式サイト」(2026年10月確認)

関連記事:クラウドファンディングふるさと納税とは?仕組みと自治体の選び方

飛騨信用組合(さるぼぼコイン)

飛騨信用組合は、岐阜県高山市、飛騨市、白川村で使える電子通貨アプリ「さるぼぼコイン」を提供しています。支払いは店舗のQRコードをアプリで読み取る方式で、利用者同士の送金もできます。

チャージは、組合の窓口、専用チャージ機、セブン銀行ATM、組合の預金口座から行えます。加盟店は飛騨地域の約2,000店舗と案内されています。

特徴は、地域の金融機関が発行し、支払いと送金を同じアプリで扱う点です。

参照:飛騨信用組合「さるぼぼコイン」(2026年10月確認)

まちのコインが関係人口づくりと地域活動にもたらす良い影響

まちのコインは、地域活動に参加する理由をつくり、関係人口を増やす道具として働きます。規模はまだ限られています。

地域活動に参加する理由をつくる仕組み

地域の清掃や手伝いに参加する動機は、善意だけでは続きにくいものです。まちのコインでは、活動への参加でコインを受け取り、お店の人と話す体験や、地域ならではの特典に使えます。参加した人にすぐ返る小さな楽しみを用意し、次の参加につなげる仕組みです。

鎌倉市では、この仕組みを身近なSDGsの行動と結び付けています。まちのコインには活動履歴の機能があり、自分の行動がどのSDGsの目標につながるかを振り返れます。日置市の計画のように、地元のお店が持つ方言や余った農産物を体験として出すと、お店にとっても来店のきっかけになります。

関連記事:地方創生とSDGsとは?取り組み事例や背景を徹底解説

利用者数を関係人口の全体像と比べる

カヤックは、2026年8月時点でまちのコインは31地域で、約189,000人が利用していると公表しています。国土交通省の調査では、2023年9月から10月の調査時点で、全国の18歳以上の約10,275万人のうち、特定の地域に継続的かつ多様な形で関わる関係人口は約2,263万人(約22%)と推計されています。

同じ単位で並べると、まちのコインの約189,000人は、関係人口2,263万人の約0.8%にあたります(編集部推計)。計算式は、189,000人 ÷ 22,630,000人 ≒ 0.0084です。

項目人数時点公表元
まちのコインの利用者(累計)約189,000人2026年8月カヤック
全国の関係人口(訪問系と非訪問系の合計)約2,263万人2023年9月から10月の調査国土交通省
編集部推計:利用者が関係人口に占める割合約0.8%年が異なる数値の比較編集部

この比較には限界があります。公表時点が約3年ずれていること、まちのコインの利用者数が地域を限らない累計である可能性があること、利用者が関係人口の定義に当てはまるとは限らないことです。そのため、規模感をつかむための参考値として読んでください。

参照:カヤック「ふるさと住民登録制度モデル事業の事務局業務を受託」(2026年8月17日)、国土交通省「全国の「関係人口」は18歳以上の2割強!」(2025年6月27日)

国の制度への広がりと、お金に頼らない持続性

カヤックは2026年8月17日に、総務省の「ふるさと住民登録制度モデル事業」の事務局業務を受託したと発表しました。対象は7道県21市町村で、制度は2026年度中の本格開始が予定されています。カヤックは、まちのコインと「スマウト」で培った経験を、関係人口づくりの支援に生かすとしています。

もう一つの特徴は、円に換金できず、原資が要らないことです。有効期限が切れたコインは回収されて再び配られると、カヤックの公式ページに書かれています。通貨を発行し続ける資金に頼らず運営できる設計です。ただし、現時点で公表されているのは利用者数や導入地域数までで、地域の担い手が実際にどれだけ増えたかを示す数値は見当たりません。効果の検証は、今後の公表を待つ必要があります。

よくある質問

検索でよく見られる、まちのコインに関する疑問に答えます。

Q
まちのコインは換金できますか?
A

換金はできません。カヤックの公表では、コインは日本円などの法定通貨に換えられず、地域のスポットでの体験や特典に使います。

Q
まちのコインのアプリは無料ですか?
A

アプリは無料です。カヤックの生駒市の導入事例ページに、アプリは無料と記載されています。

Q
まちのコインはどこで使えますか?
A

導入された地域のスポットで使えます。公式サイトの地域一覧には、2026年10月時点で智頭、鴻巣、池袋、生駒など17地域が載っています。

Q
まちのコインの導入にはいくらかかりますか?
A

2021年に発表された新価格は、初期費用0円で月額10万円です。現在の価格は公表されていないため、カヤックへの問い合わせが必要です。

Q
地域の外に住んでいても使えますか?
A

使えます。カヤックは、観光客や仕事で訪れる人など地域外の人も使えるようにして、関係人口を増やすことを狙っています。

Q
まちのコインのコインに有効期限はありますか?
A

あります。期限が切れたコインは回収されて再配布されます。2021年当時の公表では、発行から最大180日でした。

まとめ

まちのコインは、円に換金できないコインで地域活動への参加を促す、カヤックの電子コミュニティ通貨です。要点は次のとおりです。

  • アプリは無料で、費用を負担するのは自治体や運営団体です。2021年の新価格は初期費用0円、月額10万円でした。
  • コインは地域ごとに設計され、換金はできず、有効期限があります。
  • 導入地域数は、2026年8月のカヤックの公表で31地域、公式サイトの一覧では17地域と、数え方で異なります。
  • 利用者約189,000人は、国土交通省が推計する関係人口約2,263万人の約0.8%(編集部推計)です。
  • 同じ課題に取り組む企業には、雨風太陽、おてつたび、君津信用組合、トラストバンク、飛騨信用組合があります。

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。