サグリを解説|アクタバの仕組みと費用・自治体の導入事例

サグリは、衛星データとAIで耕作放棄地を見つけ出し、市町村農業委員会の現地調査を減らす農業スタートアップです。主力の「アクタバ」は静岡県のA市で調査の作業時間を73%減らせると試算されており、公式サイトで導入事例が公開されています。この記事では、サグリの概要、アクタバの仕組みと費用、自治体の事例、検証結果の読み方、同じ分野の企業、そして農地と社会へのよい影響までを整理します。

この記事でわかること

  • サグリの会社概要と、アクタバ・デタバ・ニナタバの違い
  • アクタバの仕組み、料金の表示、江田島市の導入費用
  • 静岡県・江田島市・千葉市の導入事例と数字の読み方
  • 衛星・AIで農地や地域の課題に取り組む企業3社の比較
  • サグリが荒廃農地の把握と再生にもたらす良い影響

サグリの会社概要と提供する3つのサービス

サグリ株式会社は、衛星データ解析と機械学習で事業をつくる企業で、2018年6月14日に兵庫県丹波市で創業しました。サービスは農地活用事業とアグリイノベーション事業の2本柱です。

サグリは「人類と地球の共存」をビジョンに掲げ、日本、アジア、アフリカ、中南米の農業現場にサービスを提供していると公式サイトで説明しています。農業委員会や農業再生協議会が毎年行う現地調査の負担を、衛星データで軽くすることが、サービスの入口になっています。

項目内容
設立2018年6月14日
本社兵庫県丹波市氷上町常楽725-1(東京本社、浜松支店もあります)
代表者代表取締役CEO 坪井俊輔
資本金3000万円
事業農地活用事業、アグリイノベーション事業
サービス名何をするか主な使い手
アクタバ衛星データのAI解析で耕作放棄地を検出し、調査の割り当てから結果登録までを行う農地パトロールアプリ市町村農業委員会など
デタバ衛星データから作付けされている作物を推定し、申請作物との一致を確認する作付け調査アプリ自治体・JA・農業再生協議会
ニナタバ農地と担い手のマッチングを行うサービス農地の所有者、担い手
サグリビジョン農業由来のカーボントレーサビリティと脱炭素の算定を支援するサービス農業サプライチェーンを持つ企業

参照:サグリ株式会社 公式サイト(2026年10月時点)、サグリ「会社概要」(2026年10月時点)

アクタバの仕組みと調査の流れ

朝の光の中で広がる日本の水田と住宅地、背景に山並み

アクタバは、衛星データのAI解析で耕作放棄地率を地図上に表示し、現地調査が必要な農地を絞り込むアプリです。調査員はタブレットで担当農地を確認して現地へ向かいます。

公式サイトによると、耕作放棄地率は衛星データのAI解析に基づく「耕作放棄地である可能性」を示す値です。登録された調査結果は学習に使い、今後の判定精度を高める方針が示されています。判定そのものではなく、調べる順番と優先度を決める道具として位置づけると理解しやすくなります。流れは次の4段階です。

  1. 分析:耕作放棄地率を確認し、優先的にパトロールする箇所を把握する
  2. 割り当て:事務局が調査員へ担当農地を割り当てる
  3. 結果入力:調査員がタブレットで調査結果と写真を登録し、事務局側と同期する
  4. 一括更新:データをCSVで出力し、農業委員会サポートシステムや台帳システムの更新に使う

高分解能衛星画像は、直近1年以内に撮影されたものを部分的に利用できるオプションとして案内されています。

参照:サグリ「アクタバ」(2026年10月時点)

アクタバの料金はいくらか

公式サイトでは、耕作放棄地の把握機能が「¥10,000(税別)〜」と表示されています。課金の単位や条件は記載がなく、実際の費用は問い合わせで確認する形です。

項目公式サイトの表示補足
耕作放棄地の把握機能¥10,000(税別)〜課金単位や条件の記載なし
高分解能衛星画像オプション詳細は問い合わせ
導入方法資料の無料ダウンロード、お問い合わせ具体的な手順の記載なし

自治体が実際に支払った総額の例は、次の導入事例の章にある江田島市で確認できます。そこでは3年間の総額と従来方式との比較が公表されています。

サグリの導入事例|静岡県・江田島市・千葉市

サグリが公式サイトで公開しているアクタバの導入事例は、静岡県、広島県江田島市、千葉市の3件です。いずれもサグリ自身のページに基づき、数字は公表されたとおりに紹介します。

静岡県|県の研究会で調査のDX化を進めた事例

静岡県荒廃農地調査DX化推進研究会は、令和5年度に5市が先行導入した検証をもとに、令和6年4月に設立されました。事務局は一般社団法人静岡県農業会議です。

A市(農地約1,000ha)のモデル地区では、地図準備から結果の取りまとめまでの5段階で、導入前の884時間が導入後は236時間になり、648時間減(削減率73%)と試算されました。73%は実測ではなく試算として示されており、A市の検証期間は明記されていません。袋井市では令和6年度に農業委員の利用率が100%となり、現地調査の期間が約2か月から約1か月に短縮されたと、サグリが聞き取った事例として紹介されています。

参照:サグリ「静岡県の事例」(2026年1月19日掲載)

広島県江田島市|3年間の導入費用を公表した事例

江田島市は、小規模で傾斜のある農地が多く、毎年の農地利用状況調査で大判地図を持ち歩いて手書きし、約5万筆のExcel台帳に入力していました。

導入後は、AI解析で耕作放棄地の可能性が高い農地に調査対象を絞り込み、委員1人1台のタブレット貸与方式に変えました。3年間の導入費用は総額818万円(アクタバ利用料、タブレット13台、通信費など)で、半額をデジタル田園都市国家構想交付金で賄い、残りを市が負担しています。従来方式の3年間の費用は約687万円で、地図印刷費や残業代の削減により、約4年で回収できる見込みとされています。

参照:サグリ「江田島市の事例」(2025年10月16日掲載)

千葉市農業委員会|調査対象の農地数を約40%減らした事例

千葉市は人口約98万人の政令指定都市で、耕地面積は約3,500haです。令和6年度は希望する委員のみがアクタバを使い、令和7年度は事務局の依頼でほとんどの委員が使いました。

耕作放棄地率が30%未満で前年度が耕地だった農地と、80%以上で前年度が再生困難だった農地を現地調査から外し、調査対象の農地数は全体で約40%減りました。事務局の取りまとめは、紙の場合の92時間から29時間になったと紹介されています。課題として、アクタバと農地台帳管理システムが別システムのため、判定結果を移す手間が残っていると述べられています。

参照:サグリ「千葉市農業委員会の事例」(2026年10月時点)

関連記事:スマートシュリンクを解説|高知県・松前町の事例と支援企業4社

アクタバの精度と限界|効率化の数字をどう読むか

アクタバは、現地調査の対象を絞り込む用途では効果が公表されている一方、作物の種類によって判定の得意不得意があります。削減率は、比べている作業の範囲によって意味が変わります。

静岡県の検証では、田んぼは令和5年度に約7割が調査対象の絞り込みに使えたとされています。茶園は当初約3割にとどまり、樹木の判定により一律に耕作放棄地率50%と判定されていたことが原因でした。令和6年度には荒廃茶園の87%が高い耕作放棄率として正しく分類されるようになった一方で、管理された茶園が誤って高く判定される例も残っていると報告されています。令和7年度からは高分解能衛星画像が実装されています。

事例公表されている削減の数字数字の性格
静岡県A市884時間から236時間(73%減)5段階の作業時間を比べた試算
千葉市調査対象の農地数が約40%減。取りまとめは92時間から29時間事務局の取りまとめ業務が対象。記事は約70%減としていますが、92時間から29時間は68%減にあたります(編集部計算)
江田島市3年間の費用は818万円(従来方式は約687万円)費用は従来方式より高く、残業代や印刷費の削減で約4年で回収する見込み

つまり、アクタバは調査にかかる時間を減らす効果が各地で示されていますが、費用が下がるとは限らず、永年作物の判定にはなお改善の余地があります。導入を検討する自治体は、自分の地域の主な作物と調査の範囲に合わせて、検証の数字を読み替える必要があります。

衛星・AIで農地と地域の課題に取り組む企業3社

サグリと同じく、衛星データやAI、農地の再生で農業の課題に取り組む企業のうち、編集部が各社の公式サイトで確認できた3社を紹介します。5社に満たないため、確認できた3社に絞っています。

掲載順は社名の五十音順で、英字表記の社名は末尾に置いています。順位や推奨の順番を示すものではありません。下の表は、サグリを含む4社を各社の公式サイトにある情報だけで同じ項目にそろえたものです。公式サイトに記載がない項目は「公表なし」としています。

企業取り組みの対象仕組み公表している実績開始年
サグリ(本記事の対象)耕作放棄地、作付け、農地の担い手探し衛星データのAI解析とタブレットによる現地調査静岡県A市で作業時間73%減(試算)、千葉市で調査対象農地数が約40%減2018年(設立)
天地人水道インフラや農業など地上のリスクと価値宇宙ビッグデータとAI解析、無料のオンラインGIS「天地人コンパス」水道インフラの点検費用が最大65%減、調査期間が85%減(測定条件の記載なし)公表なし
マイファーム耕作放棄地の解消新しい営農モデル、技術支援、援農、体験農園の運営体験農園120カ所以上(時点の記載なし)公表なし
AGRIST農業の人手不足と脱炭素ロボットが集めた画像のAI解析、収穫ロボット世界で27以上のアワードを受賞(時点の記載なし)公表なし

株式会社天地人|宇宙ビッグデータで地上の課題を可視化

天地人は、宇宙ビッグデータとAI解析を組み合わせ、地上では見えにくいリスクや価値を可視化する東京都中央区のスタートアップです。支援の範囲は、無料のオンラインGIS「天地人コンパス」の提供と、農業での栽培適地の選定や栽培管理の支援です。JAXAから初めて出資を受けた企業で、JAXAベンチャーに認定されていることが特徴で、2022年には宇宙利用大賞で農林水産大臣賞を受賞したと公式サイトに掲載されています。

参照:株式会社天地人 公式サイト(2026年10月時点)、天地人コンパス(2026年10月時点)

株式会社マイファーム|耕作放棄地を解消する営農モデル

マイファームは、耕作放棄地の解消に向けた新しい営農モデルに取り組む会社です。支援の範囲は、農業技術の知見を生かした技術支援、農業人材による援農、国や自治体と連携した農業行政への関わり、農地を使った体験農園の運営です。全国に120カ所以上ある体験農園を運営していると公式サイトで紹介されています。衛星で調べるサグリに対し、農地そのものの再生と利用に近い立場の企業です。

参照:株式会社マイファーム 公式サイト(2026年10月時点)

AGRIST株式会社|AIと収穫ロボットで農業の人手不足に挑む

AGRISTは、ロボットが集めた画像をAIで解析してデータを蓄積し、安価でシンプルな農業ロボットを開発するスマート農業の会社です。宮崎県新富町に自社開発の農場を持ち、収穫ロボットの導入や脱炭素型農業を進めています。2026年10月8日付で「みどり認定」を取得し、2026年7月7日付で農林水産省の「開発供給実施計画」の認定を取得したと、公式サイトで発表されています。

参照:AGRIST株式会社 公式サイト(2026年10月時点)

関連記事:AGRISTを解説|収穫ロボットの仕組みと導入条件・社会への効果

サグリが荒廃農地の把握と再生にもたらす良い影響

水を張った田んぼに苗が並ぶ日本の農村の風景

サグリの取り組みは、人手が足りない自治体でも荒廃農地の調査を続けやすくし、再生や担い手探しへつなげる点で社会に役立ちます。ただし衛星判定は候補の絞り込みで、再生は別の施策が必要です。

調査の負担を減らし、荒廃農地の早期把握を続けやすくする

農林水産省によると、令和7年3月31日現在の全国の荒廃農地は25.7万haで、うち再生利用が可能なものは9.8万ha(農用地区域内は6.0万ha)です。令和6年度に新たに発生した荒廃農地は2.4万ha、再生利用された面積は0.8万haでした。発生した面積は再生された面積の3倍にあたり(2.4÷0.8、編集部推計)、荒廃農地は増え続ける構図にあります。

この調査を担う農業委員会の現場では、静岡県A市(農地約1,000ha)で作業時間が884時間から236時間になったと公表されています。1haあたりに直すと0.884時間から0.236時間です(編集部推計:884と236をそれぞれ約1,000haで割った値)。調べる負担が軽くなれば、人手の限られた自治体でも毎年の調査を維持しやすくなり、荒廃化の兆しを早く見つけられます。なお、この数字は調査にかかる時間であり、荒廃農地そのものが減ったことを示すものではありません。

比較する数字値出どころ
全国の荒廃農地(令和7年3月31日現在)25.7万ha農林水産省
うち再生利用が可能9.8万ha農林水産省
令和6年度の新規発生と再生利用2.4万haと0.8万ha(発生は再生の3倍、編集部推計)農林水産省
静岡県A市の1haあたり調査時間0.884時間から0.236時間(編集部推計)サグリ公表の静岡県の事例

参照:農林水産省「令和6年度の荒廃農地面積について」(2025年12月26日公表)

関連記事:鳥獣被害とジビエ活用:深刻化する農作物被害と地域資源化への挑戦

調べた結果を農地の貸し借りや担い手探しにつなげる

サグリは農地と担い手をつなぐ「ニナタバ」も提供しています。江田島市は、アクタバの結果を「江田島市版農地バンク制度」と連携させ、農地を借りたい人に情報を公開して継承や後継者確保を進める予定だと述べています。荒廃農地の把握と、借り手探しを同じデータでつなぐことで、再生利用が可能な荒廃農地が実際に使われるまでの距離を縮める狙いです。千葉市でも、現地で撮った写真を共有して違反転用の疑いを事務局が素早く確認できるようになったと紹介されています。

農業委員会や市町村の担当者は、まず公式サイトの資料請求や問い合わせから、自地域の主な作物や調査範囲で検証できるかを確認できます。

関連記事:空き家ゲートウェイを解説|100円物件の仕組みと費用・注意点

農業由来の温室効果ガスの見える化と海外での展開

サグリは、農地の境界をAIで自動作成して農法データから脱炭素の算定まで行う「サグリビジョン」を提供しています。VCS(Verified Carbon Standard)に基づく農業由来のカーボンクレジット創出や、SBTi-FLAGに対応した排出量・炭素除去量の算定も手がけています。土壌有機炭素のモニタリングは、農業サプライチェーンを持つ企業向けに5,000ha以上を提供目安としていると公式サイトに書かれています。発行したクレジットの量は公表されていません。

サグリは2026年9月3日に東京都の令和8年度CDRクレジット創出促進事業への採択を、2026年9月28日にウクライナの農業企業との、2026年10月1日にベトナムの製糖会社とのMOU(覚書)の締結を、それぞれニュースで発表しています。MOUの具体的な内容は、各ニュースで確認してください。

参照:サグリ「アグリイノベーション事業」(2026年10月時点)、サグリ「ニュース」(2026年10月時点)

よくある質問

サグリについて検索されやすい疑問に、公式サイトで確認できた範囲で答えます。

Q
サグリはどんな会社ですか
A

サグリは、衛星データ解析と機械学習で農業の課題を解く企業で、2018年6月14日に兵庫県丹波市で設立されました。農地活用事業とアグリイノベーション事業を展開しています。

Q
アクタバの料金はいくらですか
A

公式サイトでは、耕作放棄地の把握機能が「¥10,000(税別)〜」と表示されています。課金単位や条件の記載はなく、詳細は問い合わせで確認します。江田島市の3年間の導入費用は総額818万円でした。

Q
アクタバはどこまで正確に耕作放棄地を判定できますか
A

公式サイトに精度の数値は記載がありません。静岡県の検証では、荒廃茶園の87%が高い耕作放棄率として正しく分類されましたが、管理された茶園が高く判定される例もあり、判定は現地調査の優先順位づけに使うものです。

Q
アクタバとデタバは何が違いますか
A

アクタバは耕作放棄地を検出する農地パトロールアプリで、デタバは衛星データから作付けされている作物を推定する作付け調査アプリです。使う場面が、荒廃農地の把握か、申請作物の確認かで分かれます。

まとめ

サグリは、衛星データとAIで農地調査の負担を減らし、荒廃農地の把握と再生を支える企業です。ポイントは次のとおりです。

  • サグリは2018年6月に兵庫県丹波市で設立され、アクタバ・デタバ・ニナタバ・サグリビジョンを提供している
  • アクタバは耕作放棄地率を地図に示し、現地調査の優先順位をつけるアプリで、料金は「¥10,000(税別)〜」と表示されている
  • 静岡県A市では調査時間が884時間から236時間(73%減、試算)、千葉市では調査対象の農地数が約40%減と公表されている
  • 江田島市の3年間の導入費用は818万円で、従来方式の約687万円より高いが、約4年で回収する見込みとされている
  • 全国の荒廃農地は25.7万ha(令和7年3月31日現在)で、衛星判定は再生そのものではなく、把握と担い手探しを助ける手段である

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。