バッテリーパスポートを解説|2027年義務化の対象と支援企業4社

バッテリーパスポートは、電池1つずつに付く電子記録で、EUでは2027年2月18日から、EV用電池、LMT電池、容量2kWhを超える産業用電池に義務づけられます。日本企業でも、これらの電池をEU市場に出すなら準備が必要です。この記事では、対象と記載内容、準備の進め方を整理し、公式サイトで支援内容を確認できた企業4社と、取り組みの事例を紹介します。

この記事でわかること

  • バッテリーパスポートの意味と、規則上の位置づけ
  • 義務化の開始日と、対象になる電池の範囲
  • パスポートに載る情報と、閲覧できる人の区分
  • 発行に向けた準備の6ステップと、日本企業への影響
  • 対応を支援する企業4社と、取り組みの事例4件

バッテリーパスポートとは?電池ごとに付く電子記録

EUの公共充電スタンドに設置された急速充電器

バッテリーパスポートとは、電池1つずつに紐づく電子記録で、材料や炭素排出量、リサイクルの情報を確認できる仕組みです。

バッテリーパスポートは、EUの電池規則(規則(EU)2023/1542)の第77条で定められた電子記録です。電池の型式に関する情報と、個々の電池に固有の情報の両方を含み、使用の途中で変わる情報も記録されます。電池そのものにはQRコードが付き、QRコードから、製造事業者が付けた固有の識別子を通してパスポートに到達します。

要素役割
電池本体パスポートが紐づく実物。QRコードを付ける
QRコードパスポートへの入口。パスポートの全情報をQRコードに入れるわけではない
固有識別子市場に出す経済事業者が、電池ごとに付ける番号
バッテリーパスポート識別子の先にある、構造化された電子記録

規則は、パスポートの情報が正確で、漏れがなく、最新であることを、市場に出す経済事業者に求めています。電池が再利用や再製造を経た場合は新しいパスポートを作り、元のパスポートと結びつけます。電池がリサイクルされると、パスポートは役目を終えます。

欧州委員会は、この規則を、電池の調達からリサイクルまでを通じて持続可能で循環的にするための法律と位置づけています。2023年8月17日に発効しました。

参照:EUR-Lex「Regulation (EU) 2023/1542」、欧州委員会「Batteries」

バッテリーパスポートはいつから義務化?対象になる電池

義務化は2027年2月18日からで、対象はEV用電池、LMT電池、容量2kWhを超える産業用電池の3区分です。

規則の第77条は、2027年2月18日以降に市場に出す、または使用を開始する電池について、パスポートを持たせるよう定めています。対象は条文に挙がる3区分だけです。

区分対象となる条件義務化の開始日
LMT電池(軽量輸送機器用)すべて2027年2月18日
産業用電池容量が2kWhを超えるもの2027年2月18日
EV用電池すべて2027年2月18日

ポータブル電池などの区分は、第77条の対象に挙がっていません。ただし、定置型の蓄電システムなどが産業用電池に当たるかどうかは、製品の設計や用途で決まります。自社製品がどの区分に入るかは、規則の定義と照らして確認することが前提です。

義務化の対象になる主体は、電池を市場に出す経済事業者です。製造事業者だけでなく、輸入事業者なども含まれ得るため、サプライチェーンのどこが責任を負うかを早めに決める必要があります。

関連記事:サステナビリティ開示とは?義務化の時期と対象企業を解説

バッテリーパスポートに載る情報と、閲覧できる人

パスポートの情報は、一般公開、正当な利害関係者、認証機関と当局の3つの閲覧範囲に分かれます。

載せる項目は、規則の附属書XIIIが定めています。誰でも見られる情報と、限られた人だけが見られる情報が分かれていることが特徴です。

閲覧できる人主な項目
一般公開材料組成と有害物質、重要原材料、カーボンフットプリント、責任ある調達(デューデリジェンス)の情報、リサイクル材の含有、再生可能材の割合、定格容量、電圧、期待寿命、EU適合宣言など
正当な利害関係者と欧州委員会(電池モデル)正極・負極・電解液の詳細な組成、部品番号、分解情報、安全対策
認証機関、市場監視当局、欧州委員会規則への適合を示す試験報告書
正当な利害関係者(個々の電池)性能と耐久性の値、健全性(SoH)、状態(オリジナル、用途変更、再利用、再製造、廃棄)、使用で生じた情報

正当な利害関係者とは、分解や修理、再製造、リサイクルなどの事業に必要な人を指します。誰が当たるかは、欧州委員会が2026年8月18日までに実施法で定めるとされています。

バッテリーパスポートの発行に向けた準備6ステップ

準備は、対象の判定、責任者の決定、識別子の採番、データ収集、公開範囲の設計、更新体制の順に進めます。

  1. 対象かどうかを判定する。自社の電池がEV用、LMT、2kWh超の産業用のどれに当たるか、EU市場に出すかを確認します。
  2. 責任主体を決める。パスポートの内容に責任を負うのは、市場に出す経済事業者です。書面で別の事業者に代行を任せることもできます。
  3. 固有識別子とQRコードを用意する。QRコードと識別子は、ISO/IEC 15459シリーズまたは同等の規格に沿う必要があります。
  4. データの項目と出所を洗い出す。カーボンフットプリントやデューデリジェンス、リサイクル材の含有率は、上流の供給者から集める情報です。
  5. 公開範囲を設計する。一般公開、利害関係者、当局のどの区分に何を置くかを、附属書XIIIに沿って決めます。
  6. 更新できる体制をつくる。電池の状態や健全性は変わります。再利用や再製造では新しいパスポートが必要になります。

規則は、パスポートの情報をオープンな標準に基づく、機械で読める形式にするよう求めています。ベンダーに依存しない形でデータをやり取りできる設計が必要です。

関連記事:マスバランス方式とは?仕組み・計算例・認証・批判をわかりやすく解説

日本企業への影響と、日本版の取り組み

EU市場に電池や電池搭載製品を出す日本企業は対応が必要で、国内ではウラノス・エコシステムを軸に連携基盤が進んでいます。

KPMGジャパンの解説では、EU市場で製品が流通している場合などは、日本企業でも義務の履行を求められることがあるとされています。自動車メーカーや電池メーカー、蓄電システムの輸出企業は、取引先からデータの提供を求められる側にもなります。

国内では、経済産業省が進めるウラノス・エコシステムのもとで、自動車と蓄電池の業界のデータ連携を担う事業体が設立されました。DOWAエコジャーナルの解説によると、EUのCatena-Xとの連携も進められています。日本版のバッテリーパスポートに必要な情報を集めるため、関係する事業者が関わる仕組みが構築されている段階です。

参照:KPMGジャパン「欧州バッテリー規則の延期:ビジネスへの影響と対応策」、DOWAエコジャーナル「環境分野の情報管理 その3 バッテリーパスポート(BP)」

関連記事:ウラノス エコ システムとは?日本のデータ連携基盤をわかりやすく解説

バッテリーパスポートの対応を支援する企業4社

地下駐車場で充電中の電気自動車

支援する企業は、データを集めるソフト型、供給網の信頼性を担保する基盤型、規則対応を助けるコンサルティング型に分かれます。

ここでは、公式サイトでバッテリーパスポートに関する支援内容を確認できた4社を紹介します。公式ページを確認できなかった企業は載せていません。順序は社名の五十音順、続いて英字のアルファベット順で、優劣や推奨の順ではありません。いずれも編集部が公開情報から選んだ企業紹介です。

アスエネ

アスエネは、欧州電池規則への対応をシステムとコンサルティングの両方で支援する日本企業です。

支援範囲は、カーボンフットプリントの算定、リサイクル率の登録と管理、バッテリーパスポート発行に必要な報告書の作成、人権・環境デューデリジェンスの対応と開示です。特徴は、ウラノスとCatena-Xを通じたデータ連携にも触れている点です。

参照:アスエネ「欧州電池規則コンサルティング」(2026年10月時点)

Circularise

Circularise(サーキュライズ)は、オランダに本社を置き、バッテリーパスポート向けのソフトウェアを提供する企業です。

支援範囲は、供給者の証跡の収集、電池と原材料のトレーサビリティ、QRコードによる公開の管理です。特徴は、公開、パートナー、規制当局など、見せる相手ごとに閲覧範囲を分けて公開できる点です。同社は、BatteryPass-Readyプロジェクトのサポートパートナーにも加わっています。

参照:Circularise「Battery Passport」(2026年10月時点)、Circularise「BatteryPass-Readyのサポートパートナーに参画」

Circulor

Circulor(サーキュラー)は、デジタル製品パスポートとサプライチェーンの信頼性の保証を提供する企業です。

支援範囲は、バッテリーパスポートの生成と、供給網のデータを検証する「Trust & Assurance」の仕組みです。特徴は、供給者ごとのリスクに応じて保証の水準を変える段階的な枠組みを掲げている点です。

参照:Circulor(2026年10月時点)

EaseCert

EaseCertは、EU向けの製品適合サービスを展開し、EUデジタルバッテリーパスポートへの準拠も支援する企業です。

支援範囲は、要件の評価、附属書XIIIのデータの構造化、パスポートとQRコードの作成、EUのデジタル製品パスポート基盤への登録準備です。特徴は、要件の確認から登録の準備までを一連のサービスとして示している点です。

参照:EaseCert「EU デジタル バッテリー パスポート 2027」(2026年10月時点)

企業拠点の目安支援の中心公式サイトで確認できた内容
アスエネ日本コンサルティングとシステムCFP算定、リサイクル率管理、パスポート発行の報告書支援、デューデリジェンス
Circulariseオランダソフトウェア供給者の証跡収集、トレーサビリティ、QRコードの公開管理
Circulor公式サイトで確認できず追跡と保証の基盤パスポート生成、段階的な信頼性保証
EaseCert公式サイトで確認できず適合サービス要件評価、データ構造化、QRコード作成、登録準備

バッテリーパスポートの取り組み事例4件

欧州の自動車メーカーとバス製造企業、電池メーカー、日本のデンソーが、パスポートの試行や認証に取り組んでいます。

各社が自ら公表した内容だけを、公表のとおりに紹介します。成果の数値が公表されていない場合は、取り組みの内容にとどめます。

Honda Motor Europe

Honda Motor Europeは、本田技研工業の欧州法人です。

Circulariseと協力し、電池情報の構造化、管理、開示の方法を検討しています。商業上の機密を開示せずに、関係者が必要なデータへ届く流れを作る取り組みです。同社の発表では、成果の数値は示されていません。

参照:Honda Motor Europe「Honda uses Circularise to strengthen battery passport readiness」(2026年6月10日発表)

Solaris Bus & Coach

Solaris Bus & Coachは、ポーランドに拠点を置くバスの製造企業です。

ベルリン市交通局(BVG)向けの電気バスUrbino 18に、バッテリーパスポートを付けて納車しました。同社の発表では、量産バスとして世界初のバッテリーパスポート付きと説明されています。BVGが発注した50台の連節電気バスの1台目で、この注文の全車にパスポートが付く予定です。電池の情報は、部品に貼ったQRコードから確認できます。

参照:Solaris「Solaris delivers the world’s first electric bus with a battery passport」(2024年12月17日発表)

REPT Battero

REPT Batteroは、蓄電システム用の電池を手がける電池メーカーです。

CirculorとTÜV Rheinlandとともに、蓄電システム(BESS)向けで初とされるバッテリーパスポートのパイロットを完了しました。パスポートはCirculorのPROVEプラットフォームで作り、規制で求められるデータ項目をTÜV Rheinlandが第三者として検証しています。3者は、2027年2月の義務化に向けて協力を広げる予定です。

参照:Circulor「The First Battery Energy Storage System (BESS) Battery Passport pilot complete」

デンソー

デンソーは、日本に本社を置く自動車部品メーカーです。

2025年4月に、日本に本社を置く企業として初めて、Catena-XのEcoPassユースケースの認証を受けました。バッテリーパスポートのアプリケーションを開発中で、社内で使うほか、サプライチェーンの取引先にもデータ交換サービスとして提供する予定と、Catena-Xは伝えています。

参照:Catena-X「DENSO Certified by Catena-X for EcoPass as First Company Headquartered in Japan」(2025年4月22日発表)

支援企業を選ぶときの確認点

選ぶ前に、自社が頼みたい範囲を、データ収集、検証、規則対応のどれに置くかを決めると、候補を絞りやすくなります。

4社の公式サイトに書かれた内容を、頼みたいことの側から並べ替えました。どの企業が優れているかを示す表ではなく、公表内容の対応関係を整理した表です。契約前に、対象の電池区分と費用は各社に確認してください。

頼みたいこと候補になり得る企業根拠
日本語で相談しながら、CFP算定やデューデリジェンスもまとめて進めたいアスエネ公式サイトにCFP算定、リサイクル率管理、デューデリジェンス、発行の報告書支援が並ぶ
供給者の証跡を集め、見せる相手ごとに公開範囲を分けたいCircularise供給者証跡の収集と、公開、パートナー、規制当局などの閲覧範囲の管理を示している
供給網のデータの検証や、保証の水準を重視したいCirculorTrust & Assuranceの段階的な枠組みを示している
要件の確認から、QRコード作成と登録準備までを任せたいEaseCert要件評価から登録準備までのサービス内容を示している

パスポートの内容に責任を負うのは、あくまで市場に出す経済事業者です。支援企業に任せる範囲を決めても、情報の正確さの責任は自社に残る点には注意が必要です。

よくある質問

バッテリーパスポートについて、よく検索される疑問に答えます。

Q
バッテリーパスポートとは何ですか?
A

電池1つずつに紐づく電子記録のことです。EUの電池規則が定めており、材料組成やカーボンフットプリント、リサイクルに関する情報をQRコードから確認できます。

Q
バッテリーパスポートはいつから義務化されますか?
A

2027年2月18日からです。この日以降に市場に出す、または使用を開始するEV用電池、LMT電池、容量2kWhを超える産業用電池が対象です。

Q
日本企業にも対応が必要ですか?
A

EU市場に対象の電池を出す場合は必要になります。KPMGジャパンの解説でも、EU市場で製品が流通する場合は日本企業にも義務の履行が求められることがあるとされています。

Q
バッテリーパスポートの情報は誰でも見られますか?
A

一部だけです。材料組成やカーボンフットプリントなどは一般公開で、詳細な組成や分解情報は正当な利害関係者に、試験報告書は認証機関や当局に限られます。

Q
QRコードや識別子に決まりはありますか?
A

あります。QRコードと固有識別子は、ISO/IEC 15459シリーズまたは同等の規格に沿う必要があると、規則の第77条に書かれています。

まとめ

バッテリーパスポートの要点は次のとおりです。

  • バッテリーパスポートは、電池1つずつに紐づく電子記録で、EUの電池規則第77条が定めています
  • 義務化は2027年2月18日からで、対象はEV用電池、LMT電池、容量2kWhを超える産業用電池です
  • 情報は、一般公開、正当な利害関係者、認証機関と当局の範囲に分けて管理されます
  • 準備は、対象の判定、責任者の決定、識別子の採番、データ収集、公開範囲の設計、更新体制の順に進めます
  • EU市場に電池を出す日本企業は対応が必要で、国内ではウラノス・エコシステムが連携基盤になっています
  • 支援企業は公式サイトで支援内容を確認し、自社の電池区分と合うかを比べて選びます

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。