紙おむつリサイクルとは?仕組みと自治体・企業の取り組みをユニ・チャーム「RefF」で解説

使用済み紙おむつのリサイクルは、専用の処理技術を持つ企業と、回収の仕組みを整える自治体が連携することで実現できます。その代表例が、ユニ・チャーム株式会社が開発した水平リサイクル技術「RefF(リーフ)」で、使用済み紙おむつを新しい紙おむつへ再生する世界初の仕組みとして2019年に実用化されました。

日本国内では、高齢化の進行により使用済み紙おむつの排出量が年々増加しており、環境省は令和8年4月に「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」を改定し、自治体・事業者向けの支援策も拡充しています。本記事では、紙おむつリサイクルの仕組みと最新の制度動向、リサイクル技術を提供する企業、そして先行して取り組む自治体の事例までを、一次情報にもとづいて解説します。

この記事でわかること

  • 紙おむつリサイクル「RefF」の技術としくみ
  • 紙おむつリサイクルの製造プロセスと新技術「ドライ洗浄法」
  • 環境省ガイドライン改定(令和8年4月)と国内の排出量データ
  • 自治体・事業者が使える政府支援策(補助金・交付金)
  • 紙おむつリサイクルに取り組む企業と導入自治体の事例

ユニ・チャームのリサイクルおむつ「RefF」とは

ユニ・チャームのリサイクルおむつ「RefF」とは

「RefF」は使用済み紙おむつを新しい紙おむつへ再生する、世界初の水平リサイクルシステムです。

ユニ・チャームのリサイクルおむつ「RefF(リーフ)」は、使用済み紙おむつを回収し、新しい紙おむつへと再生する循環型リサイクルシステムです。2010年から技術開発に着手し、2019年には世界で初めてオゾン処理技術を用いた水平リサイクルを実現しました。

この取り組みの最大の特徴は、使用済みおむつから取り出したパルプを、未使用品と同等の品質レベルまで再生できる点にあります。従来、使用済み紙おむつは衛生面の課題から再利用が困難とされてきましたが、ユニ・チャームは独自の洗浄・殺菌技術によってこの問題を克服しました。

「RefF」という名称には、「Recycle for the Future」(未来のためのリサイクル)という意味が込められています。これまでのRefF活動により2026年8月31日時点で792万枚の使用済みおむつがゴミにならずにリサイクルされました(回収した使用済みおむつの重量を子ども用紙おむつとして換算)。

参照:ユニ・チャーム公式サイト「RefF」(2026年8月31日時点)

水平リサイクルの意義と環境負荷低減効果

水平リサイクルとは、製品を同じ品質レベルの製品に再生する循環型の資源利用方法です。

一般的なリサイクルでは、再生品の品質が元の製品より低下することが多く、これを「カスケードリサイクル」と呼びます。しかし、RefFが採用する水平リサイクルでは、使用済みおむつから取り出した素材を、新しいおむつに必要な品質レベルまで再生することが可能です。

環境省が令和8年4月に改定したガイドラインでは、使用済み紙おむつを再生利用することで、焼却処理と比較して1トンあたり0.4〜0.5トンのCO2削減効果があると試算されています。また、新たな原料となるパルプの生産に必要な森林資源の消費も抑えられるため、環境保全に多面的に貢献します。

さらに、使用済みおむつの焼却処分にかかる自治体の廃棄物処理コストも軽減できるため、環境面だけでなく経済面でもメリットがあります。

参照:環境省「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン改定について(概要)」(令和8年4月時点)

世界初の完全リサイクルシステムの実現

ユニ・チャームは2019年にパルプの水平リサイクルを世界で初めて実現しました。

その後も技術開発を継続し、高分子吸収材(SAP)についても再生可能な技術を確立しています。これは紙おむつのリサイクルにおいて、世界でも類を見ない完全リサイクルシステムの実現を意味します。従来は、パルプ以外の素材については焼却処分やエネルギー回収などの方法が取られることが一般的でしたが、RefFではおむつを構成するほぼすべての素材を再資源化できるようになりました。

この技術的ブレークスルーにより、使用済みおむつ1枚あたりの資源回収率が飛躍的に向上しています。世界各国で高齢化が進む中、紙おむつの使用量は今後も増加が見込まれており、この技術の社会的意義はますます高まっていくでしょう。

リサイクルおむつの製造プロセス

リサイクルおむつの製造プロセス

製造プロセスは「回収・選別」「破砕・分離」「洗浄・殺菌」「再生・精製」「製品化」の5段階です。

ユニ・チャームのリサイクルおむつは、使用済みおむつの回収から新製品の完成まで、厳格な品質管理のもとで複数の工程を経て製造されます。このプロセスは、衛生面での安全性を確保しながら、高品質な再生素材を生み出すために設計されています。特にオゾン処理を用いた洗浄・殺菌工程は、RefFの技術的優位性を支える中核となっています。

工程内容
①回収・選別保育園・介護施設・一般家庭に設置した回収ボックスから回収し、異物を人手と機械で除去
②破砕・分離専用の破砕機で細かく砕き、パルプ・高分子吸収材(SAP)・不織布・プラスチックフィルムに分離
③洗浄・殺菌独自のオゾン処理により、パルプの繊維を傷めずに細菌や汚れを除去
④再生・精製繊維長・白色度・吸水性を測定し、未使用パルプと同等の品質基準まで調整
⑤製品化再生パルプ・再生SAPを新しいおむつの製造ラインに投入し「RefF」ブランド製品として供給

使用済みおむつの回収と選別工程

回収されたおむつは異物を除去したうえで一時保管され、次の破砕工程に送られます。

ユニ・チャームは自治体と連携し、専用の回収ボックスを保育園や介護施設、一般家庭などに設置しています。回収されたおむつは専用の密閉容器に保管され、定期的に再資源化施設へと運搬されます。

施設に到着した使用済みおむつは、まず異物除去の工程に入ります。誤って混入したビニール袋、ウェットティッシュ、その他のゴミなどを人の手と機械で丁寧に取り除きます。この選別作業は、後の工程での機械トラブルを防ぎ、再生素材の品質を保つために極めて重要です。

破砕・分離による素材の取り出し

破砕したおむつをパルプ・SAP・不織布・プラスチックに種類ごとに分離します。

選別された使用済みおむつは、専用の破砕機によって細かく砕かれます。この工程では、おむつを構成する様々な素材を分離しやすい状態にすることが目的です。破砕されたおむつは数センチ程度の小片となり、次の分離工程へと送られます。

分離工程では、破砕されたおむつから主要な素材であるパルプ、高分子吸収材(SAP)、不織布、プラスチックフィルムなどを種類ごとに分けていきます。この分離作業には、風力や振動によって軽い素材と重い素材を分けたり、水に浮く素材と沈む素材を分離したりする、素材の密度や性質の違いを利用した機械的な方法が採用されています。

独自のオゾン処理による洗浄・殺菌技術

オゾンの酸化作用で細菌やウイルスを不活化し、パルプを衛材グレードまで再生します。

RefFプロジェクトの核心となるのが、独自のオゾン処理技術を用いた洗浄・殺菌工程です。オゾンは強力な酸化作用を持つ物質で、細菌やウイルスを効果的に不活化し、臭いの元となる有機物も分解します。この特性を活用することで、使用済みおむつに付着した排せつ物や細菌を衛生的に除去できます。

この技術により、再生されたパルプは衛材グレード、つまり医療用品にも使用できるレベルの衛生基準をクリアします。オゾンは処理後に自然に酸素へと分解されるため、環境への負荷が少ないという利点もあります。

再生パルプの精製と品質管理

パルプの繊維長・白色度・吸水性を測定し、未使用パルプと同等の品質に仕上げます。

オゾン処理によって洗浄・殺菌されたパルプは、さらに精製工程を経て、新しいおむつに使用できる品質レベルまで仕上げられます。精製工程では、必要に応じて追加の漂白処理や繊維の選別も行われ、再生パルプの色や質感が均一になり、製品としての品質が安定します。

また、高分子吸収材(SAP)についても、洗浄・再生処理を経て吸水性能を回復させる技術が確立されています。これらの再生素材は、新しいおむつの製造ラインに投入され、「RefF」ブランドの製品として市場に供給されます。

新技術「ドライ洗浄法」の開発

新技術「ドライ洗浄法」の開発

ドライ洗浄法は、従来の水流洗浄法に比べて水使用量を約50分の1に削減する新技術です。

2025年12月9日、ユニ・チャームは株式会社富士クリーンと連携し、使用済み紙おむつのリサイクルにおける新たな再資源化技術「ドライ洗浄法」の開発に着手したことを発表しました。この新技術は従来の水流洗浄法と比較して水使用量を約50分の1に削減できる手法です。

ドライ洗浄法の開発は、RefFプロジェクトのさらなる普及に向けた重要な技術革新となります。従来の方法では水資源が豊富な地域でなければ導入が難しいという課題がありましたが、この新技術によって水資源が限られた地域や海外への展開も可能になります。

参照:ユニ・チャーム ニュースリリース「使用済み紙パンツリサイクル、新技術『ドライ洗浄法』の開発に着手」(2025年12月9日)

ドライ洗浄法の原理と技術的特徴

水の代わりに繰り返し使用可能な特殊な溶剤を用いて、洗浄・殺菌・漂白を行います。

ドライ洗浄法は、ドライクリーニングの発想を応用した革新的な洗浄技術です。この溶剤は、汚れや有機物を効率的に溶解する性質を持ちながら、パルプ繊維を傷めない特性を備えています。使用後の溶剤は回収・精製システムによって浄化され、再び洗浄工程で使用されるため、溶剤の消費量も最小限に抑えられます。

従来の水流洗浄法との比較

水使用量を約50分の1に削減し、設備をコンパクト化できる点が最大の違いです。

従来のRefFプロジェクトで採用されていた水流洗浄法は、大量の水を使用してパルプを洗浄する方法で、水の確保や排水処理のための設備投資も大きく、導入できる地域が限られるという課題がありました。一方、ドライ洗浄法では水使用量が約50分の1に削減されるため、設備規模をコンパクトにできます。これにより、初期投資コストの低減や、水資源が限られた地域での導入が可能になります。

香川県での実証実験と今後の展開スケジュール

2026年に実験棟を設置し、2028年にプラント建設、2029年に稼働開始を予定しています。

ドライ洗浄法の開発は、香川県綾歌郡綾川町に本社を置く株式会社富士クリーンとの連携によって進められます。富士クリーンは1975年の創業以来、産業廃棄物の収集運搬・中間処理・最終処分に一貫して取り組んでいる企業です。

年予定内容
2026年富士クリーンの敷地内に実験棟を設置し、技術開発を本格的に開始
2028年本格的な再資源化プラントの建設
2029年プラント設備の稼働開始と、近隣自治体と連携した使用済みおむつの回収を正式に開始

水資源が限られた地域や海外展開への可能性

水を大量に使う従来技術では導入が難しかった地域でも、リサイクルが可能になります。

ドライ洗浄法の最大のメリットは、水資源が限られた地域でもリサイクルシステムを導入できる点です。世界には水不足に悩む地域が多く存在し、そうした地域では水を大量に使用する従来のリサイクル技術の導入は困難でした。特にアジアや中東などの新興国では、経済成長に伴い紙おむつの需要が急速に拡大していますが、廃棄物処理のインフラが十分に整備されていない地域も少なくありません。

RefFがもたらす環境メリットと社会的意義

RefFがもたらす環境メリットと社会的意義

資源の有効活用、CO2排出量の削減、廃棄物処理コストの低減など多面的な効果があります。

ユニ・チャームのリサイクルおむつ「RefF」は、単なる廃棄物処理技術にとどまらず、環境保全と持続可能な社会づくりに多面的に貢献する取り組みです。また、この取り組みは地域社会との連携によって進められており、自治体や企業、住民が一体となった循環型社会のモデルケースとしても注目されています。

CO2排出量削減と森林資源の保全効果

リサイクルにより、焼却時のCO2排出と新規パルプ生産に伴う森林伐採の両方を削減できます。

使用済み紙おむつを焼却処分すると、おむつに含まれる有機物が燃焼する際にCO2が排出されます。また、新しいおむつの製造には木材パルプが原料として使用されるため、森林資源の消費にもつながります。環境省の試算では、使用済み紙おむつを再生利用することで、焼却処理と比較して1トンあたり0.4〜0.5トンのCO2削減効果があるとされています。森林は地球温暖化を抑制する重要な役割を果たしており、その保全は気候変動対策としても極めて重要です。

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廃棄物処理コストの削減と自治体への貢献

リサイクルにより焼却量が減少し、自治体の処理コスト低減と焼却施設の延命化につながります。

国内の使用済み紙おむつ排出量(大人用・子ども用合計)は2023年度時点で約204〜228万トン、一般廃棄物処理量ベースで216万トンにのぼり、一般廃棄物全体の約5.5%を占めています。焼却処分には専用の設備やエネルギーが必要で、特に高齢化が進む地域では大人用おむつの使用量増加により、この処理コストの問題は深刻化しています。

RefFプロジェクトは、こうした自治体の廃棄物処理コストを削減する効果も期待されています。使用済みおむつがリサイクルされることで、焼却処分される廃棄物の量が減少し、焼却施設の負荷軽減や延命化にもつながります。

参照:環境省「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」本文(令和8年4月改定)

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SDGsへの貢献と企業の社会的責任

「目標12:つくる責任 つかう責任」に直接関連し、循環型ビジネスモデルの構築を後押しします。

RefFプロジェクトは、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献しています。特に「目標12:つくる責任 つかう責任」に直接関連する取り組みであり、持続可能な生産と消費のパターンを確保することを目指しています。企業が製品のライフサイクル全体に責任を持ち、廃棄後の処理まで含めた循環型のビジネスモデルを構築することは、現代社会における重要な課題です。

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自治体との連携と回収スキームの構築

自治体との連携と回収スキームの構築

紙おむつリサイクルの普及には、自治体との連携による回収スキームの構築が欠かせません。

使用済みおむつを確実に回収し、リサイクル施設へと輸送する仕組みを整えることは、技術開発と同様に重要な要素です。紙おむつの再生利用等に実施または検討で取り組む自治体は2023年度時点で全国78自治体(実施21、検討57)にのぼり、環境省は2030年度までにこれを150自治体とする目標を掲げています。

鹿児島県志布志市・大崎町での先行事例

2019年から回収を開始し、約8割の紙おむつを分別・回収しています(推計値)。

ユニ・チャームがRefFプロジェクトを最初に展開したのは、鹿児島県の志布志市と大崎町でした。両市町では2019年からモデル地区で回収した紙おむつの近隣リサイクルを開始し、市職員による丁寧な啓発活動の結果、約8割の紙おむつを分別・回収しているとされます(推計値)。リサイクル技術には「水溶化・分離・オゾン処理技術」が用いられ、パルプやSAPはおむつの素材に、プラスチックは回収袋・回収ボックス等として再生利用されています。

福岡県大木町:全国に先駆けた家庭系おむつリサイクル

2011年から家庭ごみの使用済み紙おむつリサイクルを全国で初めて開始した自治体です。

福岡県大木町は「水溶化・分離処理技術」を用いたリサイクル施設で紙おむつを再資源化しており、パルプは建築資材、プラスチックとSAPはRPF(固形燃料)、汚泥は土壌改良材として再生利用されています。大木町の公式サイトでも、紙おむつを含む資源物の分別収集の取り組みが案内されています。

参照:福岡県大木町公式サイト「ごみ・リサイクル」

京都府亀岡市:保育所・幼稚園での実証事業

令和6年度から公立保育所・幼稚園9園を対象に、年間約10トンのおむつで実証事業を実施しています。

亀岡市は栗田工業株式会社の分別処理装置「クリタサムズシステム」を採用し、市内事業者と連携して使用済み紙おむつを再資源化する事業に取り組んでいます。令和6年度は公立保育所・幼稚園9園で使用されたおむつ(年間約10トン)を対象に収集・資源化の実証事業を実施しており、今後は私立保育園や高齢者施設、家庭ごみへの展開を目指すとしています。

参照:亀岡市「定例記者会見 令和6年6月3日」

保育園・介護施設での回収システム

日々大量のおむつが排出される保育園・介護施設は、効率的な回収の重要な拠点です。

使用済みおむつの回収において、保育園や介護施設は重要な拠点となります。保育園では、保護者の理解と協力を得ながら、使用済みおむつを専用の回収ボックスに入れてもらい、施設側は定期的に回収ボックスを交換します。この際、臭気対策として密閉性の高い容器が使用され、衛生面にも十分配慮されています。介護施設でも同様のシステムが導入されており、特に大人用おむつの使用量が多いため、リサイクルによる廃棄物削減効果が大きいという特徴があります。

一般家庭からの回収拡大に向けた課題

家庭からの回収は量が分散しており、住民への周知と分別協力の徹底が課題です。

RefFプロジェクトのさらなる拡大には、一般家庭からの使用済み紙おむつ回収を増やすことが課題となっています。保育園や介護施設と異なり、一般家庭からの回収は量が分散しており、効率的な収集が難しいという問題があります。また、家庭での分別協力を得るためには、住民への丁寧な説明と理解促進が不可欠です。自治体によっては、既存のゴミ収集システムにRefFの回収を組み込むことで、効率化を図る工夫も行われています。

自治体連携の拡大に向けた今後の展望

ドライ洗浄法の実用化により、水資源の制約が少ない地域でも導入が進むと見込まれます。

ユニ・チャームは自治体数の拡大を目標に掲げており、今後もドライ洗浄法のような新技術の導入や、より多くの自治体との連携を進める方針です。2026年8月31日時点でこれまでのRefF活動により792万枚の使用済みおむつがリサイクルされており、自治体・企業との協力体制の拡大が、この実績を積み上げる基盤となっています。

国内データで見る紙おむつリサイクルの現状と制度動向

使用済み紙おむつの排出量は増加を続けており、一般廃棄物に占める割合も今後さらに高まる見込みです。

国内では年間約51〜57万トンの紙おむつが消費され、し尿を吸収して重量が増加した結果、使用済み紙おむつとして約204〜228万トンが排出・処理されています。

排出量は今後どう増えるのか(推計データ)

大人用おむつの排出量は2023年度の約153万トンから2050年度に約214万トンへ増加すると推計されています。

年度使用済み紙おむつ排出量(大人用)一般廃棄物に占める割合
2023年度約153万トン約5.5%(処理量216万トン)
2030年度約181万トン約6.6〜7.1%
2050年度最大約214万トン約7.7〜12.7%

子ども用紙おむつの排出量は2023年の約63万トンから2050年には約50万トンへ減少する見込みですが、高齢化に伴い大人用が増加するため、大人用・子ども用を合わせた総排出量は2023年から2050年にかけて約48万トン増加する見込みです。

環境省ガイドラインが令和8年4月に改定:何が変わったか

GHG削減効果の定量化や投資・コストの考え方の整理、先行事例の大幅な拡充が主な改定点です。

この記事が扱う紙おむつリサイクルの前提となる制度は、環境省「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」です。同ガイドラインは令和8年4月に改定されており、焼却処理と比較したGHG削減効果を定量データで提示したこと、自治体向けに現状〜2050年までの排出量をシミュレーションできるExcelツールを新たに搭載したこと、再生材(再生紙おむつ、固形燃料、建築資材など)の活用先情報を更新したこと、そして先行事例の紹介数を従来の3件から25件程度に大幅拡充したことが主な変更点です。この記事で紹介した志布志市・大崎町、大木町、亀岡市、富良野市の事例も、この改定後のガイドラインに収録されている先行事例にもとづいています。

自治体・事業者が使える政府支援策(補助金・交付金)一覧

自治体向けの伴走支援から、事業者向けの設備導入補助・税制優遇まで複数の制度があります。

環境省が令和8年5月時点でまとめた資料「紙おむつリサイクルで活用可能な政府支援策」には、地方公共団体・再生利用等事業者・排出事業者向けに活用できる制度が整理されています。紙おむつリサイクルの導入を検討する自治体や事業者にとって、どの制度が対象になるかを事前に把握しておくことは重要な準備のひとつです。

制度名対象事業者補助率・支援内容活用事例(採択年度)
使用済紙おむつの再生利用等に関する自治体伴走支援事業都道府県・市区町村220万円/件(事業内容に応じ最大440万円、令和8年度)愛媛県松山市・鹿児島県志布志市・大崎町(R4)、神奈川県座間市ほか(R6)
循環型社会形成推進交付金市区町村等1/3(高効率ごみ発電施設等の一部先進設備は1/2)西天北五町衛生施設組合(北海道、R3年に燃料製造装置を設置)
プラスチック等資源循環設備導入等促進事業民間事業者・団体等1/3(大企業)、1/2(中小企業)株式会社浜田(京都府亀岡市、R5採択)、株式会社公清企業(北海道石狩市、R6採択)
脱炭素型循環経済システム構築促進事業(資源循環システム構築実証事業)民間事業者・団体、大学・研究機関等1/3(大企業)、1/2(中小企業)栗田工業(R3)、住友精化(R6)、TOPPAN(R6)
地域の資源循環促進支援事業民間事業者・団体等請負事業ユニ・チャーム(R7、鹿児島県志布志市・大崎町)
再資源化事業等高度化設備の税制優遇高度再資源化事業等の認定事業者法人税の特別償却(取得価額の35%)、固定資産税の課税標準を1/2に軽減―

このほか、中小企業・個人事業者向けには日本政策金融公庫による低利融資制度もあります。制度の詳細な要件や公募時期は年度によって変わるため、実際の申請にあたっては必ず環境省または各制度の窓口で最新情報を確認してください。

参照:環境省「使用済紙おむつの再生利用等の導入にあたり活用可能な政府支援策の例」(令和8年5月時点)

紙おむつリサイクルに取り組む企業一覧(技術・サービス提供)

パルプ・SAPの再生技術やリサイクル施設の運営など、それぞれ異なる技術で参入する企業を紹介します。

紙おむつリサイクルには、ユニ・チャームのようなおむつメーカーだけでなく、廃棄物処理・化学メーカー・印刷会社など、さまざまな業種の企業が技術・サービスを提供しています。以下は各社の公式サイト・公式発表で確認できた取り組みを、会社名の五十音順で紹介するものです。ランキングや推奨順ではありません。

公清企業株式会社

北海道石狩市に本社を置く廃棄物処理会社で、使用済み紙おむつの再資源化専用施設「紙おむつリサイクルセンター」を運営しています。

2025年6月に石狩市で稼働を開始した専用施設で、紙おむつからパルプとプラスチックを分別処理しています。

処理設備を2台備え、回収したプラスチック類はベンチやウッドデッキなどへの再資源化を計画しているとしています。

参照:公清企業株式会社 公式サイト

住友精化株式会社

高吸水性樹脂(SAP)を製造する化学メーカーで、使用済み紙おむつから回収したSAPを再びSAPへ戻すケミカルリサイクル技術を開発しています。

姫路工場にパイロット設備を建設し、SAPの水平ケミカルリサイクル技術の確立を進めています。

再生SAPは未使用品と同等の吸水性能を維持できるとされており、環境省の実証事業にも採択されています。

参照:住友精化株式会社 プレスリリース

トータルケア・システム株式会社

福岡県福岡市に本社を置き、産業廃棄物処分業・収集運搬業の許可を持つ、紙おむつリサイクル専業の企業です。

回収した再生パルプを使ったトイレットペーパー「ラブフォレストロール」を商品化しています。

福岡県筑前町など複数の自治体・企業と完全リサイクルに関する事業連携協定を締結しており、福岡市のカーボンニュートラル貢献企業にも認定されています。

参照:トータルケア・システム株式会社 公式サイト

TOPPAN株式会社

印刷会社としての技術を生かし、使用済み紙おむつから回収できる資源をマテリアルリサイクルする体制づくりを進めています。

トータルケア・システム、住友重機械エンバイロメントと共同で「完結型マテリアルリサイクルシステム」を構築しています。

回収したプラスチックはおむつ回収ボックスなどに活用され、岐阜プラスチック工業と共同開発した回収ボックスには再生プラスチックを使った軽量高強度素材「テクセル」を組み込んでいます。

参照:TOPPAN株式会社 公式サイト

日本触媒株式会社

高吸水性樹脂(SAP)の大手メーカーで、使用済み紙おむつからのSAP分離・回収技術を他社と共同開発しています。

リブドゥコーポレーション、トータルケア・システムと共同で、SAPを紙パルプと分離しやすくする技術を開発しました。

尿を吸収して膨らんだSAPの性能低下を抑えて回収する技術で、同社が製造するSAPだけでなく、世界各国のさまざまなSAPにも適用できる技術としています。

参照:日本触媒株式会社 公式サイト

会社名主な役割・技術対応する工程状況
公清企業株式会社紙おむつリサイクル専用施設の運営回収・分別処理2025年6月稼働開始
住友精化株式会社SAPのケミカルリサイクル技術SAP再生パイロット設備で実証中
トータルケア・システム株式会社紙おむつ回収・パルプ再生と製品化回収〜製品化事業展開中
TOPPAN株式会社マテリアルリサイクル体制の構築再生資源の活用先開発事業展開中
日本触媒株式会社SAP分離・回収技術の開発SAP分離技術開発済み

よくある質問

紙おむつリサイクルについて、よく検索されている質問にお答えします。

Q
紙おむつのリサイクル「RefF」とは何ですか?
A

「RefF」は、ユニ・チャームが開発した使用済み紙おむつを新しい紙おむつへ再生する水平リサイクルの取り組みです。2019年に世界で初めてオゾン処理技術によるパルプの水平リサイクルを実現し、使用済みおむつから回収したパルプを未使用品と同等の品質まで再生します。

Q
紙おむつのリサイクルはどのような方法で行われますか?
A

主な方法は「回収→破砕・分離→洗浄・殺菌→再生・精製→製品化」という工程です。RefFではオゾン処理、新技術のドライ洗浄法では特殊な溶剤による洗浄が使われるなど、採用する処理技術は自治体や企業によって異なります。

Q
紙おむつリサイクルに使える補助金はありますか?
A

あります。環境省の「使用済紙おむつの再生利用等に関する自治体伴走支援事業」では自治体に対し1件220万円(令和8年度時点で最大440万円)の支援があるほか、民間事業者向けにも設備導入補助や税制優遇の制度が用意されています。

Q
紙おむつリサイクルにはどのような課題がありますか?
A

一般家庭からの回収量が分散していること、回収頻度や衛生管理の徹底、再生素材の活用先の確保が主な課題です。環境省の令和8年4月改定ガイドラインでも、投資・コストの考え方の整理や先行事例の共有を通じて、こうした課題への対応を後押ししています。

Q
紙おむつリサイクルに取り組んでいる自治体はどこですか?
A

鹿児島県志布志市・大崎町、福岡県大木町、京都府亀岡市、北海道富良野市などが代表例です。2023年度時点で78の自治体が実施または検討しており、2030年度までに150自治体とする目標が掲げられています。

Q
使用済み紙おむつの回収方法にはどのようなものがありますか?
A

保育園や介護施設に専用の回収ボックスを設置する方法が主流で、密閉容器で保管したうえで再資源化施設へ運搬されます。一般家庭からの回収は、自治体が広報や説明会を通じて分別への協力を呼びかけながら拡大を進めている段階です。

まとめ

まとめ

ユニ・チャームのリサイクルおむつ「RefF」は、使用済みおむつを新しいおむつへと再生する世界初の水平リサイクルシステムであり、独自のオゾン処理技術により衛材グレードの再生パルプを生成しています。2026年8月31日時点で792万枚の使用済みおむつがリサイクルされ、新たに開発されたドライ洗浄法は水使用量を約50分の1に削減し、水資源が限られた地域や海外展開への道を開きます。

環境省は令和8年4月にガイドラインを改定し、GHG削減効果の定量化や自治体向け支援策を拡充しました。志布志市・大崎町、大木町、亀岡市、富良野市などの自治体が先行して回収スキームを構築しているほか、公清企業、住友精化、トータルケア・システム、TOPPAN、日本触媒といった企業もそれぞれの技術でリサイクルを支えています。紙おむつリサイクルは、CO2削減や森林資源保全など環境面で大きなメリットをもたらし、SDGs達成にも貢献する取り組みとして、今後さらに広がっていくことが見込まれます。

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。