東京メトロの値上げは、2029年3月の運賃改定の実施を目指すと会社の資料で示されています。いくら上がるのか(新しい運賃額)はまだ発表されておらず、現在の大人運賃はきっぷで180〜330円、ICカードで178〜324円です。
東京地下鉄株式会社(東京メトロ)は2026年10月30日の決算説明会資料に「2029年3月の運賃改定の実施を目指す」と書き加えました。同じ日には、2028年度中にQRコードを使った紙のきっぷ「QR乗車券」を順次発売し、2029年度末を目途に磁気乗車券の発売を終える方針も発表しています。この記事では、東京メトロの公式資料に書かれている内容だけを使い、決まっていることとまだ決まっていないこと、現行の運賃、これまでの改定、定期券・IC・QRの今後を利用者向けに整理します。
この記事でわかること
- 東京メトロの値上げがいつから予定されているか
- 値上げについて決まっていることと、まだ発表されていないこと
- 現行の東京メトロの運賃(きっぷ・ICカード・小児)
- 2023年のバリアフリー料金加算など、これまでの運賃・料金の改定
- 定期券・ICカード・きっぷの今後と、QR乗車券・磁気乗車券の発売終了の予定
東京メトロの値上げはいつから?2029年3月の運賃改定を目指す方針
東京メトロの運賃の値上げは、2029年3月の実施を目指す方針です。2026年10月30日に公表された「2027年3月期第2四半期決算説明会資料」の重点戦略に、この時期が書き加えられました。
資料では、経営環境の変化への対応方針として「鉄道事業の持続性強化」「新たな成長機会の追求」「成長投資の強化」「運賃改定」の4つが重要な経営テーマです。運賃改定の項目には、物価上昇や労務費が高騰する中でも、利便性や安全性の向上につながる設備投資を積極的に行うため、「経営努力を前提に、2029年3月の運賃改定の実施を目指す」と書かれています。
| 項目 | 公式資料での扱い(2026年10月30日時点) |
|---|---|
| 改定の時期 | 2029年3月の実施を目指す |
| 改定の理由 | 物価上昇・労務費高騰の中でも、利便性・安全性の向上に資する設備投資を積極的に行うため |
| 値上げ幅・新しい運賃額 | 未発表 |
| 初乗り運賃・距離ごとの運賃 | 未発表 |
| 定期券・回数券・企画乗車券の新しい価格 | 未発表 |
| 会社の業績見通しへの反映 | 運賃改定は現時点の推計に織り込んでいない |
資料の「主な変更点」の一覧には、前回の資料からの変更として「運賃改定について、2029年3月の実施を目指す旨を追記」との記載があります。一方で、鉄道事業の営業収益の見通しを示したグラフには「運賃改定は、現時点での推計には織り込んでいない」という注記が付いており、値上げ後の収入の見込みも示されていません。
同じ資料では、2027年3月期の旅客運輸収入が、首都圏外からの流入減少や天候などの影響で業績予想の3,650億円には届かない見通しであることも示されました。2028年3月期の鉄道事業営業費は、経費や人件費の増加などで2027年3月期の業績予想の水準を上回る見通しとされています。
参照:東京メトロ「2027年3月期第2四半期決算説明会資料」(2026年10月30日)
東京メトロの値上げ幅は未発表、資料で示された運賃の決め方
東京メトロの値上げ幅は、2026年11月時点で発表されていません。決算説明会資料には、新しい運賃額の代わりに、運賃の水準を決めるときの国の仕組みが2つ紹介されています。
1つは国土交通省の「収入原価算定要領」で、今回の資料で新たにスライドが追加されました。もう1つは2025年10月に見直された「加算運賃」の制度です。どちらも制度の説明であり、東京メトロがどの制度を使って何円にするかは書かれていません。
収入原価算定要領(総括原価)による上限運賃
鉄道の運賃は、かかる費用と利益をもとにした「総括原価」を、運賃収入が上回らない範囲で上限が決まる仕組みです。資料では、総括原価が収入(上限運賃)以上になるように運賃を設定する関係が図で示されています。
| 総括原価の主な中身 | 資料での説明 |
|---|---|
| 営業費(線路費・電路費・車両費・列車運転費・駅務費) | 地下鉄10社の実績コストをもとにした基準コストで算定(ヤードスティック方式) |
| 減価償却費・諸税 | 2024年3月29日の国土交通省の見直しで算定方法が改善 |
| 事業報酬(支払利息・配当金等) | 事業資産に報酬率をかけて算定 |
ヤードスティック方式は、事業者どうしを間接的に競わせて効率化を進めるための方法と説明されています。収入の側は、過去の輸送実績などの傾向をもとに見込む形です。同じスライドの注記には、東京メトロが2023年3月から鉄道駅バリアフリー料金として1乗車あたり10円を加算して受け取っており、旅客運輸収入の約5%に当たることも書かれています。
2025年10月に見直された加算運賃の制度
加算運賃は、主に新しい路線の開業などで生じる大きな費用を回収するため、決まった区間で基本運賃に上乗せする運賃です。設定には鉄道事業法に基づく国土交通大臣の認可が必要とされています。2025年10月の国土交通省の通達で、既存の路線の輸送力増強や大規模な駅の改良も対象に加わりました。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 対象になる事業 | 新線建設に限定 | 利用者の利便の向上に直接つながる事業(輸送力増強、大規模な駅改良、新線整備等) |
| 受け取れる期間 | 供用開始から費用の回収が終わるまで | 工事開始後から費用の回収が終わるまで(供用開始前は最大10年間、受け取れる額は費用の50%以内) |
東京メトロは有楽町線・南北線の延伸を2030年代半ばの開業目標で建設しています。ただし、この延伸区間に加算運賃を設定するかどうかや、その金額は資料に書かれていません。
東京メトロの現行運賃(きっぷ・ICカード・小児)

東京メトロの現行の大人運賃は、きっぷが180円・210円・260円・300円・330円の5段階、ICカードが178〜324円です。どちらの金額にも、大人10円の鉄道駅バリアフリー料金が含まれています。
運賃は乗車するキロ程で決まります。ICカードは1円単位、きっぷは10円単位の運賃です。2029年3月の改定で新しい運賃が発表されたときに比べやすいよう、2026年11月時点の運賃表を残しておきます。
| キロ程 | きっぷ(大人) | きっぷ(小児) | ICカード(大人) | ICカード(小児) |
|---|---|---|---|---|
| 1〜6km | 180円 | 90円 | 178円 | 89円 |
| 7〜11km | 210円 | 110円 | 209円 | 104円 |
| 12〜19km | 260円 | 130円 | 252円 | 126円 |
| 20〜27km | 300円 | 150円 | 293円 | 146円 |
| 28〜40km | 330円 | 170円 | 324円 | 162円 |
小児の運賃は、バリアフリー料金を加算した後の大人の運賃の半額です。このほか、千代田線の綾瀬〜北千住間には特別な運賃があり、大人はきっぷ160円・ICカード155円、小児はきっぷ80円・ICカード77円です。この区間には鉄道駅バリアフリー料金が含まれず、加算もされません。南北線の目黒〜白金高輪間はきっぷ180円(小児90円)で、都営線のきっぷでも乗車できます。
参照:東京メトロ「普通券(きっぷ)」(2026年11月時点)、東京メトロ「千代田線 綾瀬・北千住間の運賃」(2026年11月時点)
東京メトロのこれまでの運賃・料金の改定
東京メトロでは、2023年3月18日から全路線で鉄道駅バリアフリー料金(大人1乗車10円)が加算されています。2025年3月と2026年3月には、24時間券や1日乗車券などの企画乗車券の発売額が改定されました。
| 実施日 | 対象 | 改定の内容 |
|---|---|---|
| 2023年3月18日 | 全路線の運賃(通学定期券を除く) | 鉄道駅バリアフリー料金を加算(大人1乗車10円、通勤定期券1か月370円) |
| 2025年3月15日 | 東京メトロ24時間券 | 大人600円から700円、小児300円から350円 |
| 2026年3月14日 | 東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券 | 大人900円から1,100円、小児450円から550円 |
| 2026年3月14日 | 東京フリーきっぷ | 大人1,600円から1,720円、小児800円から860円 |
| 2026年3月14日 | Tokyo Subway Ticket(24/48/72時間) | 大人800円から1,000円、1,200円から1,500円、1,500円から2,000円 |
これらは、ふだんの運賃表(距離ごとの基本運賃)そのものを見直したものではありません。2029年3月を目指す運賃改定は、普通運賃や定期券の運賃も含む改定になるかどうかを含めて、詳しい内容の発表を待つ段階です。
2023年3月から加算されている鉄道駅バリアフリー料金
鉄道駅バリアフリー料金は、ホームドアやエレベーターなどの整備と運営に使う料金です。東京メトロは2021年12月に国が創設した「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用し、2023年3月18日から東京メトロ全路線の大人運賃に加算しています。
| 券種 | 加算される額 |
|---|---|
| 普通運賃(きっぷ・ICカード) | 大人1乗車10円(小児は加算後の大人運賃の半額) |
| 通勤定期券・全線定期券 | 1か月370円、3か月1,050円または1,060円、6か月1,990円または2,000円 |
| 通学定期券 | 大人・小児とも加算しない |
| 千代田線綾瀬〜北千住間 | 含まず、加算もしない |
2024年3月29日付のバリアフリー整備・徴収計画では、年間徴収額を137億2,100万円、徴収期間を2023年3月から2030年6月までの7.2年間としています。2030年7月以降も続けるかどうかは、これから検討する予定です。整備方針には、ホームドアの全駅整備完了や、エレベーター・エスカレーター・バリアフリートイレの整備の推進が挙げられています。
参照:東京メトロ「鉄道駅バリアフリー料金についてのご案内」(2023年2月)、東京メトロ「よくあるご質問:鉄道駅バリアフリー料金はどの乗車券にどのくらい加算されるのですか」(2026年3月23日更新)、東京メトロ「バリアフリー整備・徴収計画」(2024年3月29日)
関連記事:WheeLog!とは?無料で使えるバリアフリーマップと走行ログ
2025年・2026年の企画乗車券の発売額改定
東京メトロ24時間券は、2025年3月15日に大人600円から700円になりました。理由は、物価高騰や人材確保が難しくなる経営環境の中でも、安全で安心な輸送サービスを維持・向上するためと説明されています。
2026年3月14日には、東京都交通局と共同で、東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券が900円から1,100円に、東京フリーきっぷが1,600円から1,720円に改定されました。旅行者向けのTokyo Subway Ticketも、24時間券が1,000円、48時間券が1,500円、72時間券が2,000円になっています。あわせて、京王・東急・京急・京成などが発売する共通企画乗車券の発売額も変わりました。
参照:東京メトロ「「東京メトロ24時間券」及び他事業者との共通企画乗車券の発売額改定について」(2024年12月20日)、東京メトロ・東京都交通局「企画乗車券の発売額変更について」(2026年1月30日)
定期券・ICカード・きっぷはどうなる?東京メトロのQR乗車券と磁気乗車券の発売終了

2029年3月の運賃改定で定期券やICカードの運賃がいくらになるかは、まだ発表されていません。一方、紙のきっぷは2028年度中に順次QR乗車券に切り替わり、磁気乗車券は2029年度末を目途に発売を終える予定です。
東京メトロは2026年10月30日、QR乗車券の導入と磁気乗車券の発売終了を発表しました。磁気の定期券も発売終了の対象ですが、定期券は交通系ICカードで引き続き利用できる環境を用意すると説明しています。券種ごとの予定は次のとおりです。
| 券種 | QR乗車券の発売 | 磁気乗車券の発売終了後の使い方 |
|---|---|---|
| 普通乗車券(きっぷ) | 2028年度中に順次開始 | QR乗車券を使う |
| 回数乗車券(障がい者用割引回数乗車券、通学用割引回数乗車券) | 2028年度中に順次開始 | QR乗車券を使う |
| 定期乗車券 | 対象外 | 交通系ICカードで引き続き利用 |
| 企画乗車券(1日乗車券など) | 対象外 | 交通系ICカードやデジタルQR乗車券で引き続き利用 |
磁気乗車券の発売は、2029年度末に向けて順次終わります。具体的な発売開始・発売終了の時期は、決まり次第お知らせするとされています。
参照:東京メトロ「東京メトロにおけるQR乗車券の導入について」(2026年10月30日)
QR乗車券の使い方と導入の理由
QR乗車券は、自動改札機のQRリーダーにかざして使う紙のきっぷです。券売機などで買う方法は今と変わらず、自動改札機に差し込む代わりに、QRコードを読み取らせる方式になります。
東京メトロは導入の理由として、磁気乗車券が駅の機器で詰まることがあること、磁気乗車券の用紙はリサイクルに一定の環境負荷がかかること、自動改札機や券売機の仕組みを簡単にして保守の効率を上げることを挙げています。QR乗車券の詳しい使い方は、今後あらためて発表されます。関係するほかの鉄道事業者とも連携して検討を進めるとしており、他社線へ乗り継ぐきっぷの扱いもまだ示されていません。
すでに使えるQRの企画乗車券とクレカ乗車
東京メトロでは、一部の企画乗車券をすでにQRコードで使えます。東京メトロ24時間券(QR)は大人700円・小児350円で、東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券(QR)は大人1,100円・小児550円です。
| 乗車サービス | 開始時期・内容 |
|---|---|
| QR企画券(24時間券) | 東京メトロ線全線で利用できる24時間券をQRで発売 |
| QR企画券の対象拡大 | 2026年3月25日からTokyo Subway Ticket、東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券を追加 |
| クレジットカード等のタッチ決済による後払い乗車 | 2026年3月25日に東京メトロ全線で開始、関東の鉄道事業者11社局で相互利用 |
QR企画券は、一度の決済で買ったすべての乗車券が有効期間内かつ未使用の場合に限り、マイページで払い戻しができます(手数料は1決済につき220円)。タッチ決済の後払い乗車は、タッチ決済に対応したクレジット・デビット・プリペイドカードや、それらを設定したスマートフォンが対象です。
参照:東京メトロ「各種一日乗車券」(2026年11月時点)
関連記事:teppayとは?使い方・使える店・チャージ方法とSuicaとの違い
東京メトロの値上げ前に利用者が確認しておきたいこと
東京メトロの値上げに向けて今できるのは、今の運賃と自分の使い方を把握し、新しい運賃の発表を待つことです。値上げ前に定期券を買った場合の扱いなど、具体的な経過措置はまだ発表されていません。
使い方ごとに、2026年11月時点で公式に示されていることをまとめると次のとおりです。新しい運賃額と経過措置は、いずれもまだ発表されていません。
| 使い方 | 今わかっていること | まだ発表されていないこと |
|---|---|---|
| ICカードで乗る | 現行は178〜324円(大人) | 2029年3月以降のIC運賃 |
| きっぷで乗る | 現行は180〜330円(大人)、2028年度中に順次QR乗車券へ | 新しい運賃、QR乗車券の発売開始日 |
| 通勤定期券 | 現行の運賃にバリアフリー料金(1か月370円)を含む、磁気定期券は2029年度末を目途に発売終了 | 新しい定期運賃、値上げ前に買った定期券の扱い |
| 通学定期券 | バリアフリー料金は加算されていない | 新しい定期運賃 |
| 24時間券・1日乗車券 | 2025年・2026年に発売額を改定済み、QRやICでも利用可能 | 2029年3月の改定で変わるかどうか |
磁気の定期券を使っている人は、発売終了に向けて交通系ICカードの定期券への切り替えが必要になります。会社の資料によると、精算機にモバイル端末のチャージ用の機能を搭載する計画(2027年3月導入完了予定)もあります。新しい運賃や移行の日程は、東京メトロのニュースリリースで発表される予定です。
関連記事:新幹線の値上げはいつから?のぞみ指定席・グリーン車の新料金と対策
よくある質問
東京メトロの値上げについて、よく調べられている疑問に、東京メトロの公式資料をもとにお答えします。
2029年3月の運賃改定の実施を目指すと、2026年10月30日の決算説明会資料で示されています。具体的な実施日はまだ発表されていません。
改定後の初乗り運賃は未発表です。現行の初乗り運賃(1〜6km)は、大人がきっぷ180円・ICカード178円、小児がきっぷ90円・ICカード89円です。
定期券の新しい価格や、値上げ前に買った定期券の扱いはまだ発表されていません。現在の通勤定期券には、2023年3月から鉄道駅バリアフリー料金(1か月370円)が含まれています。
紙のきっぷはなくならず、QRコードを使ったQR乗車券に変わります。2028年度中に順次発売を始め、磁気乗車券の発売は2029年度末を目途に終える予定です。
2024年3月29日付の計画では、徴収期間は2023年3月から2030年6月までです。2030年7月以降の継続については検討予定とされています。
まとめ
東京メトロの値上げは時期の方針が示された段階で、金額はこれからです。要点は次のとおりです。
- 東京メトロは2029年3月の運賃改定の実施を目指す(2026年10月30日の決算説明会資料)
- 値上げ幅、初乗り運賃、定期券の新しい価格はいずれも未発表
- 現行の大人運賃はきっぷ180〜330円、ICカード178〜324円
- 2023年3月18日から鉄道駅バリアフリー料金(大人1乗車10円、通勤定期1か月370円)を加算中
- 24時間券は2025年3月に700円、共通1日乗車券は2026年3月に1,100円へ改定済み
- 紙のきっぷは2028年度中に順次QR乗車券へ、磁気乗車券は2029年度末を目途に発売終了
- 定期券は交通系ICカード、企画乗車券はICカードやデジタルQR乗車券で引き続き利用できる