光技術でデータセンターの電力問題に挑む LightBridgeが進めるフォトニクス開発の民主化

株式会社LightBridge(ライトブリッジ)は、光の技術「フォトニクス」の設計・解析から試作・製造までを、一つの窓口で支援する東京都中野区の会社です。データセンターの電力消費が増え続けるなか、通信やセンシングを光に置き換える技術の開発を、研究者や企業が進めやすくすることに取り組んでいます。

代表のカトフ レドワン博士は、モロッコ・カナダ・日本で光技術の研究を重ねてきた研究者です。「日本の優れた光技術が、論文で止まって製品にならない」という課題意識から、2015年に同社を立ち上げました。

この記事でわかること

  • LightBridgeがどんな会社で、何を支援しているか
  • 光技術がデータセンターの電力問題にどう関わるか
  • 試作コストを抑えるMPWの仕組み
  • 自社開発の設計プラットフォーム「Photonica」と教育の取り組み
  • カトフ博士が創業に込めた思いと、これからの展望

LightBridgeは光技術の開発を一貫して支える会社

株式会社LightBridge代表取締役 カトフ レドワン博士

LightBridgeは、光学・フォトニクス分野のシミュレーションソフトウェアの提供と技術支援、そして海外ファウンドリ(半導体の製造工場)を使った試作・製造の支援を行う会社です。解析、設計、製造という三つの段階を、一貫した技術支援体制でつないでいることを特徴としています。

社名の「LightBridge」は、光(Light)で技術と現場を橋渡し(Bridge)するという姿勢を表しています。海外で開発された先進的なフォトニクス技術を、技術的な根拠を示しながら日本の研究者・技術者に届けることを、創業時から続けています。

支援の段階主な内容
解析・シミュレーションAnsys Lumerical、Zemax OpticStudio、Ansys Speosの販売と技術支援
設計ワークフロー自社開発のフォトニクス設計ワークフロー支援ツール「Photonica」
製造アクセスMPWおよびDedicated Run(専用の製造枠)による試作・製造の支援

公式サイトによると、国内の企業・大学・研究機関への導入・支援は100件を超えています。2016年にはAnsys Lumericalの日本での販売・技術支援を始め、現在はAnsysのAuthorized Channel Partnerとして光学製品の販売と技術支援を担っています。

研究者と「同じ言葉」で話す技術支援

LightBridgeの支援は、ソフトウェアを導入して終わりではありません。対象デバイスに合わせた解析手法の選定や前提条件の整備、製造の制約を踏まえた設計データの準備までを一緒に進めます。

カトフ博士は、海外製品を扱う企業が多い一方で、研究者やエンジニアが求める水準の技術的な議論まで踏み込める相手は限られていたと振り返ります。同じ技術を扱っていても、立場によって前提や使う言葉が違い、課題の本質が共有されないまま進んでしまう。技術を深く理解したうえで価値を届ける会社が必要だと感じたことが、事業の原点です。

同社によると、創業初期から続く顧客とは「製品の話だけでなく、研究そのものについて何でも相談される」関係を築いているといいます。

光技術でデータセンターの電力消費を減らす

データの伝送を電気から光に置き換えると、損失や発熱を抑えられるため、通信にかかる消費電力を大きく減らせます。LightBridgeは、その光の部品を設計・試作するための基盤を提供することで、電力問題に最も上流から関わっています。

AIの普及とデータセンターの増加で、世界の消費電力は増え続けています。カトフ博士は「消費電力がボトルネックになっている。データ伝送の高速化・大容量化が進む中、電気配線では消費電力や伝送損失が大きな課題になっています。光を活用することで、高速化と低消費電力化の両立が期待できます」と話します。データセンターでは通信が電力消費の大きな割合を占めており、光技術の導入は消費電力の削減に加えて、冷却の負荷を下げることにもつながります。

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通信だけでなく医療や自動運転にも広がる

光技術の応用先は、データセンターだけではありません。光を使ったセンシングでは、体の状態を体に負担をかけずに高い精度で測る研究が進んでおり、医療機器への応用が期待されています。自動運転車のセンサー(LiDAR)や、AR/VRの光学系も光技術が支える分野です。

カトフ博士は、光が電気をすべて置き換えるのではなく、「計算は電気、通信やセンシングは光」というように、それぞれの特性を生かして使い分けられていくと考えています。

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MPWで光集積回路の試作コストを下げる

MPW(マルチプロジェクトウェハ)は、1枚のウェハを複数の利用者で分け合って試作する仕組みで、光集積回路の試作費用を大きく抑えられます。LightBridgeは、海外ファウンドリのMPWへの参加を、日本の利用者向けに調整しています。

光集積回路の試作には、通常数千万円規模の費用がかかります。これでは、アイデアがあっても試作に踏み出せるのは一部の大企業に限られてしまいます。MPWなら費用を利用者で分担できます。MPWを利用することで、試作費用を大幅に抑えられる場合があり、スタートアップや中小企業、大学の研究室でも光技術の開発に挑戦しやすくなります。

欧州ファウンドリと連携した試作支援

LightBridgeは、Smart PhotonicsのInP(リン化インジウム)プラットフォームと、LIGENTECのSiN(窒化シリコン)プラットフォームへのMPW参加を調整しています。PDK(設計に必要な部品情報)の導入から、デザインルールの確認、GDS(回路の図面データ)の作成と検証、提出データの整備までを支援し、専用の製造枠(Dedicated Run)の相談にも対応しています。

シミュレーション中心の開発で試作のムダを減らす

試作の前にシミュレーションで設計を詰めておけば、作り直しの回数を減らせます。LightBridgeは、物理的な試作を減らし、仮想的な検証を中心にした開発への転換を支援しています。試作回数が減れば、開発期間や費用だけでなく、材料やエネルギーの使用量も抑えられます。

同社が顧客の変化として挙げている目安は、次のとおりです。

指標導入前導入後
試作回数4〜6回1〜2回
開発期間6〜12か月2〜4か月
試作コスト500〜1,500万円200〜500万円
LightBridge提供の資料による(2026年6月時点)

設計プラットフォーム「Photonica」と光技術の教育

Photonicaは、LightBridgeが自社で開発する光学・フォトニクス設計のワークフロープラットフォームです。複数の専門ツールを行き来していた作業を、一つの流れにまとめることを目指しています。

Photonicaは、視覚的な画面とPythonスクリプトの両方で操作できます。現在はメタレンズ・メタサーフェスの設計に対応したワークフローを提供しており、位相の設計から形状の割り当て、大規模なレイアウトの生成、GDSの出力までを扱えます。出力したデータを、その後のファウンドリでの試作工程につなげることができます。

光設計の裾野を広げるトレーニング

LightBridgeは、技術者や研究者向けのトレーニングにも力を入れています。同社によると、2023年から2025年にかけて年4〜6回、1回あたり10〜70名が受講し、半導体レーザー、メタレンズ、LiDAR、AR/VR光学などさまざまなテーマを扱ってきました。

専門家だけでなく、より多くの研究者・エンジニア・学生が光の設計に挑戦できる環境をつくることが、Photonicaとトレーニングに共通する狙いです。

モロッコから日本へ、教育が開いた創業への道

笑顔で語るLightBridgeのカトフ レドワン博士

カトフ博士が光技術の教育に力を注ぐ背景には、「教育によって自分の進路が大きく開かれた」という原体験があります。

モロッコ出身のカトフ博士は、モロッコの大学で原子物理学を学び、そこで出会ったカナダ人教授をきっかけに光技術の道へ進みました。カナダのラヴァル大学で光学・フォトニクスの研究に携わった後、文部科学省の国費留学生として来日し、筑波大学で博士(工学)を取得しています。その後、情報通信研究機構(NICT)や横浜国立大学での研究を経て、LightBridgeを創業しました。

一人で担った創業初期と組織への転換

創業初期は、営業、サポート、技術コンサルティング、顧客対応までをほぼ一人で担っていました。博士号や国際的な研究経験を知る顧客からは、製品だけでなく研究の方針そのものへの助言を求められることも多く、「自分が止まれば会社も止まる」という感覚があったといいます。

それでも、光技術を必要とする人がいる以上、事業をやめるのではなく「続ける方法」を考え、代表者個人に頼る状態から組織として価値を届ける状態への移行を一歩ずつ進めています。2025年1月には、合同会社から株式会社へ組織を変更しました。

「光が当たり前になる社会」へのこれから

LightBridgeが目指すのは、電気と同じように、誰もが光技術を使いこなせる社会です。その実現に向けて、Photonicaの高度化や、光集積回路の設計から製造までをつなぐ開発基盤づくりを進めています。

今後はデータセンター・AI向けの光ソリューションを強化するほか、より多くの人が光の設計に触れられる教材や環境の整備にも取り組む方針です。さらにカトフ博士は、日本の技術者教育のモデルを北アフリカに広げるため、モロッコに日本式の教育大学を設立することにも挑戦したいと語っています。

カトフ博士から読者へのメッセージ

光は、これからの社会の電気になります。誰もが使えるように、誰もが光技術を使って、新しいデバイスや製品を生み出せるように。データセンターの電力危機も、日本のフォトニクス産業の再生も、高度技術へのアクセス格差も、光技術と教育の民主化が解決します。LightBridgeは、その橋(Bridge)を担います。

光技術での新事業を考えている企業の研究開発部門や、フォトニクスで挑戦したいスタートアップにとって、設計から試作までを一つの窓口で相談できることは心強い存在になりそうです。

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株式会社LightBridgeの会社概要

株式会社LightBridgeの会社概要は、次のとおりです。

会社名株式会社LightBridge(ライトブリッジ)/LightBridge, Ltd.
代表者代表取締役 カトフ レドワン 博士(工学)
設立2015年4月27日(2025年1月に株式会社へ組織変更)
資本金1,000万円
所在地東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス2F エキスパートオフィス中野CP 512号室
事業内容光学・フォトニクスのシミュレーションソフトウェアの販売・技術支援、MPW等による試作・製造支援、設計ワークフロー支援ツール「Photonica」の開発
公式サイトhttps://lightbridge.co.jp/
LinkedInhttps://www.linkedin.com/company/lightbridge-ltd-/
YouTubehttps://www.youtube.com/@lightbridgephotonicssoluti1212
notehttps://note.com/lightbridge/n/naf43d43d40b2

よくある質問

LightBridgeと光技術について、よくある質問にお答えします。

Q
LightBridgeはどんな会社ですか?
A

光学・フォトニクスのシミュレーションソフトウェアの販売・技術支援と、海外ファウンドリを使った試作・製造の支援を行う会社です。2015年に設立され、東京都中野区に拠点があります。

Q
フォトニクスとは何ですか?
A

光を使って情報を伝えたり、測ったり、制御したりする技術のことです。光通信やセンサー、医療機器、自動運転のLiDARなどに使われています。

Q
MPWを使うと何が変わりますか?
A

1枚のウェハを複数の利用者で分け合うため、光集積回路の試作費用を抑えられます。MPWを利用することで、試作費用を大幅に抑えられる場合があり、スタートアップや大学でも試作に踏み出しやすくなります。

Q
光技術はなぜ省エネにつながるのですか?
A

光は電気信号に比べて損失や発熱が小さく、高速で効率よく情報を伝えられるためです。データセンターの通信を光に置き換えると、消費電力や冷却の負荷を下げられます。

まとめ

LightBridgeは、光技術の設計・解析から試作・製造までを一つの窓口でつなぎ、データセンターの電力問題や高度技術へのアクセスの格差に取り組む会社です。

  • Ansysの光学製品の販売・技術支援と、海外ファウンドリでの試作支援を、一貫した技術支援体制で担います
  • データ伝送を光に置き換えることで、データセンターの消費電力の削減に貢献します
  • MPWで試作費用を分担し、スタートアップや大学でも光技術の開発に挑戦しやすくしています
  • 自社開発のPhotonicaとトレーニングで、光の設計に挑戦できる人を増やそうとしています

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。