社会課題解決企業とは、事業活動そのものを通じて社会的な課題の解決に取り組み、利益と両立させながら継続的に活動する企業のことです。「社会課題解決企業」という国の認定制度はなく、経済産業省が示す3つの要件が判断の目安として使われています。
この記事でわかること
- 社会課題解決企業の定義と、判断の目安になる3つの要件
- 「ローカル・ゼブラ企業」という国の新しい区分との関係
- 社会課題解決に取り組むことで企業が得られる効果
- 相談できる支援団体・機関
- 実際に取り組んでいる代表的な企業
社会課題解決企業とは
社会課題解決企業とは、社会的な課題の解決に自社の事業として継続的に取り組む企業のことです。貧困や環境破壊、地域の担い手不足といった課題を、補助金や寄付だけに頼らず事業性を持って解決しようとする点が特徴です。
「ソーシャルビジネス」もほぼ同じ文脈で使われる言葉です。ソーシャルビジネスは事業のやり方そのものを指す言葉で、社会課題解決企業はその事業のやり方を実践している組織を指す言葉という違いがあります。株式会社やNPO法人など、法人形態は問いません。営利企業であっても、事業の中心的な目的が社会課題の解決に置かれていれば社会課題解決企業と呼ばれます。行政による補助や寄付を否定するものではなく、それらに依存しきらずに事業として自立的に継続できる収益構造を持つ点が、単なる社会貢献活動との違いです。経営者やCSR・広報の担当者が自社の立ち位置を説明する場面のほか、就職・転職先を探す求職者が企業研究の観点で調べる場面でも使われる言葉です。
企業の社会的責任という観点からはサステナビリティ企業という呼び方もあり、対象とする企業には重なりが見られます。サステナビリティ企業が主に環境・社会・企業統治(ESG)全般への配慮を指すのに対し、社会課題解決企業は特定の社会課題そのものを事業の柱に据えている点に違いがあります。
社会課題解決の主な分野
社会課題解決企業が扱う分野は幅広く、地域や課題の設定によって取り組みの内容も大きく異なります。
関東経済産業局は、地域の中小企業やスタートアップがビジネスとして取り組める可能性のある分野として「フード(フードロス削減・食糧需要への対応等)」「気候変動(環境エネルギー・防災)」を、持続可能な地域社会の実現のために特に優先すべき課題として「ウェルネス(健康増進・介護予防等)」「まちづくり(モビリティ、空き家・空き店舗)」の4分野を施策テーマに設定しています。人口減少や少子高齢化に伴う医療・介護人材の不足、交通・買物弱者、空き家・空き店舗の増加といった地域課題が、こうした分野設定の背景にあります。
これは関東経済産業局が管内の中小企業支援を念頭に設定した分野であり、社会課題解決企業が扱う分野を網羅的に定めたものではありません。実際には教育格差、ジェンダー、多文化共生など、この4分野に収まらない課題に取り組む企業も数多くあります。
参照:経済産業省関東経済産業局「社会課題解決の取組を支援するための施策一覧」(2025年4月1日更新)
経済産業省が示す3つの要件

経済産業省は2008年の報告書で、ソーシャルビジネスを「社会性」「事業性」「革新性」の3要件を備えた事業と整理しています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 社会性 | 現在解決が求められている社会的な課題に取り組むことを、事業活動の中心的な目的とすること |
| 事業性 | 社会的な使命をビジネスの形に表し、収益を確保しながら継続的に事業活動を進めること |
| 革新性 | 新しい商品・サービスや、それを届けるための仕組みを生み出し、その取り組みが社会に広がることで新しい価値を創出すること |
この3要件はあくまで判断の目安であり、満たしていることを公的機関が審査・認定する制度ではありません。自社の取り組みを説明する際の共通言語として使われています。後述するボーダレスジャパンやマザーハウスのように、特定の社会課題の解決を事業のミッションに据え(社会性)、それを継続的な事業として運営しながら(事業性)、独自の仕組みで新しい価値を生み出している(革新性)企業は、3要件に当てはまる例だといえます。
参照:経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書(概要版)」(2008年3月)
「ローカル・ゼブラ企業」という国の新しい区分
近年は、社会課題解決企業の一部を指す言葉として「ローカル・ゼブラ企業」という区分が国の政策に登場しています。
ゼブラ企業は2017年にアメリカで提唱された概念で、社会課題の解決と経済成長の両立を、白黒模様のシマウマにたとえたものです。急成長と評価額の最大化を目指す「ユニコーン企業」との対比で語られます。中小企業庁は、地域の社会課題解決の担い手となり、事業を通じて地域内の企業等と協業しながら新たな価値創造や技術活用によって社会的インパクトを生み出しつつ収益を確保する企業を「ローカル・ゼブラ企業」と位置づけ、2024年3月に「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を策定しました。
この基本指針にあわせて、中小企業庁はローカル・ゼブラ企業の社会的インパクトを可視化するための測定・マネジメントツールも公表しています。地域内外の関係者と協力しながら地域課題の構造を分析し、事業計画や資金調達につなげる実証事業を毎年度実施している点も特徴です。「社会課題解決企業」という言葉を使う場面と「ローカル・ゼブラ企業」という言葉を使う場面は多くの場合重なりますが、後者は特に国の政策文書で使われる公式な呼び方だと理解しておくと、行政の支援策を探す際に役立ちます。
参照:中小企業庁「地域課題解決事業推進(ローカル・ゼブラ企業)」(2024年3月策定の基本指針)
社会課題解決に取り組むことで企業が得られる効果

社会課題解決の取り組みは、企業イメージの向上や採用面でのプラスの効果として現れることが調査で確認されています。
帝国データバンクが2025年6月から7月にかけて実施した調査では、SDGsの各目標に力を入れている企業のうち69.9%が「効果を実感している」と回答しました。この割合は前年調査の69.5%から0.4ポイント増加しており、効果を実感する企業の割合はここ数年横ばいから微増で推移しています。具体的な効果の内訳は次のとおりです。
| 効果の内容 | 回答割合 |
|---|---|
| 企業イメージの向上 | 40.5% |
| 従業員のモチベーション向上 | 32.1% |
| 経営方針等の明確化 | 17.3% |
| 採用活動におけるプラスの効果 | 17.0% |
| 取引の拡大(新規開拓含む) | 11.8% |
| 売り上げの増加 | 11.7% |
この調査はSDGs全般への取り組みを対象にしたもので、社会課題解決企業に限定した数値ではありません。ただしSDGsは社会課題の解決を国際的な目標として整理した枠組みであり、SDGs企業としての取り組みと社会課題解決企業としての取り組みは、実務上重なる部分が大きいといえます。
参照:帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2025年)」(2025年7月25日公表)
社会課題解決に取り組む際に押さえておきたいポイント
自社だけで一から仕組みを作るより、既に実績のある支援団体や先行企業の知見を借りるほうが、遠回りを避けやすくなります。
経済産業省の3要件に照らして自社の取り組みを整理したうえで、資金調達や事業設計のノウハウを持つ中間支援組織に相談する、あるいは同じ課題に取り組む先行企業の事例を調べるという2つの動き方が代表的です。まずは自社の既存事業のどの部分がどの社会課題の解決につながっているのかを棚卸しし、経営層・従業員・取引先に向けて同じ言葉で説明できるように整理しておくと、支援団体に相談する際もスムーズです。次の項目では、それぞれの相談先と代表的な企業を紹介します。
「社会課題解決」を掲げる際に注意したいこと
実態の伴わない「社会課題解決」の表示は、景品表示法違反として行政処分の対象になり得ます。
消費者庁は2022年12月、根拠なく「生分解性」を訴求してカトラリーやストロー、ごみ袋、釣り用品などを販売していた事業者10社に対し、景品表示法の優良誤認表示にあたるとして措置命令を行いました。特定の環境下でしか分解が進まない製品を、どのような環境でも分解するかのように表示していた点が問題とされています。社会課題解決を掲げる場合も同様に、実際の効果を裏付ける根拠がないまま「環境に貢献」「地域に貢献」といった表示を行うと、同様の規制対象になり得ます。自社の取り組みを説明する際は、経済産業省の3要件のような客観的な枠組みに沿って、検証できる事実だけを伝えることが欠かせません。
参照:消費者庁「カトラリー、ストロー、カップ等の販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2022年12月23日)
社会課題解決に取り組む企業を支援する団体・機関
社会課題解決に取り組む企業や起業家を支援する団体・機関を、名称の五十音順で5つ紹介します。並び順に支援の優劣はありません。資金の出し手(財団・機構)と、経営や事業設計に伴走する組織(NPO・投資会社)とでは役割が異なるため、自社が今どちらを必要としているかを整理してから問い合わせ先を選ぶと、やり取りがスムーズです。
NPO法人ETIC.
社会起業家の育成に特化したNPO法人です。「社会起業塾イニシアティブ」を通じて、社会的な課題の解決を目指す起業家をスタートアップ枠とインパクト枠の2トラックで毎年選定し、伴走支援を行っています。次世代の起業家を育てる「MAKERS UNIVERSITY」や、地域企業と外部人材をつなぐ「iBARAKICO」など、対象や期間の異なる複数のプログラムを並行して運営しており、人材育成に強みを持つ点が特徴です。
一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
社会・環境課題の解決を目的としたインパクト投資を専門に行う財団です。課題の根本的な構造そのものを変える「システムチェンジ」を重視し、機会格差や地域活性化、医療分野などのソーシャルベンチャーに資金と伴走支援を提供しています。働く人の権利やジェンダー平等の分野を対象にした「はたらくFUND」のように、テーマを絞った資金枠を設けている点や、インパクト投資のエコシステムづくり自体にも取り組んでいる点が特徴です。
一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
休眠預金等活用法に基づき、休眠預金を原資とした助成・貸付・出資を行う指定活用団体です。資金分配団体を通じて、社会課題解決に取り組むNPOや事業者に資金を届ける仕組みを担っています。資金の出し手は助成と、資金分配団体を経由した出資の2つの形があり、近年は熊本地震や豪雨災害など、災害対応にあたる団体向けの緊急枠も設けている点が特徴です。
株式会社Zebras and Company
社会的インパクトと収益性の両立を目指すゼブラ企業への投資と伴走支援を専門に行う会社です。コミュニティづくり、投資、経営・財務・組織づくりに関するアドバイザリー、自治体や地方銀行との連携まで、複数の機能を組み合わせて支援しています。2021年3月設立で、ゼブラ企業のコミュニティ「Tokyo Zebras Unite」の運営など、ローカル・ゼブラ企業という考え方そのものの普及にも取り組んでいる点が特徴です。
参照:株式会社Zebras and Company公式サイト
公益財団法人日本財団
海洋、国際協力、子ども、災害、障害、地域社会の6分野を中心に、助成金を通じた社会課題解決の支援を行う財団です。助成先は事業者や団体からの応募を審査したうえで決定する仕組みで、個人や団体からの寄付に加えて企業・団体との連携による助成枠も設けており、幅広い分野の社会課題解決企業・団体を資金面から後押ししています。
| 団体・機関 | 主な支援内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| NPO法人ETIC. | 起業家の育成・伴走支援 | 社会起業塾イニシアティブによる人材育成 |
| SIIF | インパクト投資 | 課題の構造そのものを変えるシステムチェンジ重視 |
| JANPIA | 休眠預金による助成・貸付・出資 | 資金分配団体を通じた資金供給の仕組み |
| Zebras and Company | ゼブラ企業への投資・伴走支援 | 経営・財務・組織づくりまで一体的に支援 |
| 日本財団 | 助成金による支援 | 海洋・子ども・災害など6分野を中心に助成 |
社会課題解決に取り組む代表的な企業

実際に社会課題解決に取り組んでいる代表的な企業を、社名の五十音順で4社紹介します。並び順に優劣や推奨の意味はありません。上場企業から創業間もない企業まで規模はさまざまですが、いずれも特定の社会課題の解決を単発の活動ではなく本業として位置づけている点が共通しています。国内外のソーシャルビジネスの事例をさらに幅広く比較したい場合は、ソーシャルビジネス事例比較の記事でも紹介しています。
株式会社ボーダレスジャパン
貧困、差別、環境など多様な社会課題ごとに複数の社会事業を立ち上げるポートフォリオ型の経営を行う会社です。2026年2月時点で正社員・パート等を含め273名が在籍し、バングラデシュやミャンマー、グアテマラなど12か国以上で事業を展開しています。稼いだ利益を新たな社会起業家の起業資金に還元する「恩送り」の仕組みを持ち、起業家を育成する「ボーダレスアカデミー」も運営している点が特徴です。
株式会社マザーハウス
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を掲げ、開発途上国での製造とブランド展開を両立させる会社です。2006年の設立以来、バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカ、インド、ミャンマーの6か国で生産を行い、日本国内に約50店舗、台湾・シンガポールにも店舗を展開しています。バングラデシュの主力工場は2025年時点で従業員300名を超える規模に成長しました。デザイナーの山口絵理子氏と山崎大祐氏が2006年3月に共同で設立し、「途上国」という言葉のイメージを変えることを掲げている点が特徴です。
株式会社ユーグレナ
微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)の研究開発から食品・化粧品の製造販売、バイオ燃料の開発までを手がける会社です。バングラデシュの子どもたちに栄養素を含むクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」では、2023年12月までに累計1,700万枚以上のクッキーを配布し、国連開発計画(UNDP)のBusiness Call to Actionにも認定されています。バイオ燃料の分野では、持続可能な航空燃料「SUSTEO」をマレーシアの製造プラントでPETRONAS、Enilive社と共同生産し、羽田空港への供給契約も獲得しました。2005年設立で、東京証券取引所に上場しています。
株式会社LITALICO
「障害は人ではなく社会の側にある」という考え方のもと、障害のある人の就労支援と教育支援を軸に事業を展開する会社です。就労支援の「LITALICOワークス」、子ども向け教育の「LITALICOジュニア」「LITALICOワンダー」など、生活のステージに応じた複数のサービスを持ち、発達が気になる子どもの保護者向け情報サイト「LITALICO発達ナビ」など、当事者・家族向けの情報発信にも力を入れている点が特徴です。
| 企業名 | 事業内容 | 特徴的な取り組み |
|---|---|---|
| ボーダレスジャパン | 社会課題ごとの事業を複数展開 | 利益を新規起業家に還元する「恩送り」 |
| マザーハウス | 途上国での製造・ブランド展開 | 6か国で生産、国内外に店舗展開 |
| ユーグレナ | 微細藻類の研究開発・製造販売 | バングラデシュでの栄養支援プログラム |
| LITALICO | 障害者の就労・教育支援 | 生活ステージに応じた複数サービス |
よくある質問
社会課題解決企業についてよく寄せられる質問をまとめました。
国が審査・認定する制度はありません。経済産業省が示す「社会性・事業性・革新性」の3要件が、自社や他社の取り組みを説明する際の目安として使われています。中小企業庁が示す「ローカル・ゼブラ企業」も、同様に法的な認定制度ではなく政策上の区分です。
ほぼ同じ文脈で使われますが、厳密にはソーシャルビジネスが事業のやり方を指す言葉で、社会課題解決企業はそのやり方を実践している組織を指す言葉という違いがあります。文章の中では、どちらを使っても大きな誤解は生まれにくい言葉です。
ユニコーン企業が急成長と評価額の最大化を重視するのに対し、ゼブラ企業は社会的インパクトと持続的な収益性の両立を重視するという違いがあります。中小企業庁は、地域に根ざしたゼブラ企業を特に「ローカル・ゼブラ企業」と呼び、地域課題解決の担い手として支援しています。
帝国データバンクの調査では、SDGsに積極的な企業の69.9%が企業イメージ向上や採用面などの効果を実感していると回答しています。この調査はSDGs全般を対象にしたもので、社会課題解決企業に限定した数値ではない点には注意が必要です。
NPO法人ETIC.やJANPIA、Zebras and Companyなど、社会課題解決型の事業を専門に支援する団体・機関に相談する方法があります。資金調達を主目的にするか、人材育成や事業設計の伴走支援を主目的にするかによって、相談先を使い分けるとよいでしょう。
まとめ
社会課題解決企業とは、社会的な課題の解決を事業の中心に据え、利益と両立させながら継続的に活動する企業のことです。国による認定制度はありませんが、経済産業省の「社会性・事業性・革新性」という3要件や、中小企業庁が示す「ローカル・ゼブラ企業」という区分が、自社の取り組みを整理する手がかりになります。自社で一から取り組みを設計するより、支援団体に相談したり先行企業の事例を参考にしたりするほうが、着実な一歩につながります。あわせて、実態の伴わない表示は景品表示法上のリスクにもなるため、対外的に発信する際は検証できる事実に基づいて説明することを心がけましょう。