SDGs企業とは、SDGsの達成企業として国や第三者機関から公式に認定される地位ではなく、自社の事業活動を通じてSDGsの17目標の達成に具体的に取り組んでいる企業を指す言葉です。認定制度がない分、何から始め、どう見せるかが重要になります。
この記事でわかること
- SDGs企業に公式な認定・資格制度がない理由
- 企業がSDGsに取り組むメリット
- 中小企業がSDGsに取り組む3つのステップ
- SDGsウォッシュを避けるための注意点
- SDGs導入を支援するコンサルティング会社と企業事例
SDGs企業とは?公式な認定・資格制度はない
SDGs企業とは、政府や第三者機関による統一的な認定を受けた企業ではなく、SDGsの17目標に沿って自主的に事業活動を行っている企業を指す通称です。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年を期限とする17の国際目標です。日本国内では環境省をはじめとする各府省庁がSDGsの活用を呼びかけていますが、「この基準を満たせばSDGs企業と認定される」という統一的な資格試験や認証マークは存在しません。健康経営優良法人やエコアクション21のような公的な認定制度とは、この点が根本的に異なります。
そのため「SDGs企業」を名乗ること自体に法的な制約はありませんが、裏付けのない自称は後述するSDGsウォッシュとして信頼を失うリスクがあります。第三者評価としては、東洋経済新報社の企業ランキングやESGスコアのような民間の格付けが存在しますが、これらは特定の評価機関が独自の基準で採点したものであり、SDGs企業であることを公的に証明するものではない点に注意が必要です。
実務では、業界団体や自治体が独自に「SDGs宣言」「SDGs登録企業」といった仕組みを設けているケースもあります。これらは特定の地域・業界内での自己宣言や相互確認の場であり、国が定めた統一基準ではない点は共通しています。取引先や自治体からこうした仕組みへの参加を求められた場合は、まず自社の事業とSDGsのどの目標が対応するかを整理してから申請するとスムーズです。
参照:環境省「SDGs」(2026年8月時点)
SDGsとESG・CSRとの違い
SDGsは企業が目指すべき社会全体の「目標」であるのに対し、ESGは投資家が企業を評価する「基準」、CSRは企業の社会的責任を果たす「活動」という違いがあります。3つの言葉はセットで語られることが多いものの、それぞれ生まれた文脈と使う立場が異なります。
SDGsは国連が採択した国際目標であり、達成の主体は国・自治体・企業・個人を含む社会全体です。一方でESG(環境・社会・企業統治)は、投資家が企業の非財務情報を評価するための観点であり、企業側から見ると「投資家にどう評価されるか」という視点が中心になります。CSRは企業が事業活動を通じて社会に負う責任を指し、SDGsが広まる以前から使われてきた言葉です。実務上は、CSR活動の内容をSDGsの17目標に紐づけて説明し、その状況をESGの観点で投資家に開示する、という形で3つがつながっていきます。
3つの概念の関係性やそれぞれの企業実践については、サステナビリティ経営とは?意義・メリット・企業一覧を解説でも詳しく取り上げています。

企業がSDGsに取り組むメリット
企業がSDGsに取り組む主なメリットは、採用力とブランド力の向上、新規事業機会の獲得、投資家・取引先からの評価向上の3つです。
採用面では、就職・転職活動で企業の社会的姿勢を重視する人が増えており、SDGsへの取り組みを具体的に発信することが応募者への訴求材料になります。取引面では、大企業がサプライチェーン全体にSDGsへの配慮を求める動きが広がっており、中小企業にとっても取引先からの要請に応える形で対応が必要になる場面が増えています。
さらに、SDGsの17目標を新規事業のヒントとして活用する企業もあります。社会課題の解決を軸に商品・サービスを企画することで、これまで接点のなかった顧客層や補助金・助成金の獲得機会につながるケースもあります。金融機関からの評価という観点では、ESG融資やサステナビリティローンのように、環境・社会への配慮を条件に有利な金利を設定する金融商品も登場しています。
こうした評価軸の広がりを踏まえると、SDGsへの取り組みは守りのリスク対応と攻めの事業機会の両面を持つと捉えるのが実務的です。取引先の与信審査や入札の評価項目にSDGs・サステナビリティへの取り組みが加わる例も増えており、対応の有無が受注機会そのものに影響する場面も出てきています。
中小企業がSDGsに取り組む3つのステップ
中小企業がSDGsに取り組む際は、自社の事業とSDGsを結びつけ、小さく始め、発信するという3つのステップで進めるのが基本です。

- 自社の事業とSDGsの17目標を紐づける。既存の事業や商品が、17目標のどれに関係しているかを棚卸しします。新しく特別な活動を始める前に、すでに行っている取り組みをSDGsの言葉で説明し直すところから始めるのが現実的です。たとえば、廃材の削減に取り組んでいれば目標12「つくる責任つかう責任」、女性管理職の登用を進めていれば目標5「ジェンダー平等」というように、既存の活動を目標に対応づける作業だけでも取り組みの土台になります。
- できることから小さく始める。全17目標に一度に対応する必要はなく、自社の強みが最も活きる1〜2目標に絞って具体的な行動計画を立てます。担当者や部署だけで抱え込まず、経営層が方針を示したうえで現場が実行できる体制にすることが、活動を継続させるポイントです。
- 取り組みを社内外に発信する。自社サイトや採用ページ、名刺などで取り組みを発信します。数値や写真など具体的な根拠を添えることが、次に説明するSDGsウォッシュを避けるうえでも重要です。統合報告書やサステナビリティレポートのような形式で毎年まとめて発信する方法もあれば、自社サイトの1ページで継続的に更新していく方法もあり、社内の体制に合わせて選べます。
SDGsウォッシュに注意する
SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるように見せかけながら、実態が伴っていない状態を指す言葉です。発覚すると発信していた以上に信頼を損なうため、認定制度がないSDGs企業を名乗るうえで最も注意すべき点です。
典型的な例としては、具体的な数値やデータを示さずに「環境に配慮しています」といった抽象的な表現だけを使うケース、17目標のロゴを掲載しているだけで実際の事業活動との関連が説明されていないケース、一部の部署や商品だけの取り組みを会社全体の取り組みであるかのように発信するケースなどが挙げられます。
避けるための基本は、取り組みの範囲(全社か一部か)、時期、具体的な数値や事実を明記し、達成できていない目標について誇張しないことです。前項のステップ3で触れた「根拠を添えて発信する」姿勢が、そのままSDGsウォッシュ対策にもなります。発信前には、以下のチェックポイントを確認しておくと誇張を防ぎやすくなります。
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 範囲の明記 | 全社の取り組みか、一部の部署・商品に限った取り組みかを明示しているか |
| 時期の明記 | いつからいつまでの取り組み・実績かを示しているか |
| 数値・事実の裏付け | 「削減」「向上」などの表現に、具体的な数値や比較対象を添えているか |
| 目標との整合性 | 掲げているSDGsのロゴやアイコンと、実際の事業内容が対応しているか |
| 未達成の扱い | 達成していない目標を、達成したかのように誇張していないか |
SDGsに本気で取り組む企業に共通する3つの特徴
SDGsへの取り組みが社外から評価されている企業には、経営層のコミットメント、進捗の可視化、外部との対話という3つの共通点があります。
第一に、経営トップ自身がSDGsへの取り組みを経営方針として発信していることです。担当部署だけの活動にとどまらず、経営計画や中期方針の中にSDGsが位置づけられている企業は、取り組みが一過性で終わりにくい傾向があります。第二に、目標に対する進捗を数値で可視化し、統合報告書やサステナビリティレポートなどの形で毎年更新していることです。目標を立てるだけでなく、達成度合いを定点観測して公表する姿勢が、外部からの信頼につながります。第三に、NPOや国際機関、業界団体など社外の組織と対話しながら取り組みを進めていることです。自社だけの判断で「取り組んでいる」と発信するのではなく、外部の視点を取り入れることが、SDGsウォッシュを避けるうえでも有効に働きます。
SDGs導入を支援するコンサルティング会社6社
SDGsの導入や情報発信を専門家に相談したい企業向けに、支援会社を紹介します。掲載順は会社名の五十音順であり、評価や推奨の順位ではありません。自社の規模や課題に近い支援内容の会社に問い合わせることをおすすめします。
選び方の目安としては、統合報告書やサステナビリティレポートなど発信物の制作まで任せたいのか、社員研修を通じて全社への浸透を重視したいのか、戦略の策定そのものを一緒に考えてほしいのかで、向いている支援会社が変わります。複数の会社に問い合わせて、自社の課題感を言葉にする過程だけでも、次の一歩が明確になることがあります。
株式会社クレアン
サステナビリティ経営の推進を専門とするコンサルティング会社です。マテリアリティ(重要課題)の特定から、統合報告書・サステナビリティレポートの企画制作まで一貫して支援します。2000年の創業以来25年以上にわたり支援を続けており、東洋経済新報社のCSR企業ランキング上位100社のうち67社を支援した実績があります。
タナベコンサルティンググループ
経営コンサルティング全般を手がける東証プライム上場企業で、SDGs研修から戦略実装コンサルティングまで幅広く対応します。創業69年、22,100社以上への経営コンサルティング実績を持ち、SDGs導入のどの段階の企業でも相談できる体制を整えています。
株式会社Drop
マテリアリティ特定プラン(4ヶ月〜)と成果目標の策定支援プラン(5ヶ月〜)を軸に、SDGsを経営に統合するための伴走型コンサルティングを提供しています。上場企業から中小企業まで支援してきた実績があり、顧客企業が自ら考え実行できる体制づくりを重視しています。
日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)
人材育成・研修サービスを軸に、SDGsを自分ごととして浸透させる研修から経営層向けの戦略支援まで、階層別のプログラムを提供しています。研修・eラーニング・通信教育を組み合わせて実施できるため、全社員への浸透を重視する企業に向いています。
株式会社ネクストプレナーズ
中小企業に特化したSDGs導入支援会社で、戦略策定支援・ESG情報開示支援・認証取得支援・社内研修までを一貫して提供しています。300社超の支援実績があり、事業実態との整合性を確認しながら進める姿勢を明示しているのが特徴です。
株式会社ビジネスコンサルタント(BCon®)
組織開発と人材育成を軸に、サステイナブル経営の戦略策定から実践までを支援するコンサルティング会社です。北欧発の国際NGO「ナチュラルステップ」と協働しており、2021年7月に日本企業として初めて「Future-Fitパイオニア」認定を取得しています。
| 会社名 | 主な支援内容 | 対応規模 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式会社クレアン | マテリアリティ特定、報告書制作 | 大企業中心 | 25年超の実績、支援社数が豊富 |
| タナベコンサルティンググループ | 研修〜戦略実装まで一貫支援 | 大企業〜中堅企業 | 22,100社超の経営コンサル実績 |
| 株式会社Drop | マテリアリティ特定、目標策定 | 上場企業〜中小企業 | 伴走型の支援スタイル |
| 日本能率協会マネジメントセンター | 研修・eラーニング・通信教育 | 全社員規模 | 学習手段の組み合わせが柔軟 |
| 株式会社ネクストプレナーズ | 戦略策定〜認証取得支援 | 中小企業特化 | 300社超の支援実績 |
| 株式会社ビジネスコンサルタント | 組織開発、戦略策定 | 大企業〜中堅企業 | 国際NGOとの協働、国内初認定 |
SDGsに限らず幅広いサステナビリティ課題への対応力で会社を比較したい場合は、サステナビリティコンサル7社を比較|料金非公開の理由と選び方も参考にしてください。
SDGsに取り組む企業の事例
自社の取り組みを検討する際の参考になる、SDGs企業の事例を3社紹介します。掲載順は会社名の五十音順です。いずれも業種の異なる企業を選んでおり、自社の業種に近い事例だけでなく、他業種のアプローチも参考にすることで発想の幅が広がります。
イオン株式会社
「未来につながるより良い暮らし」を存在意義に掲げ、サステナビリティを事業の中心に据えています。生物多様性の回復、脱炭素社会の実現、循環型社会の実現、コミュニティとの協働など6つのマテリアリティを設定し、35周年を迎えた森づくり活動などを継続しています。
参照:イオン株式会社公式サイト
花王株式会社
ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を掲げ、個人の充実感・社会への配慮・環境保全・企業統治と倫理の4つを柱に事業を展開しています。脱炭素、ゼロウェイスト、水保全を重点課題とし、事業のライフサイクル全段階で環境配慮を組み込んでいる点が特徴です。
参照:花王株式会社公式サイト
株式会社ファーストリテイリング
ユニクロなどを展開する同社は、商品・サプライチェーン・環境・コミュニティ支援・従業員・ガバナンス・人権方針の7領域でサステナビリティに取り組んでいます。取引先工場リストを公開するなど、サプライチェーンの透明性確保に力を入れているのが特徴です。
SDGsが掲げる17目標そのものの内容や達成状況について詳しくは、持続可能な開発とは?SDGsの目標と具体的な事例をわかりやすく解説で解説しています。
よくある質問
SDGs企業について、よく検索される質問にまとめて回答します。
自社の事業活動を通じてSDGsの17目標の達成に具体的に取り組んでいる企業を指す通称です。公式な資格や称号ではありません。
ありません。健康経営優良法人やエコアクション21のような公的な認定制度とは異なり、SDGs企業という統一的な資格試験や認証マークは存在せず、自主的な取り組みの集合体です。
取り組めます。全17目標に一度に対応する必要はなく、既存の事業とSDGsを紐づけ、自社の強みが活きる1〜2目標に絞って小さく始めるのが現実的な進め方です。
SDGsに取り組んでいるように見せかけながら、実態が伴っていない状態を指す言葉です。具体的な数値や事実を示さない抽象的な発信は、SDGsウォッシュと受け取られやすいため注意が必要です。
SDGs専門のコンサルティング会社や、研修・情報開示支援を行う会社に相談する方法があります。自社の規模や課題に近い支援内容の会社を選ぶことが重要です。
SDGsは社会全体が目指す国際目標であるのに対し、ESGは投資家が企業を評価するための観点という違いがあります。企業の実務では、SDGsに沿った活動をESGの観点で開示するという形でつながります。
まとめ
SDGs企業とは、公式な認定を受けた地位ではなく、自社の事業を通じてSDGsの17目標に具体的に取り組んでいる企業を指す言葉です。まずは既存の事業とSDGsを紐づけ、できることから小さく始め、根拠のある発信を続けることがSDGsウォッシュを避けながら取り組みを進める近道です。経営層のコミットメント、進捗の可視化、外部との対話という3つの共通点を意識することで、社外からも実態の伴った取り組みとして評価されやすくなります。自社だけで進めるのが難しい場合は、今回紹介した支援会社への相談も選択肢になります。