健康経営アドバイザーとは?取得方法と企業での活かし方を解説

健康経営アドバイザーは、東京商工会議所が経済産業省の委託を受けて実施する研修を修了することで取得できる、健康経営の実践を社内に広げるための入門資格です。オンラインで申込から認定まで完結し、最短1日・8,800円(税込)で取得でき、取得後は健康経営優良法人の認定取得や外部の健康経営支援サービスの選定に役立てられます。

この記事でわかること

  • 健康経営アドバイザーの役割と資格の位置づけ
  • 資格取得の流れ・費用・認定期間
  • 上級資格「健康経営エキスパートアドバイザー」との違い
  • 資格取得後に企業がどう活かせるか
  • 健康経営支援サービス会社の選び方

健康経営アドバイザーとは

健康経営アドバイザーの研修資料を確認しながら話し合うビジネスパーソン

健康経営アドバイザーとは、健康経営の必要性や取り組み方を社内に伝える普及・推進役を担う資格です。

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点でとらえ、戦略的に実践する経営手法を指します。健康経営アドバイザーは、この考え方を「なぜ自社に必要か」「何から始めればよいか」という形でかみ砕き、社内に広める役割を担う人材です。資格そのものが専門的な改善提案を行うものではなく、あくまで健康経営の入口として社内の理解を底上げする位置づけです。

この研修プログラムは2016年から東京商工会議所が経済産業省委託事業として実施しており、これまでに延べ10万人以上が受講しています(東京商工会議所公式サイトより、2026年8月時点)。総務・人事・労務担当者のほか、健康経営に関心のある個人も対象で、社労士や中小企業診断士などの専門資格者に限定されていません。

健康経営優良法人の認定を目指す中小企業では、専任の産業保健スタッフを置いていないケースが少なくありません。健康経営アドバイザーは、そうした専任者不在の企業でも、既存の総務・人事担当者が短期間で最低限の知識を身につけられるように設計された資格という位置づけです。資格の名称に「アドバイザー」とありますが、社外の顧客に助言する立場ではなく、あくまで自社内に向けた説明役・推進役である点には注意が必要です。

健康経営が注目される背景には、労働人口の減少や医療費の増加、従業員のメンタルヘルス不調の増加といった社会的な課題があります。経済産業省と東京証券取引所は、優れた健康経営を実践する上場企業を選定する「健康経営銘柄」制度や、中小企業向けの「健康経営優良法人」認定制度を設けており、これらの制度への対応をきっかけに、社内で健康経営の担当者を置く企業が増えています。健康経営アドバイザーは、こうした制度対応の前提となる基礎知識を、専門部署がなくても身につけられる入口として設計されています。

参照:健康経営アドバイザー|東京商工会議所

資格取得の流れ(5ステップ)

資格取得はすべてオンラインで完結し、最短1日で申込から認定証のダウンロードまで進められます。

取得の流れは、東京商工会議所公式サイトで以下のように示されています(2026年8月時点)。

手順内容
1. マイアカウント作成東京商工会議所のサイトでアカウントを登録する
2. 申込・受講料支払いクレジットカード、コンビニ、Pay-easyのいずれかで決済する
3. 動画視聴健康経営の背景・メリット・実践ポイントを学ぶeラーニングを受講する
4. 効果測定(IBT)受験オンラインで理解度を確認するテストを受ける
5. 認定証ダウンロード基準を満たすとその場で認定証を取得できる

動画で学ぶ内容は、日本企業が抱える構造的な課題(労働力人口の減少や医療費増加など)、健康経営に取り組むことで得られるメリット、実践する際に押さえるべきポイントの3本柱で構成されています。専門用語を避けた解説になっているため、健康経営について初めて学ぶ人でも一通りの流れを理解できる内容です。申込者の年齢・職業・学歴に制限はなく、健康経営に関心があれば誰でも受講できます。

参照:健康経営アドバイザー|東京商工会議所

費用と認定期間

受講料は8,800円(税込)で、認定期間は取得日から2年間、更新には再受講が必要です。

項目内容
受講料8,800円(税込、テキスト・動画受講・IBT受験料を含む)
認定条件効果測定(IBT)で7割以上正答すること
認定期間認定年月日から2年間
更新方法2年ごとに研修を再受講する

受講料以外の追加費用は基本的に発生しません。更新時も同じ研修を再受講する形になるため、費用体系は取得時と変わりません。

参照:健康経営アドバイザー|東京商工会議所

個人・企業それぞれのメリット

個人は健康経営の実務知識を体系的に得られ、企業は社内の推進役を安価に育成できる点がメリットです。

個人にとっては、健康経営という言葉を漠然と知っている状態から、経営指標や具体的な施策のレベルで説明できる状態へ引き上げられる点が大きな利点です。人事・総務担当者であれば、健康経営優良法人の申請実務や社内向けの説明資料作成にそのまま活かせます。

企業にとっては、1人あたり8,800円という低コストで、社内に健康経営の「伝道役」を複数配置できる点が利点です。外部コンサルタントに一から説明を依頼する前段階として、まず自社の担当者が基礎知識を持つことで、その後の外部支援サービスとの打ち合わせも具体的に進めやすくなります。

資格取得者が社内で実際に担える業務の範囲は、次のように整理できます。

業務領域資格取得者が担える範囲
社内への説明・啓発経営層・従業員向けに健康経営の必要性や取り組み方針を説明する
健康経営優良法人の調査票対応調査票の設問内容を理解し、社内の該当情報を整理する
推進体制づくり健康経営宣言の起案や、担当部署間の役割調整を行う
専門的な課題分析・計画策定対象外(エキスパートアドバイザーや外部支援サービスの領域)

この考え方は、従業員の健康を経営資源として扱う人的資本経営とも重なります。人的資本経営とサステナビリティの関係についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

上級資格「健康経営エキスパートアドバイザー」との違い

アドバイザーは普及・啓発が役割で、エキスパートアドバイザーは課題抽出から計画策定までを担う上位資格です。

東京商工会議所は、健康経営アドバイザーの上位資格として「健康経営エキスパートアドバイザー」も運営しています。エキスパートアドバイザーは、中小企業が健康経営に取り組む際の課題を抽出・整理し、改善提案や計画策定まで踏み込んだ実践支援を担う専門人材の養成を目的としています。

項目健康経営アドバイザー健康経営エキスパートアドバイザー
役割健康経営の必要性・取り組み方を伝える普及役課題抽出・改善提案・計画策定を担う実践支援者
対象年齢・職業を問わず誰でも企業支援に携わる専門職、健康経営を実践したい経営層など
学習形式eラーニング動画+効果測定(IBT)知識確認テスト(全国約300会場で実施)+オンラインワークショップ(Zoom)
認定期間2年間2年間

エキスパートアドバイザーは全国で7,000人が受講し、満足度99.1%という実績が公表されています(東京商工会議所公式サイトより、2026年8月時点)。認定者には、専門家によるオンライン講義の録画や、ヒアリングシート・診断レポートのテンプレートがダウンロードできる特典もあります。社内に健康経営の考え方を広めるだけならアドバイザーで十分ですが、健康経営優良法人の認定に向けて具体的な計画を作り込む段階になったら、エキスパートアドバイザーの取得や、後述する外部の支援サービスの活用を検討する流れになります。

参照:健康経営エキスパートアドバイザー|東京商工会議所

資格取得後、企業はどう活かせるか

健康経営の推進体制について話し合う日本企業の会議の様子

取得者を推進担当に据えたうえで、専門性が必要な場面は外部の健康経営支援サービスと連携するのが実践的です。

資格を取得しただけでは、健康経営は自動的に進みません。実務上は、取得者が社内の「健康経営宣言」の起案や推進体制づくりの旗振り役となり、健診データの分析や施策の効果検証など専門性が求められる部分は外部の支援サービスに任せる、という役割分担が現実的です。

特に健康経営優良法人の認定を目指す場合は、調査票の記入支援や制度設計に慣れた外部の伴走支援を受けることで、申請までの期間を短縮しやすくなります。健康経営優良法人の認定基準や2027年申請の要点はこちらの記事で解説しています。

また、健康経営は従業員のウェルビーイング向上という側面も持ちます。ウェルビーイングとSDGsの関係性についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。

社内展開の進め方は、おおむね次のような段階を踏むと無理がありません。

段階取得者が中心となって行うこと
第1段階:社内発信経営層・従業員向けに健康経営の目的とメリットを説明し、理解を得る
第2段階:体制構築推進担当・関係部署を明確にし、健康経営宣言をまとめる
第3段階:外部連携データ分析や施策設計など専門性が必要な部分を外部サービスに依頼する

健康経営優良法人の認定基準との関係

健康経営アドバイザーの学習内容は、健康経営優良法人の認定で使われる調査票の構成と重なる部分が多く、資格を取得すると調査票を読み解きやすくなります。

健康経営優良法人の認定は、経営理念・組織体制・制度施策・評価改善という4つの大項目からなる調査票への回答をもとに審査されます。健康経営アドバイザーの研修では、これらの大項目がなぜ設定されているのか、どのような取り組みが評価されやすいのかという全体像を学ぶため、調査票に向き合う前段階の予備知識として役立ちます。ただし、調査票の個別項目の充足状況をどう埋めるかという実務は、資格の学習範囲そのものには含まれません。認定基準の詳細な内訳や2027年申請の変更点は、前章で紹介した健康経営優良法人の解説記事にまとめています。

健康経営支援サービス会社6選

健康経営の体制づくりを外部から支援する会社を、社名の五十音順で6社紹介します。順位や優劣を示すものではありません。選定にあたっては、健康経営優良法人の認定支援・データ分析・産業保健の専門職連携など、対応領域が明確に公表されている会社を対象としました。

健康経営アドバイザーを取得した担当者が社内の旗振り役となったあと、調査票対応・データ分析・研修運営など専門性が求められる領域を任せられる先として、各社のサービス内容を紹介します。

より専門的な伴走支援を求める場合は、コンサルタントへの依頼も選択肢になります。健康経営コンサルの選び方と費用相場を比較した記事で、認定支援に強い8社の特徴を確認できます。

会社名主なサービス内容特徴
アドバンテッジリスクマネジメント健康経営度調査票の記入支援、推進体制構築、健康投資管理会計の戦略マップ構築健康経営銘柄5年連続選定・ホワイト500を9年連続認定された自社実績を持つ
アポプラスキャリア健康経営宣言から認定取得までの6ステップ型トータルサポート業種・業界別に最適化した提案と、既認定企業向けの加点対策も実施
NTTPCスマートリング型ウェアラブルによる睡眠・運動・体調の可視化、不調予兆の管理者アラートオプションで健康経営アドバイザーAIを利用でき、月額1,000円(税込)から開始可能
さんぎょうい産業医・保健師・臨床心理士・管理栄養士が連携する伴走型コンサルティング健康経営未経験の企業向けに月額8万円からのスタートプランを用意
SOMPOヘルスサポート現状分析からコンセプトメイキング、KPI設定までの健康経営総合コンサルティング健診データを部署・拠点・職種・年代別に分析するデータドリブンな手法が特徴
東京海上ディーアールホワイト500認定支援、方針・体制整備、健診・ストレスチェックデータ分析グループ会社を含めた全社的な健康経営推進の自己宣言ガイドラインに賛同

アドバンテッジリスクマネジメント

従業員が快適に働ける職場づくりを前提に、専門コンサルタントが健康経営度調査票の記入支援から体制構築までを支援する会社です。健康経営銘柄5年連続選定・ホワイト500を9年連続認定された自社の実践知見をもとにした支援が特徴です。健康投資管理会計の「戦略マップ」構築支援まで対応し、同社によれば2025年度の支援企業における健康経営優良法人取得率は100%(認定申請企業ベース)とのことです。

参照:アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営支援コンサルティング

アポプラスキャリア

健康経営宣言から環境整備、健康課題把握、計画策定、施策評価、認定取得まで6ステップのトータルサポートを提供する会社です。産業医・保健師の実践経験に基づく成功事例を保有し、業種・業界別に最適化した提案を行います。既に認定を受けた企業向けの加点対策コンサルティングにも対応します。

参照:アポプラスキャリア 健康経営コンサルティングサービス

NTTPC

スマートリング型ウェアラブルデバイスを社員が装着し、睡眠・運動・体調データをアプリで可視化するサービスを提供する会社です。休職の前に現れる小さな変化を検知する予兆把握型のアプローチが特徴で、オプションで健康経営アドバイザーAIも利用できます。基本サービスは月額1,000円(税込)から利用可能で、ASPICクラウドアワード2024の経営改革貢献賞を受賞しています。

参照:NTTPC 健康経営®支援サービス

さんぎょうい

産業医・保健師・臨床心理士・管理栄養士など産業保健の専門職が連携し、健康経営をトータルサポートする会社です。労働安全衛生・両立支援・重症化予防・メンタルヘルス対策まで幅広く対応し、月額8万円からのスタートプランを用意しているため、健康経営が未経験の企業でも着手しやすい価格設定です。

参照:さんぎょうい 健康経営サポートサービス

SOMPOヘルスサポート

現状分析からコンセプトメイキング、ゴール・KPI設定までを一貫して支援する健康経営総合コンサルティング会社です。健診データを部署・拠点・職種・年代別に分析するデータドリブンな手法が特徴で、経営層への説得材料づくりから現場への浸透施策まで対応します。同社は自社サイトで、この分野における業界トップシェアを持つと説明しています。

参照:SOMPOヘルスサポート 健康経営総合コンサルティング

東京海上ディーアール

健康管理を経営的視点でとらえ、戦略的に実践する健康経営・ウェルビーイング経営の推進を支援する会社です。ホワイト500認定支援、方針・体制整備、データ分析支援の3領域をカバーし、グループ会社を含めた全社的な推進を掲げる自己宣言ガイドラインに賛同しています。

なお、健康経営アドバイザーの資格そのものを広く導入している企業の事例は、東京商工会議所の公式サイトでも社名単位では公表されていないため、本記事では企業事例の掲載を見送っています。

自社の状況に応じた選び方の目安は、次のように整理できます。

参照:東京海上ディーアール 健康経営支援コンサルティング

自社の状況候補になりやすい会社根拠
健康経営優良法人の取得実績が豊富な会社に頼みたいアドバンテッジリスクマネジメント、アポプラスキャリア認定取得支援の実績・成功事例を公表している
健診・活動データを定量的に分析したいSOMPOヘルスサポート、東京海上ディーアール部署・拠点・職種別のデータ分析支援を明示している
まずは小規模・低予算で始めたいさんぎょうい、NTTPC月額8万円からの伴走支援、月額1,000円からのツール提供など小さく始められる料金設計がある
産業医・保健師など専門職の関与を重視したいさんぎょうい産業医・保健師・臨床心理士・管理栄養士が連携する体制を明示している

よくある質問

健康経営アドバイザーについて、よく検索されている質問にまとめて回答します。

Q
健康経営アドバイザーの資格に合格率はありますか?
A

公式には合格率は公表されていません。効果測定(IBT)で7割以上正答すれば認定されるため、eラーニングの内容を理解していれば取得できる水準です。動画を視聴してから効果測定を受ける流れのため、内容を復習してから臨むことができます。

Q
健康経営アドバイザーは更新が必要ですか?
A

はい、更新が必要です。認定期間は取得日から2年間で、期限後も資格を維持するには研修を再受講します。健康経営に関する制度や統計は年々更新されるため、再受講は知識を最新化する機会にもなります。

Q
健康経営アドバイザーとエキスパートアドバイザーの違いは何ですか?
A

アドバイザーは健康経営の考え方を社内に広める入門資格で、エキスパートアドバイザーは課題抽出から計画策定まで担う上位の実践支援資格です。まずアドバイザーで基礎を身につけ、必要に応じてエキスパートアドバイザーや外部の支援サービスへ進むのが一般的な流れです。

Q
健康経営アドバイザーの資格は誰でも取得できますか?
A

はい、年齢・職業・学歴を問わず、東京商工会議所のWebサイトから申し込めば誰でも受講・取得できます。

Q
資格取得後、社内でどう活かせばよいですか?
A

社内の健康経営宣言や推進体制づくりの旗振り役を担い、専門性が必要な部分は外部の健康経営支援サービスと連携するのが実践的です。データ分析や施策設計まで自前で行おうとせず、役割分担を明確にすることが継続のコツです。

まとめ

健康経営アドバイザーは低コストかつ短時間で取得できる入門資格で、取得後は社内推進と外部支援の使い分けが鍵です。

受講料8,800円・最短1日というハードルの低さから、まずは総務・人事担当者が取得して社内の理解を底上げし、健康経営優良法人の認定や具体的な施策づくりに進む段階で、エキスパートアドバイザーの取得や外部の健康経営支援サービスの活用を検討するのが現実的な進め方です。

重要なのは、資格取得をゴールにしないことです。取得後に社内で何を発信し、どの業務を外部に任せるかを具体的に決めておくことで、資格が実際の健康経営の推進力につながります。自社の課題に合わせて、本記事で紹介した支援会社の対応範囲を比較してみてください。

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

Webマーケティングを行う編集チーム。 サステナビリティ・社会課題・企業の取り組みをテーマに、 実務経験に基づいた情報発信を行っています。