アンダークラスとは?人数・年収の実態と2026年度からの支援策

アンダークラスとは、非正規雇用を中心に長期的な貧困と社会的排除が重なった、日本社会の新しい下層階級を指す言葉です。早稲田大学教授・橋本健二氏の分析では全国に約890万人が該当し、平均個人年収は216万円にとどまります。非正規雇用の拡大、就職氷河期世代の困難、そして貧困の固定化といった現象の背景には、この新しい階級の出現があります。

本記事では、以下の内容について解説します。

  • アンダークラスの定義と歴史的背景
  • 日本社会における「新しい階級社会」の実態
  • アンダークラスの人数・割合・年収の最新データ
  • アンダークラスが生まれる構造的な原因
  • この問題が社会全体に与える影響と「自己責任論」の限界
  • 2026年度からの国の最新の支援プログラムと、個人が使えるリスキリング・転職支援サービス

アンダークラスとは

アンダークラスとは

アンダークラス(underclass)とは、社会の他の階級よりも低い社会的・経済的地位に置かれた、極端な貧困状態にある人々の層を指す社会学の概念です。単なる「低所得層」とは異なり、長期失業や不完全就業、社会からの排除、市民権の制約などが重なった状態を意味します。

近年、日本でも非正規雇用の拡大や格差の固定化により、アンダークラス層が増加していると指摘されています。この問題を理解することは、現代日本社会の課題を知る上で重要です。

アンダークラスの定義と基本概念

アンダークラスの定義と基本概念

ケンブリッジ英語辞典は、アンダークラスを「社会の他のすべての階級よりも低い社会的および経済的地位を持つ人々の集団」と定義しています。この概念を理解するには、複数の社会学者による定義を知ることが役立ちます。

参照:Cambridge Dictionary「underclass」(2026年9月確認)

社会学者たちによる多様な定義

スウェーデンの経済学者グンナー・ミュルダールは、アンダークラスを「永久的な失業者、就職不可能者および不完全雇用者」「国民全体から切り離された希望のないみじめな人たち」と定義しました。この定義は、経済的困窮だけでなく、社会からの断絶という側面を重視しています。

ドイツ出身の社会学者ラルフ・ダーレンドルフは、福祉国家の衰退によって市民権を奪われたり制限されている人々をアンダークラスと呼びました。この視点では、社会保障制度へのアクセスの有無が、アンダークラス形成の重要な要因となります。

イギリスの社会学者スコット・ラッシュは、工業から情報産業への転換の中で、構造的に下降移動させられた人々が新たな階級としてのアンダークラスを形成していると論じました。産業構造の変化が生み出す新しい不平等に注目した定義といえます。

ガルブレイスの「機能上不可欠なアンダークラス」論

アメリカの経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは、先進社会では「機能上不可欠なアンダークラス」が形成されていると指摘しました。誰もやりたがらない辛い仕事を低賃金で引き受け、都市の快適な生活を支える層が存在するという彼の指摘は、現代社会の矛盾を鋭く突いています。

この視点は、アンダークラスが単なる「問題」ではなく、現在の社会システムが構造的に必要としている存在であることを示唆しています。アメリカの社会学者チャールズ・マレーやケン・オーレッタも、1980年代のアメリカで同様の議論を展開しました(詳細は次章で解説します)。

論者によるアンダークラス観の違い【独自整理】

アンダークラス論は論者ごとに着眼点が異なり、一つの定義に集約できない広がりを持ちます。本記事のここまでの解説をもとに、代表的な論者の視点を整理すると次の表のとおりです。

論者主な着眼点対象・立場
グンナー・ミュルダール永久的な失業と社会からの断絶スウェーデンの経済学者
ラルフ・ダーレンドルフ福祉国家の衰退による市民権の制限ドイツ出身の社会学者
スコット・ラッシュ脱工業化による構造的な下降移動イギリスの社会学者
ジョン・ケネス・ガルブレイス「機能上不可欠なアンダークラス」という社会的依存構造アメリカの経済学者
チャールズ・マレー世代を超えた貧困の継続と福祉依存への批判アメリカの政治学者
ケン・オーレッタ現代経済で仕事を得るスキル・行動の欠如アメリカのジャーナリスト
橋本健二非正規雇用を中心とする日本独自の「新しい下層階級」早稲田大学教授(社会学)

構造要因を重視する論者(ダーレンドルフ、ラッシュ、橋本)と、個人の行動・スキルに着目する論者(マレー、オーレッタ)に分かれる点が、この概念をめぐる議論の対立軸です。この対立は、後述する「自己責任論」の是非にも直結しています。

アンダークラス概念の歴史的背景

アンダークラス概念の歴史的背景

アンダークラスという概念は、1960年代のアメリカで本格的に議論されるようになりました。都市部での長期貧困、失業、犯罪、スラム化などと結びつけて問題化され、社会政策の重要なテーマとなったのです。この時期のアメリカでは、産業構造の変化や人種問題とも関連しながら、都市貧困層の問題が深刻化していました。

1980年代の議論の変化

1980年代になると、チャールズ・マレーが世代を超えて続く永続的貧困層をアンダークラスと呼び、生活保護などの福祉政策への依存や「非生産的な行動」を強調する議論を展開しました。この議論は、個人の行動や文化に原因を求める傾向が強く、後に批判も受けることになります。マレーはアメリカだけでなく、1989年にはイギリスの新聞紙上でも同様の議論を展開し、大西洋の両側で「アンダークラス=個人の行動の問題」という見方を広めました。

同時期、ジャーナリストのケン・オーレッタは、都市部に集中し社会から切り離された、現代経済で仕事を得るスキルや行動を欠いた集団としてアンダークラスを描きました。これらの議論は、アンダークラスを「問題を抱えた人々」として捉える視点が強く、構造的な要因よりも個人的要因を重視する傾向がありました。

批判と議論の深化

こうした文化的要因や個人の行動を強調する議論に対しては、差別的なレッテル貼りにつながるという批判も強く出されました。貧困の原因を個人に帰することで、社会構造の問題が見えにくくなり、有効な政策につながらないという指摘です。

現在では、労働市場の変化、福祉制度、教育機会の不平等といった構造的要因を重視する分析が主流となっています。

日本社会における「新しい階級社会」とアンダークラス

日本社会における「新しい階級社会」とアンダークラス

日本では、早稲田大学の社会学者である橋本健二が、日本社会の階級構造を詳細に分析し、「新しい階級社会」の最下層としてアンダークラスが出現していると指摘しています。橋本の定義では、アンダークラスは「労働者階級の一部だが、労働者階級としての基本的要件すら欠くため、極端な貧困と多くの困難を抱える人々」とされています。

バブル期以降の格差拡大

バブル経済崩壊以降、日本では非正規雇用が急速に拡大しました。かつては主婦のパートタイムや学生アルバイトが中心だった非正規雇用が、企業のコスト削減策として本格的に活用されるようになったのです。この結果、低所得の新しい階級としてアンダークラスが形成され、人数も増え続けていると分析されています。

特に「就職氷河期世代」と呼ばれる、1990年代半ばから2000年代前半に就職活動を行った世代が、非正規雇用から抜け出せないまま中高年になり、アンダークラスに組み込まれているケースが多いと指摘されています。この世代は、景気悪化のタイミングで社会に出たため、安定した雇用を得る機会が限られていました。

日本のアンダークラスの特徴

日本のアンダークラスには、いくつかの顕著な特徴があります。まず、非正規雇用が中心で、雇用が不安定かつ低所得であることです。非正規雇用は正規雇用と比べて賃金水準が低いだけでなく、昇給や昇進の機会も限られています。

結婚率が低く、家族形成が難しいことも特徴です。年収が低く生活が不安定なうえ、将来の見通しも立たないため、結婚や子育てを諦めるケースが多いという実態があります。幸福感を持つ人の割合も低く、心理的なストレスやうつ状態、自己肯定感の低下といったメンタルヘルスの問題も指摘されています。

貧困が世代間で再生産されやすいことも深刻な問題です。仮に子どもがいても、教育費や学習環境の格差によって、貧困が次世代に引き継がれるリスクが高いとされています。社会保障からもこぼれ落ちるリスクが高く、病気や事故などのショックに対して極めて脆弱な状況にあります。

政治参加の低さ

政治への無力感が強く、投票に行かない人の割合が高い「政治的に見捨てられた層」でもあります。自分たちの声が政治に届かないという感覚から、選挙に行かず政治参加が低くなり、結果として政治からも無視される悪循環が生じています。この状況は、民主主義の健全性という観点からも懸念される問題です。

アンダークラスの人数・割合・年収はどれくらいか

橋本健二氏の最新の分析では、日本のアンダークラスは約890万人、就業人口の13.9%を占め、平均個人年収は216万円です。橋本氏が2018年に発表した先行研究(2015年SSM調査データに基づく)では約930万人・14.9%・平均年収186万円とされており、比較すると人数はやや減った一方、年収の低さと未婚率の高さは変わっていません。

項目2015年SSM調査データ時点2022年就業構造基本調査データ時点
推計人口約930万人約890万人
就業人口に占める割合14.9%13.9%
平均個人年収186万円216万円
男性の未婚率66.4%7割超

人数がやや減少し平均年収も上向いた背景には、人手不足を背景とした非正規雇用の賃金上昇があるとみられますが、平均216万円という水準は依然として生活の安定には遠く、未婚率の高さが示すとおり家族形成への影響も続いています。

参照:橋本健二「『新しい階級社会』とアンダークラス」(現代の理論)(2015年SSM調査データ、2018年発表)、橋本健二『新しい階級社会 最新データが明かす〈格差拡大の果て〉』講談社現代新書(2022年就業構造基本調査データ、2025年6月刊行)

関連記事:サステナビリティと人的資本の関係とは?企業価値向上につなげる経営戦略を解説

アンダークラスが生まれる構造的な原因

アンダークラスが生まれる構造的な原因

アンダークラスの形成は、個人の努力不足ではなく、社会の構造的な変化によってもたらされています。複数の要因が複雑に絡み合って、この層を生み出し、固定化させているのです。

経済構造の変化

産業構造が工業から情報産業・サービス産業中心に移行する中で、単純労働の価値が低下し、一部の労働者が構造的に階層下降させられたことが大きな要因です。製造業が中心だった時代には、学歴が高くなくても安定した雇用と一定の賃金を得ることができました。しかし、情報化やサービス経済化が進む中で、そうした仕事は減少し続けています。

グローバル化と技術革新により、中間層の雇用が減少し、低賃金サービス労働に押し出される現象も起きています。かつて中間層を支えていた事務職や製造現場の仕事が、自動化や海外移転によって失われ、残された仕事は低賃金のサービス業が中心となっているのです。

労働市場と雇用形態の変化

非正規雇用(派遣、アルバイト、契約社員など)の拡大が、安定した正規雇用からの排除を生み、アンダークラス層を形成する直接的な原因となっています。企業が人件費削減のために非正規雇用を増やした結果、多くの労働者が不安定な雇用に追いやられました。

非正規雇用は賃金水準が低いだけでなく、昇給・昇進の機会やスキル形成の機会も限られるため、一度非正規になると正規雇用への移行が難しくなります。この「階層移動の困難さ」が、アンダークラスの固定化につながっています。職業訓練の機会も少なく、キャリアアップの道筋が見えにくい状況にあります。

福祉・社会保障制度の問題

福祉国家の縮小や社会保障のカバー不足により、市民権が制限される人々がアンダークラスとして固定化される危険性が指摘されています。非正規雇用では社会保険や雇用保険に加入できないケースもあり、病気や失業といったリスクに対する保障が不十分です。

生活保護や各種給付制度にアクセスしにくい人々が、制度の「谷間」に取り残される状況も問題視されています。生活保護を受けるには一定の条件があり、基準を満たさない人や申請方法を知らない人は、支援を受けられないまま困窮してしまいます。住宅支援や医療費助成なども、情報が十分に行き届いていないケースがあります。

アンダークラス問題が社会全体にもたらす影響

アンダークラス問題が社会全体にもたらす影響

アンダークラスの拡大は、当事者だけの問題ではなく、社会全体に深刻な影響を及ぼします。経済、政治、社会の各側面で、さまざまな問題が顕在化しているのです。

経済への影響

アンダークラスの拡大は、消費の低迷、税収の減少、社会保障費の増大などを通じて、マクロ経済にも悪影響を及ぼします。低所得層が増えれば、当然ながら消費は減少し、経済全体の成長が鈍化します。税収も減少するため、公共サービスの質が低下したり、財政赤字が拡大したりする可能性があります。

将来的には、高齢化したアンダークラス層への社会保障費が増大することも予想されています。十分な貯蓄ができず、年金も少ない人々が高齢期を迎えると、生活保護などの公的支援への依存が高まります。これは財政負担の増大につながり、次世代への負担となります。

政治と社会の分断

不安定層の増大は、政治的不満やポピュリズムの台頭、排外主義の高まりにもつながると指摘されています。経済的に困窮し、将来への希望を持てない人々は、既存の政治体制への不信感を強めます。その結果、極端な主張をする政治勢力に惹かれたり、外国人などの「他者」を敵視したりする傾向が生まれやすくなります。

社会の分断も深刻化します。アンダークラスと他の階級との間で、生活環境、教育機会、健康状態などの格差が拡大すると、相互理解が難しくなり、社会的な連帯が失われていきます。この分断は、社会全体の活力を低下させ、民主主義の基盤を揺るがす可能性があります。

構造的な依存関係

ガルブレイスが指摘したように、先進社会が低賃金で嫌われる仕事を担う「機能上不可欠なアンダークラス」に依存している側面は無視できません。清掃、介護、配送、小売りなど、社会に不可欠な仕事の多くが低賃金で、アンダークラス層によって担われています。社会の繁栄がこの層の犠牲の上に成り立っているという現実を、私たちは直視する必要があります。

アンダークラスは自己責任なのか

アンダークラスに陥るのは個人の努力不足だという「自己責任論」は、構造的な要因を見落としており限界があります。前述のとおり、産業構造の転換や非正規雇用の拡大、社会保障の谷間は個人の意思とは無関係に生じており、マレーらの「個人の行動」を重視する議論は、差別的なレッテル貼りにつながるという批判を受けてきました。

一度アンダークラスに組み込まれると、非正規雇用から正規雇用への移行が構造的に難しいため、個人の努力だけで抜け出すのは容易ではありません。だからこそ、次章で解説する政策的な支援と、後述するリスキリング・転職支援サービスのような個人が実際に使える手段の両方が必要になります。

アンダークラスを減らすために必要な政策と支援

アンダークラスを減らすために必要な政策と支援

アンダークラス問題の解決には、多層的なアプローチが必要です。政策レベルでの取り組み、教育やキャリア支援、そして地域や民間の実践的な活動が、それぞれ重要な役割を果たします。

国の最新の支援策:新たな就職氷河期世代等支援プログラム

政府は2026年4月10日、「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」を決定し、2028年度までの3年間、集中的な支援に取り組むとしています。就労・処遇改善、社会参加、そして新たに加わった高齢期を見据えた支援の3本柱で構成されています。

柱主な内容
(1)就労・処遇改善に向けた支援ハローワーク専門窓口での伴走支援、リ・スキリング環境の整備、試行雇用や正社員転換への事業主支援
(2)社会参加に向けた段階的支援ひきこもり支援、地域若者サポートステーションでの40歳代無業者への相談、就労準備支援事業
(3)高齢期を見据えた支援家計改善・資産形成支援、65歳までの雇用確保措置の徹底、住宅確保の支援

背景には、2019年から2024年にかけて就職氷河期世代の正規雇用者が11万人増加した一方、2025年時点でも不本意ながら非正規雇用にとどまる人が33万人、無業者が46万人存在するという実態があります。政府はこの状況を踏まえ、支援を継続・拡充する方針を示しています。

参照:内閣官房「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」(2026年4月10日決定)、内閣府「就職氷河期世代等支援」(2026年9月確認)

賃金と雇用の改善

最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金など、賃金格差の是正が重要だとされています。同じ仕事をしているにもかかわらず、雇用形態によって賃金に大きな差があるという状況は、公正さの観点から問題です。最低賃金を生活できる水準まで引き上げることで、働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア」の問題を軽減できます。

非正規から正規への転換支援、職業訓練・リスキリングの充実など、安定した雇用への移行を促す政策が求められています。企業に対して正社員登用を促す仕組みや、労働者が新しいスキルを身につけられる教育機会の提供が必要です。特に、産業構造の変化に対応できるよう、継続的な学び直しの機会を保障することが重要です。

社会保障の拡充

生活保護・住宅支援・医療費助成などの社会保障を拡充し、「制度の谷間」に落ちない仕組みを整える必要があります。現在の社会保障制度は、正規雇用を前提に設計されている部分が多く、非正規雇用や自営業の人々がカバーされにくい構造になっています。この制度設計を見直し、雇用形態に関わらず必要な支援が受けられる仕組みが求められます。

申請手続きの簡素化や情報提供の充実も重要です。支援制度があっても、その存在を知らなかったり、申請が複雑で諦めてしまったりするケースが少なくありません。アクセスしやすい制度設計と、丁寧な情報提供が必要です。

教育格差の是正とキャリア支援

子どもの教育格差を是正するため、学習支援や奨学金、給付型支援などの拡充が重要視されています。親の経済状況によって子どもの教育機会が左右されると、貧困が世代を超えて再生産されてしまいます。すべての子どもが質の高い教育を受けられる環境を整えることが、長期的な格差解消につながります。

若年層・就職氷河期世代に対して、キャリアカウンセリング、職業訓練、再就職支援などを組み合わせ、長期的なキャリアパスを描けるようにする取り組みも進められています。特に就職氷河期世代は、長期間不安定な雇用にあった人が多く、手厚い支援が必要です。個々の状況に応じた伴走型の支援が効果的だと考えられています。

地域と民間の取り組み

NPOや自治体によるフードバンク、無料・低額診療、学習支援、居場所づくりなどの実践が、アンダークラスの生活を支える役割を担っています。制度的な支援だけでは届かない部分を、こうした草の根の活動が補完しています。孤立を防ぎ、人とのつながりを作る場としても重要です。

企業側の取組として、非正規社員の処遇改善や正社員登用制度、ワークシェアリングなどが、「機能上不可欠なアンダークラス」に依存しすぎない雇用構造への転換の一例として挙げられます。企業の社会的責任として、雇用の質を高める取り組みが求められています。

関連記事:ほごらんどとは?生活困窮者支援の新たな標準となった包括支援プラットフォームを徹底解説

関連記事:企業の社会的責任(CSR)とは?意味・具体例・取り組み方をわかりやすく解説

アンダークラスから抜け出すために使えるリスキリング・転職支援サービス

非正規雇用から正規雇用へ移るための現実的な選択肢の一つが、経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択された民間サービスの活用です。同事業はキャリア相談・学び直し・転職支援を一体的に提供し、受講料の補助を受けられる点が特徴です。以下は同事業の補助対象事業者の中から、対象分野の異なる代表的な6社を、社名の五十音順に並べたものであり、順位付けや推奨順ではありません。各社の情報はそれぞれの公式サイトで確認しています。

参照:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」ポータルサイト(2026年9月確認)

アクサス株式会社(NETVISION ACADEMY)

ITの知識・経験がゼロの状態からでも、最短2ヶ月でネットワークエンジニアへの転職を目指せる研修サービスです。未経験者を対象とし、受講料・教材費が完全無料である点が最大の特徴で、採用企業からの紹介料を収益源とすることで受講者の負担をなくしています。厚生労働大臣許可の職業紹介事業者(許可番号13-ユ-302613)として運営されています。

参照:アクサス株式会社公式サイト(NETVISION ACADEMY)(2026年9月確認)

株式会社エンファクトリー(ベンチャー留学)

在職しながら週1日程度、3ヶ月間ベンチャー企業の実務課題に取り組み、新しいキャリアの可能性を探る実践型のリスキリングプログラムです。雇用契約を結ぶ副業ではなく「個人の習いごと」という位置づけのため、副業禁止規定のある企業に勤めていても参加しやすいことが特徴です。専属のキャリアコンサルタントによる伴走支援もついています。

参照:株式会社エンファクトリー公式サイト(ベンチャー留学)(2026年9月確認)

キャリアバンク株式会社

正社員・契約社員・パート・派遣など雇用形態を問わず、介護職員初任者研修の取得と転職支援を組み合わせたプログラムを提供しています。札幌を拠点に北海道地域での職業紹介実績が豊富で、介護専門のキャリアアドバイザーが在籍している点が強みです。受講料の50〜70%相当の補助が受けられます。

参照:キャリアバンク株式会社公式サイト(2026年9月確認)

株式会社さくらコミュニティサービス(日本福祉アカデミー)

介護職員初任者研修の取得支援と、介護業界への就職・転職支援を一体的に行うサービスです。20年間で22,000名以上の修了生を輩出してきた実績があり、平日夜間コースや土日コースなど、働きながら学べる時間割の柔軟さが特徴です。介護分野に精通したキャリアコンサルタントが在籍しています。

参照:株式会社さくらコミュニティサービス公式サイト(日本福祉アカデミー)(2026年9月確認)

株式会社SAMURAI(SAMURAI ENGINEER)

未経験からITエンジニア・Webデザイナーへの転職や独立を目指す人向けに、現役エンジニアによる完全マンツーマンのオンライン指導を提供するサービスです。受講料の最大70%(上限56万円)が国の補助で戻ってくる制度と組み合わせられる点が特徴で、応募書類の添削から面接対策まで転職活動全体を伴走支援します。

参照:株式会社SAMURAI公式サイト(SAMURAI ENGINEER)(2026年9月確認)

ヒートウェーブ株式会社

在職者を対象に、ホワイトハッカー育成コースやサイバーセキュリティ技術者育成コースなど、セキュリティ分野に特化したリスキリング講座を計9講座提供しています。オンライン受講に対応し、合同企業説明会や求人票の提供、キャリアカウンセラーによる就職支援まで一貫して行うため、地方在住でも受講から就職までを完結できることが特徴です。

参照:ヒートウェーブ株式会社公式サイト(2026年9月確認)

対象分野と費用負担の目安をまとめると、次の表のとおりです。

事業者主な対象分野未経験者の可否費用負担の目安
アクサス株式会社ネットワークエンジニア可(ゼロから可)無料
株式会社エンファクトリーベンチャー企業での実務体験在職者向け要問い合わせ(国の補助対象)
キャリアバンク株式会社介護職員初任者研修可50〜70%補助
株式会社さくらコミュニティサービス介護職員初任者研修可最大70%補助
株式会社SAMURAIITエンジニア・Webデザイナー可最大70%(上限56万円)補助
ヒートウェーブ株式会社サイバーセキュリティ在職者向け最大70%補助

よくある質問

よくある質問

アンダークラスについて、検索でよく寄せられる質問に回答します。

Q
アンダークラスと貧困層は同じですか?
A

アンダークラスは単なる低所得層とは異なります。経済的困窮に加えて、長期失業、社会からの排除、市民権の制約などが重なった状態を指します。一時的な貧困ではなく、構造的に固定化された貧困と社会的孤立が特徴です。

Q
日本のアンダークラスはどのくらいいますか?
A

橋本健二氏の分析(2022年就業構造基本調査データ)では、約890万人、就業人口の13.9%とされています。先行研究(2015年SSM調査データ)では約930万人・14.9%だったため、人数はやや減少していますが、依然として就業者の1割超を占める規模です。特に就職氷河期世代を中心に、アンダークラス化が進んでいると指摘されています。

Q
アンダークラスの平均年収はどのくらいですか?
A

橋本健二氏の最新の分析(2022年就業構造基本調査データ)では平均個人年収216万円とされています。2015年SSM調査データに基づく先行研究では186万円だったため、水準はやや上昇したものの、依然として生活の安定には遠い金額です。

Q
個人の努力で抜け出すことはできますか?
A

構造的な要因が大きいため、個人の努力だけで解決するのは困難です。労働市場の変化、雇用形態の問題、社会保障の不足など、社会システム全体の課題として捉える必要があります。ただし、職業訓練や教育支援などを活用することで、状況を改善できる可能性はあります。

Q
アンダークラスから抜け出すにはどうすればいいですか?
A

単独の解決策はありませんが、国の就職氷河期世代等支援プログラムやハローワークの専門窓口、経済産業省が補助するリスキリング・転職支援サービスなど、公的・民間の制度を組み合わせて活用することが現実的な選択肢になります。あわせて生活保護や住宅支援など社会保障制度を早めに利用することも、生活基盤を維持しながら次の一歩を踏み出す助けになります。

Q
アンダークラス問題を放置するとどうなりますか?
A

経済の停滞、税収減少、社会保障費の増大など、社会全体に悪影響が及びます。また、政治的不満の高まりや社会の分断が進み、民主主義の基盤が揺らぐ可能性もあります。少子化の加速や、格差の固定化・世代間再生産も懸念されます。

まとめ

まとめ

アンダークラスは、経済的困窮だけでなく、社会からの排除や将来への希望の喪失を伴う、現代社会の深刻な問題です。日本では非正規雇用の拡大により、この層が約890万人・就業人口の13.9%に達し、平均年収216万円という低水準にとどまっています。原因は産業構造の変化や雇用制度、社会保障の不足など構造的なものであり、個人の努力だけでは解決できません。

2026年4月には国が新たな就職氷河期世代等支援プログラムを打ち出し、2028年度までの集中的な取り組みを進めています。あわせて、経済産業省が補助するリスキリング・転職支援サービスのように、個人が今すぐ活用できる選択肢も広がっています。この問題は社会全体の持続可能性に関わる課題として、私たち一人ひとりが関心を持つことが大切です。

  • アンダークラスは非正規雇用を中心とした構造的な下層階級で、全国に約890万人、平均年収216万円
  • 原因は産業構造の変化・雇用形態の変化・社会保障の谷間であり、自己責任論には限界がある
  • 2026年4月決定の新プログラムなど国の支援策が拡充されており、リスキリング・転職支援サービスの活用も現実的な選択肢である

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。