1日1組の古民家の宿から、農村の暮らしを旅にする|鹿児島・頴娃町「暮らしの宿 福のや、」と農業体験「畑旅」

暮らしの宿 福のや、は、鹿児島県南九州市頴娃(えい)町の石垣地区で、古民家を改修して営む1日1組限定の宿です。「頴娃を暮らすように旅する」をコンセプトに、観光地を巡るだけでなく、農家と畑に出たり、地域の人とお茶を飲みながら話したりする、農村の普段の営みそのものを旅の体験として届けています。

宿から生まれた農業体験「畑旅(はたたび)」や、お茶を軸にした体験プログラム、農家民宿の開業支援まで、一つの宿にとどまらず「地域で人を迎える」しくみづくりに取り組んでいるのが特徴です。

この記事でわかること

  • 暮らしの宿 福のや、がどんな宿で、何を大切にしているか
  • 1日1組限定の宿泊料金と、素泊まりの宿での過ごし方
  • 農業体験「畑旅」と、お茶や農家とふれあう体験プログラムの内容
  • 地域の事業者をつなぎ、受け入れの担い手を増やす取り組みと実績

暮らしの宿 福のや、は頴娃町の古民家を改修した1日1組限定の宿

古民家を改修した暮らしの宿 福のや、の室内
福のや、の室内(写真:福のや、提供 ©福迫写真事務所)

暮らしの宿 福のや、は、頴娃町の石垣地区にある古民家を改修し、2018年4月18日にオープンした1日1組限定の宿です。公式サイトでは、まるで田舎のおばあちゃん家のような、こじんまりとした宿と紹介されています。

宿がある石垣地区は、かつて貿易が盛んに行われ、100店舗以上が軒を連ねた場所です。福のや、は、頴娃の暮らしや仕事、そこで生きる人々など、地域のさまざまなコトやモノ、ヒトへの入口になる宿をめざしています。ただ「泊まる場」ではなく「体感する場」として利用してほしい、というのが宿の考え方です。

宿の名前暮らしの宿 福のや、
オープン2018年4月18日(2017年春から古民家を改修)
所在地鹿児島県南九州市頴娃町別府503-4(石垣地区)
宿泊の形完全1日1組限定・素泊まり
コンセプト頴娃を暮らすように旅する
運営代表 瀬川知香さん

宿の名前の最後に「、」が付いているのは、頴娃にある「潮や、」「ふたつや、」「茶や、」と同じ想いでつながっているためです。小さな挑戦がひとつで終わらず、またひとつ、またひとつと続くように、という願いが込められています。

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福のや、の宿泊料金と、素泊まりの宿での過ごし方

福のや、の宿泊料金は、おひとりで利用する場合が8,000円で、1名増えるごとに5,000円が加わります。完全1日1組限定のため、安心して滞在できると案内されています。

おひとりで利用8,000円
2名目以降1名追加ごとに+5,000円
小学生以上大人と同じ料金
土曜日・連休中などおひとり1泊あたり+1,000円
支払いチェックイン時に現金のみ
定員最大9名(大人数の場合は問い合わせ)
チェックイン/チェックアウト16時〜19時/10時まで(セルフチェックアウト)

料金は2026年10月時点の公式サイトの案内です。空室の状況は、公式サイトのお問い合わせフォームから確かめます。

キッチン付きの素泊まりで、頴娃の食材を楽しむ

福のや、は素泊まりの宿で、キッチンや調理器具は自由に使えます。地元産の野菜や新鮮なお刺身で、頴娃ならではの食卓を楽しめるよう、町内の飲食店や近くのおすすめの店も案内してもらえます。

予算に応じて、地元の飲食店のオードブルを手配してもらうことも可能です。希望する場合は、宿泊の1週間前までに相談する決まりです。部屋は布団6枚を敷ける程度の共有スペースと個室があり、エアコンは共有スペースだけに置かれています。なお、宿にWi-Fiはありません。

JR石垣駅から歩いて約5分の古民家

JR指宿枕崎線を使う場合は、石垣(いしかき)駅から歩いて約5分で宿に着きます。車の場合は、宿から歩いて1分の場所に駐車スペースがあり、到着したときに案内してもらえます。

小さな子ども連れも歓迎していて、管理運営をする人も子育て中です。古民家のため入口に段差がありますが、上り下りに不安がある人は手伝ってもらえます。

農業体験「畑旅」は、農家の暮らしまで含めて農村を丸ごと体験する旅

農業体験「畑旅」のロゴ

「畑旅」は、福のや、の宿泊者が地域の暮らしにふれる中から生まれた農業体験です。農作業そのものだけを体験するのではなく、農家の暮らしや地域の人との交流まで含めて、農村を丸ごと体験してもらう内容になっています。

福のや、は、この体験を通じて、農業を「見るもの」から「関わるもの」へと変えていくことをめざしています。頴娃は、初夏は茶葉の緑がまぶしく、冬になると真っ白な大根やぐらが登場する、季節の移り変わりを肌で感じられる土地です。

項目福のや、によると
農業体験の参加者年間約360人
宿泊者年間約400人
宿泊者のリピーター率約30%

一度訪れた人がもう一度地域を訪れることで、地域と継続して関わる「関係人口」の創出にもつながっています。

お茶や農家とふれあう「小さな旅」と「体験プログラム」

公式サイトでは、頴娃の楽しみ方を「小さな旅」と「体験プログラム」として案内しています。料金はすべておひとりあたりで、2名から予約できます。宿泊しない人も利用できるのが特徴です。

プログラム料金(おひとり)内容
知覧茶のオリジナルフレーバーTeaつくり3,000円知覧茶(緑茶・ほうじ茶・紅茶)に、ハーブや季節の野菜・果物をブレンドする
茶畑ピクニック4,000円大野岳をガイド付きで見学し、麓の「茶や、」で特製茶畑弁当とお茶の淹れ方レクチャー
とうもろこし収穫&焼きトウモロコシ体験3,000円とうもろこし専業農家の畑で収穫し、焼きトウモロコシをつくる(5名から)
大根やぐら見学&はたCafe3,000円12月中旬〜2月の冬季限定。大根やぐらへ案内
お茶の淹れ方講座2,000円茶葉の量や湯の温度、茶器の選び方などを教わる(資料・お菓子付き)
まちあるきガイドツアー3,000円〜釜蓋神社・番所鼻自然公園・大野岳などを案内。1か所だけの案内は1,000円
季節の農家体験2,000円植え付けや草取り、収穫など季節の農作業。お茶の時間つき
農家とお茶時間1,500円農家の休憩時間に合わせて交流する。お土産つき

各プログラムは、利用する1週間前までにお問い合わせフォームから申し込みます。内容は季節で変わる場合があり、料金は2026年10月時点の公式サイトの案内です。観光まちづくりを学びたい人向けの研修プログラム(有料)も用意されています。

茶畑を眺めながら屋外のデッキで食事をする家族
茶畑を眺めながらの食事(写真:福のや、提供)

お茶を軸に、景観・食・人を組み合わせて地域産品の価値を高める

ブレンドティーに使う茶葉やハーブ、ドライフルーツ
ブレンドティーづくりに使う茶葉や素材(写真:福のや、提供)

福のや、は、頴娃の主要産業である「お茶」に着目し、茶畑・農業・景観・食・地域の人を組み合わせた体験プログラムを開発しています。単にお茶を販売するのではなく、景観や農家の技術、地域の物語と、訪れる人の体験を組み合わせて、地域産品そのものの付加価値を高める取り組みです。

大野岳から望む茶畑や開聞岳、池田湖の景観を生かし、地域のお茶を実際に淹れたりブレンドしたりしながら、お茶の背景にある農家の仕事や土地の文化を知ってもらいます。

大野岳の麓の茶畑に囲まれた「茶や、」

茶畑に囲まれた大野岳の麓の「茶や、」の外観
大野岳の麓にある「茶や、」(写真:福のや、提供)

大野岳の麓には、福のや、が管理・運営する「茶や、」があり、まわりをお茶畑に囲まれています。茶や、では、四季を感じながらお茶や農作物の魅力を体感するイベントを開き、宿泊のほか、レンタルスペースとしても利用できます。

地域の農産物や加工品を、地域の外へ届ける

福のや、は、地域の農産物や加工品を地域外へ届ける取り組みにも力を入れています。これまでに加工品を全国約20店舗で販売するなど、都市部との新たな販路づくりにも取り組んできたのが特徴です(福のや、によると)。

「頴娃のお福分け」のサイトでは、とうもろこし農家のSweet×Sweetが、スイートコーンやヤングコーン、ポップコーン、西洋にんじんを育て、加工品までを自家農園で一貫してつくっていることが紹介されています。つくり手はSweet×Sweetの瀬川祐星さん、つたえ手は福のや、の瀬川知香さんです。

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地域の事業者をつなぎ、「地域で受け入れる」担い手を増やす

福のや、は、宿泊者を自らの施設だけで完結させず、地域の飲食店や農家、商店、加工事業者へつなぐことを意識しています。「泊まる」を起点に、農業を体験し、地域の人と出会い、地域で食べて、地域の商品を買い、また訪れたくなる、という滞在の流れをつくっています。

一人の来訪者が地域内の複数の事業者と接点を持つことで、地域全体に消費が広がるしくみです。活動を一つの宿の取り組みで終わらせないよう、農家民宿の開業支援や、農泊・地域づくりに関する研修・講演にも取り組んでいます。

取り組み実績(福のや、によると)
連携している地域の農家・事業者約10軒
農家民宿の開業支援13件
研修・講演50回以上
加工品の販売先全国約20店舗
メディア掲載100件超

地域の中に「人を迎える人」を増やしてきた結果、農泊を始める人や、地域資源を生かした体験をつくる人など、新しい担い手が生まれています。自分たちには当たり前だった農業や食、風景が、外から来た人にとって価値のあるものだと気づくことが、地域への誇りや、次の挑戦につながっているといいます。

活動は、行政からの単年度の事業費だけに頼らず、宿泊・体験・地域産品の販売・研修や講演のそれぞれから収益を生み出しながら続けている点も特徴です。公式サイトのメディア掲載のページでは、オーライ!ニッポン大賞のライフスタイル賞の受賞も紹介されています。

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担当者からのひとこと

暮らしの宿 福のや、から寄せられたコメントは、次のとおりです。

持続可能な着地型観光に取り組み10年が過ぎました。現在は観光を手段に地域の主要産業である農業の活性化にも従事しています。この町で暮らし続けたいと思う人が増えることを期待しています。

取材協力:暮らしの宿 福のや、 代表 瀬川知香様

暮らしの宿 福のや、の基本情報

暮らしの宿 福のや、の基本情報は、次のとおりです。

施設名暮らしの宿 福のや、
代表瀬川知香
所在地〒891-0704 鹿児島県南九州市頴娃町別府503-4
電話050-3567-1850(10時〜17時)
アクセスJR指宿枕崎線 石垣駅から徒歩約5分/鹿児島市内から車で約1時間
公式サイトhttps://www.fukunoya-ei.com/
茶や、https://chaya-ei.jimdofree.com/
頴娃のお福分け(Sweet×Sweet)https://eino-ofukuwake.jimdofree.com/
Facebook暮らしの宿 福のや、

よくある質問

暮らしの宿 福のや、の宿泊や体験について、よくある質問にお答えします。

Q
暮らしの宿 福のや、はどこにありますか?
A

鹿児島県南九州市頴娃町の石垣地区にあります。JR指宿枕崎線の石垣駅から歩いて約5分で、鹿児島市内からは車で約1時間です。

Q
宿泊料金はいくらですか?
A

おひとりで利用する場合は8,000円で、1名増えるごとに5,000円が加わります。土曜日や連休中などは、おひとり1泊あたり1,000円が加算されます(2026年10月時点)。

Q
食事は付いていますか?
A

素泊まりの宿です。キッチンや調理器具を自由に使えるほか、町内の飲食店の案内や、地元の飲食店のオードブルの手配(宿泊の1週間前までに相談)もできます。

Q
宿泊しなくても体験プログラムに参加できますか?
A

参加できます。各プログラムは2名から予約でき、利用する1週間前までにお問い合わせフォームから申し込みます。

Q
「畑旅」とはどんな体験ですか?
A

農作業だけでなく、農家の暮らしや地域の人との交流まで含めて、農村を丸ごと体験する農業体験です。福のや、によると、年間約360人が参加しています。

まとめ

暮らしの宿 福のや、は、頴娃町の古民家を改修した1日1組限定の宿を起点に、農村の暮らしそのものを旅の体験として届けています。

  • 2018年4月にオープンした、「頴娃を暮らすように旅する」がコンセプトの素泊まりの宿です
  • 農業体験「畑旅」では、農作業に加えて農家の暮らしや地域の人との交流まで体験できます
  • お茶を軸に、茶畑の景観や食、地域の人を組み合わせた体験プログラムを開発しています
  • 地域の事業者をつなぎ、農家民宿の開業支援や研修を通じて、受け入れの担い手を増やしているのが特徴です

観光地を巡るだけでは見えない農村の日常にふれたいときは、暮らしの宿 福のや、に泊まり、頴娃の畑や人に会いに行く旅を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

The Company Journal編集部

企業の取り組み・サステナビリティ・社会課題をテーマにした編集チーム。 企業や自治体の情報を編集部が一社ずつ確認し、 独自の基準で比較・整理した情報をお届けしています。