土地を所有しているものの、住宅や事業に使われず放置されたままの遊休地は、固定資産税などの負担が発生し続ける一方で、活用次第では収益を生み出す可能性を秘めた資産です。
遊休地とは、個人や法人が所有しながらも生活や生産活動に利用されていない宅地、農地、工場跡地などを指します。経済状況の変化や立地条件の悪化、後継者不足などが主な発生要因となっており、全国各地で増加傾向にあります。
放置された遊休地は、税負担や管理コストがかかるだけでなく、雑草の繁茂や不法投棄、防犯上の問題など、さまざまなリスクを抱えています。一方で、駐車場経営や太陽光発電、営農型ソーラーシェアリングなど、土地の特性や立地条件に応じた適切な活用方法を選択することで、収益化や地域貢献につなげることができます。
本記事では、遊休地の定義と放置リスクを明確にしたうえで、個人オーナー、農地所有者、企業、自治体それぞれの立場から実践できる具体的な活用方法を解説します。さらに、国や自治体による補助金制度や支援策、実際の成功事例も紹介しながら、遊休地を収益資産へと転換するための実践的なノウハウをお届けします。
遊休地とは何か:定義と発生する背景

遊休地という言葉は日常的に使われていますが、その定義や法的な位置づけを正確に理解している方は多くありません。この章では、遊休地の基本的な定義から、法令上の用語である遊休土地との違い、そして遊休地が発生する主な要因について詳しく解説します。
遊休地を適切に活用するためには、まず自分が所有する土地がどのような状態にあり、どのような制約や可能性があるのかを把握することが重要です。一般的な遊休地と法令上の遊休土地では、行政からの指導対象となるかどうかが大きく異なるため、その区別を理解しておくことで、将来的なリスクを回避することができます。
また、遊休地が生まれる背景には、単なる土地所有者の怠慢だけでなく、社会経済の構造的な変化や地域特有の事情が関係しています。これらの背景を知ることで、自分の土地がなぜ利用されていないのか、どのような活用方法が現実的なのかを冷静に判断する材料となります。
遊休地の一般的な定義
遊休地とは、個人や法人が所有しているにもかかわらず、住宅、農地、駐車場などとして利用されず放置されている土地を指す一般用語です。土地登記上は所有者が明確であるものの、実際には何の生産活動や生活目的にも使われていない状態が続いている土地がこれに該当します。
遊休地には、もともと住宅や工場として使われていたものの、建物の老朽化や事業撤退により更地のまま放置されているケース、相続により取得したものの利用方法が決まらず空いたままになっているケース、農地として登録されているが耕作されていないケースなど、さまざまなパターンが存在します。
いずれの場合も、土地が本来持つ生産性や収益性が発揮されていない状態であり、所有者にとっては税負担や管理コストが発生し続ける一方で、収入を生み出さない非効率な資産となっています。地域社会にとっても、景観の悪化や治安上の懸念につながる可能性があるため、遊休地の存在は個人の問題にとどまらず、地域全体の課題として認識される必要があります。
法令上の遊休土地との違い
一般的な遊休地とは別に、国土利用計画法で定義される遊休土地という法令用語が存在します。遊休土地とは、土地取引の許可や届出を行った後、2年以上にわたって利用されていない一定規模以上の土地で、都道府県知事が利用促進の必要性を認めたものを指します。
この遊休土地に該当すると、行政から利用計画の届出を求められたり、適切な利用を促す指導や勧告の対象となる可能性があります。つまり、単に放置されているだけの遊休地とは異なり、法的な手続きの対象となる点が大きな違いです。
遊休土地として認定される基準は都道府県によって異なりますが、一般的には都市部では500平方メートル以上、その他の地域では2000平方メートル以上といった面積要件が設定されています。また、土地取引の許可や届出から一定期間が経過していることも要件となるため、相続や贈与で取得した土地がすぐに遊休土地として扱われるわけではありません。
所有者としては、自分の土地が法令上の遊休土地に該当するかどうかを確認し、該当する場合は行政からの指導に備えて利用計画を検討する必要があります。
遊休地が発生する主な要因
遊休地が発生する背景には、いくつかの構造的な要因が存在します。最も大きな要因の一つは、経済状況の変化です。バブル経済崩壊後の地価下落や産業構造の転換により、かつて工場や事業所として使われていた土地が不要となり、売却も難しい状況で放置されるケースが増えています。
立地条件の悪化も重要な要因です。人口減少や都市部への人口集中により、地方の住宅地や商業地の需要が低下し、建物を解体した後も新たな用途が見つからないまま遊休地化する例が多く見られます。交通アクセスの不便さや周辺環境の変化により、土地の資産価値が低下し、活用の選択肢が限られることも少なくありません。
農地の場合は、後継者不足が深刻な問題となっています。高齢化により農業を続けることが困難になっても、農地法の制約により簡単に売却や転用ができず、結果として耕作放棄地として遊休化するケースが全国的に広がっています。
さらに、相続により土地を取得したものの、遠方に住んでいるため管理が行き届かない、複数の相続人間で意見がまとまらず活用方針が決まらないといった事情も、遊休地を生み出す一因となっています。これらの要因は単独で作用するのではなく、複合的に絡み合って遊休地問題を深刻化させています。
遊休地を放置することのリスクと問題点

遊休地を放置することは、単に土地が使われていないという状態にとどまらず、所有者にとっても地域社会にとっても多くのリスクと問題を引き起こします。この章では、遊休地を放置することで発生する経済的リスク、管理上のリスク、そして社会的な影響について具体的に解説します。
多くの土地所有者は、利用していない土地であっても将来何かに使えるかもしれないという期待から、そのまま保有し続ける傾向があります。しかし、その間にも固定資産税をはじめとする税負担は継続し、管理を怠れば近隣住民とのトラブルや行政指導のリスクが高まります。
遊休地の放置は、短期的には大きな問題にならないように見えても、中長期的には資産価値の低下や想定外のコスト発生につながる可能性があります。これらのリスクを正しく認識することで、遊休地を早期に活用するか、あるいは売却するかといった適切な判断を行うことができます。
固定資産税などの経済的負担
遊休地を所有している限り、土地を利用していなくても固定資産税や都市計画税といった税負担が毎年発生します。これらの税金は、土地の評価額や所在地によって異なりますが、特に都市部や住宅地では年間数万円から数十万円に及ぶこともあり、収益を生まない資産に対して継続的にコストを支払い続けることになります。
住宅用地として利用されている場合は、固定資産税の軽減措置が適用されるため税負担が軽減されますが、更地のまま放置された遊休地にはこうした優遇措置が適用されません。そのため、建物を解体して更地にした途端に税負担が大幅に増加するケースもあり、結果として老朽化した建物をそのまま残しておくという悪循環に陥ることもあります。
さらに、遊休地の立地や周辺環境の変化により、将来的な資産価値が下落するリスクも指摘されています。人口減少が進む地域では土地需要そのものが減少し、売却しようとしても買い手が見つからない、あるいは購入時よりも大幅に低い価格でしか売れないという事態も想定されます。
このように、遊休地を放置することは、毎年のコスト負担に加えて、資産価値の目減りというダブルパンチを受ける可能性があり、経済的には非常に非効率な選択となります。
雑草や不法投棄などの管理上の問題
遊休地を適切に管理せずに放置すると、雑草が繁茂し、見た目が悪化するだけでなく、害虫の発生源となったり、不法投棄の温床になったりするリスクが高まります。特に夏場の雑草は驚くほど速く成長するため、定期的な草刈りを行わなければ、あっという間に荒れ地のような状態になってしまいます。
近隣住民からすれば、隣接する土地が荒れ放題になっていることは迷惑であり、苦情が寄せられることも少なくありません。自治体によっては、適切な管理を怠っている土地所有者に対して指導や勧告を行う条例を定めているケースもあり、改善が見られない場合は氏名の公表や過料の対象となることもあります。
不法投棄が発生した場合、撤去費用は原則として土地所有者が負担することになります。ゴミや廃棄物が大量に投棄されると、その撤去には数十万円から数百万円の費用がかかることもあり、想定外の出費を強いられることになります。
また、人目につきにくい遊休地は、不審者の侵入や犯罪の隠れ場所として利用されるリスクもあります。こうした防犯上の問題は、地域全体の治安悪化にもつながるため、所有者個人の問題にとどまらず、社会的な責任が問われる事態にもなりかねません。
荒廃農地としての景観と地域への影響
遊休地が農地である場合、耕作されずに放置されると荒廃農地として地域の景観や農業基盤に悪影響を及ぼします。荒廃農地は、周辺の営農環境にも影響を与え、病害虫の発生源となったり、鳥獣被害を誘発したりする原因となることがあります。
農地は本来、食料生産という重要な役割を担っているだけでなく、水源涵養や国土保全といった多面的な機能を持っています。しかし、荒廃農地が増えることでこうした機能が失われ、地域全体の農業生産力が低下するだけでなく、自然環境や景観にも悪影響を与えます。
各自治体は荒廃農地の解消と再生に向けて、さまざまな施策を講じています。農地の適正管理を促すための指導や、再生利用を支援する補助金制度などがその一例です。所有者としては、こうした施策を活用しながら、農地としての再生や他用途への転用を検討する必要があります。
荒廃農地の放置は、地域のイメージダウンにもつながります。美しい田園風景が荒れ地に変わってしまうことで、地域の魅力が失われ、移住者や観光客の減少といった間接的な影響も懸念されます。このように、遊休地の放置は所有者だけの問題ではなく、地域社会全体に影響を及ぼす問題として捉える必要があります。
個人オーナーが実践できる遊休地活用の方法

個人で遊休地を所有している方にとって、どのように活用すればよいのか迷うことは少なくありません。この章では、個人オーナーでも比較的取り組みやすい駐車場経営、太陽光発電、小規模事業用地としての活用という3つの方法について、それぞれの特徴とメリット、注意点を詳しく解説します。
遊休地の活用方法を選ぶ際には、土地の立地条件、面積、周辺環境、そして所有者自身の資金力や管理能力といった要素を総合的に考慮する必要があります。すべての土地にすべての活用方法が適しているわけではないため、自分の土地に最適な選択肢を見極めることが重要です。
また、初期投資の規模や回収期間、管理の手間なども活用方法によって大きく異なります。短期間で収益を上げたい場合と、長期的に安定した収入を得たい場合では、選ぶべき活用方法も変わってきます。この章では、それぞれの活用方法の実際のプロセスと期待できる収益性についても触れながら、実践的な情報を提供します。
駐車場経営による収益化
駐車場経営は、遊休地活用の中でも比較的初期投資が少なく、短期間で開業できる方法として広く選ばれています。住宅地、駅周辺、商業地など車利用が多いエリアでは、月極駐車場やコインパーキングとしての需要が見込めます。
月極駐車場の場合、舗装工事やライン引き、区画整備といった初期投資を行えば、あとは契約者を募集して月々の賃料収入を得ることができます。初期費用は土地の広さや整備の程度によって異なりますが、数十万円から百万円程度で始められることが多く、他の活用方法と比べて参入ハードルが低いといえます。
コインパーキングの場合は、専門の運営会社に土地を貸し出すサブリース方式や、設備投資から運営まですべてを任せる一括借り上げ方式が一般的です。これらの方式では、所有者は土地を提供するだけで、精算機やロック板などの設備投資や日々の管理業務を運営会社に任せることができるため、手間をかけずに収益を得ることが可能です。
ただし、駐車場経営が成功するかどうかは立地条件に大きく左右されます。周辺に駐車場需要があるか、競合する駐車場がどれだけあるか、料金設定は適切かといった点を事前に調査する必要があります。需要が少ない地域で駐車場を開設しても、稼働率が低く期待した収益が得られない可能性があります。
太陽光発電設備の設置
太陽光発電は、日照条件が良い遊休地を活用して発電した電気を売電し、収益を得る方法です。賃貸需要が乏しい郊外や地方の遊休地でも、日当たりが良ければ収益化の可能性があるため、駐車場経営が難しいエリアでも検討しやすい選択肢といえます。
太陽光発電の導入には、ソーラーパネルや架台、パワーコンディショナーなどの設備投資が必要となり、規模にもよりますが数百万円から数千万円の初期費用がかかります。一方で、固定価格買取制度により、発電した電力を一定期間にわたって安定した価格で売電できるため、長期的な収益計画を立てやすいという利点があります。
太陽光発電事業は、設備の設置後は比較的管理の手間が少なく、定期的な点検とパネルの清掃程度で運営できます。ただし、近年は買取価格が低下傾向にあり、初期投資の回収に以前よりも時間がかかるようになっている点には注意が必要です。
また、太陽光発電設備を設置する際には、農地の場合は農地転用の許可が必要となる場合があります。農地転用が認められない場合でも、営農型太陽光発電として、パネルの下で農作物を栽培しながら発電を行う方法もあります。この方式については次の章で詳しく解説します。
コインランドリーやカーシェアなどの小規模事業
遊休地を小規模事業用地として活用する方法も、個人オーナーにとって選択肢の一つです。コインランドリー、カーシェアステーション、トランクルームなどのフランチャイズモデルを活用すれば、専門知識がなくても事業を始めることができます。
コインランドリー経営は、住宅地や学生街、単身世帯が多いエリアで需要が見込めます。フランチャイズ本部が立地調査や収支シミュレーションを行ってくれるため、初心者でも比較的取り組みやすい事業です。建物の建設や洗濯機などの設備投資が必要となるため、初期費用は数千万円規模になることもありますが、無人運営が可能で日々の管理負担は比較的軽いという特徴があります。
カーシェアステーションは、都市部や駅周辺で需要が高まっている事業です。カーシェア事業者と提携し、土地を駐車スペースとして提供することで賃料収入を得ることができます。駐車場経営と似ていますが、カーシェア専用として整備することで、より高い収益性を実現できる可能性があります。
トランクルームは、収納スペースが不足している都市部や住宅地で需要があります。コンテナ型のトランクルームであれば、比較的少ない投資で始めることができ、管理も委託可能です。ただし、いずれの事業も立地による影響が大きいため、専門事業者による需要調査と収支シミュレーションを十分に検討したうえで判断することが重要です。
遊休農地の活用と利用できる補助金制度

遊休農地は、一般的な遊休地とは異なり、農地法による制約があるため活用方法が限定される一方で、国や自治体によるさまざまな支援制度が用意されています。この章では、遊休農地を活用するメリットと、利用できる代表的な補助金制度について詳しく解説します。
農地は食料生産の基盤として重要な役割を担っているため、国や自治体は荒廃農地の解消と再生に力を入れています。遊休農地の所有者にとっては、こうした支援制度を活用することで、再生費用の負担を軽減しながら農地を有効活用できる可能性があります。
また、遊休農地を営農型太陽光発電として活用する方法も近年注目されています。農地としての機能を維持しながら発電収益も得られるこの方法は、後継者不足や高齢化に悩む農地所有者にとって有力な選択肢となっています。
遊休農地を再生するメリット
遊休農地を再生して営農を再開することには、いくつかのメリットがあります。まず、荒廃した農地を再び耕作可能な状態に戻すことで、農産物の生産による収益を得ることができます。自分で耕作する場合はもちろん、他の農業者に貸し出すことで賃料収入を得ることも可能です。
農地として利用している土地には、固定資産税の軽減措置が適用されます。農地は宅地と比べて評価額が低く設定されているため、税負担を抑えることができます。一方で、遊休農地として放置していると、自治体によっては農地としての軽減措置が適用されなくなる場合もあるため、適切に管理することが重要です。
さらに、農地転用が認められれば、用途を変更することで資産価値が高まる可能性があります。農地を宅地や事業用地に転用できれば、売却や賃貸の選択肢が広がり、より高い収益を得られる可能性があります。ただし、農地転用には厳しい要件があり、すべての農地で認められるわけではない点には注意が必要です。
荒廃農地を再生することは、地域の景観改善や環境保全にもつながります。周辺で農業を営む方々にとっても、病害虫の発生源が減ることは大きなメリットとなり、地域全体の農業環境の向上に貢献することができます。
国の補助金制度の概要
国は、遊休農地の解消と再生を支援するため、複数の補助金制度を用意しています。代表的なものとして、中山間地域等直接支払制度があります。この制度は、中山間地域における農地保全を支援するもので、荒廃農地の解消や復旧などの取り組みに対して交付金が支給されます。
中山間地域は平地に比べて農業生産条件が不利な地域であり、高齢化や担い手不足により荒廃農地が増加しやすい状況にあります。この制度では、集落単位で農地の保全管理に取り組むことが求められ、一定の要件を満たせば面積に応じた交付金を受け取ることができます。
もう一つの代表的な制度が、多面的機能支払交付金です。この制度は、農地や農道、水路などの保全や質的向上を地域ぐるみで行う活動を支援するものです。草刈りや水路の泥上げ、農道の補修といった日常的な保全活動から、生態系保全や景観形成といった取り組みまで、幅広い活動が対象となります。
これらの制度を活用するためには、地域の農業委員会や自治体の農政担当部署に相談し、申請手続きを行う必要があります。制度によって要件や申請時期が異なるため、早めに情報収集を行い、計画的に取り組むことが重要です。
自治体独自の遊休農地支援事例
国の制度に加えて、各自治体も独自の遊休農地支援制度を設けているケースが多くあります。山形県村山市では、遊休農地対策事業として、再生や適正利用のための経費に対して10アールあたり上限額を定めて補助を行っています。この制度では、草刈りや整地、土壌改良といった再生作業にかかる費用の一部を自治体が負担することで、所有者の経済的負担を軽減しています。
長野県大町市でも同様の支援制度があり、遊休農地の再生作業や営農再開に向けた取り組みに対して補助金が交付されています。鹿児島県南さつま市や千葉県松戸市なども、遊休農地の解消を促進するため、再生作業経費や利用促進に対して一定額の補助金や奨励金を用意しています。
これらの自治体独自の制度は、国の制度と併用できる場合もあり、複数の制度を組み合わせることで、より手厚い支援を受けられる可能性があります。ただし、制度の内容や要件は自治体によって大きく異なるため、まずは自分の土地がある自治体の農政担当部署に問い合わせて、利用可能な制度を確認することが第一歩となります。
自治体によっては、補助金だけでなく、農地の貸し借りをマッチングする仕組みや、新規就農者への農地あっせんなど、遊休農地の活用を総合的に支援する取り組みを行っているところもあります。こうしたサービスを活用することで、自分では耕作できない農地を有効活用してもらいながら、賃料収入を得ることも可能です。
営農型太陽光発電による農地活用

営農型太陽光発電は、農地の上部空間に太陽光パネルを設置し、パネルの下で農作物を栽培しながら発電収益も得るという、農業と発電事業を両立させる活用方法です。この章では、営農型太陽光発電の仕組みと特徴、栽培作物の選定と管理のポイント、そして実際の収益モデルについて解説します。
従来の太陽光発電は、農地を転用して発電専用地として利用するため、農地としての機能が失われてしまうという課題がありました。一方、営農型太陽光発電では、農地としての利用を継続しながら発電収益も得られるため、農地法の制約がある土地でも導入しやすいという特徴があります。
ただし、営農型太陽光発電には一定の要件があり、パネルの下で適切に農作物を栽培し、周辺の同種作物と比較して一定以上の収量を確保することが求められます。このため、どのような作物を選ぶか、どのように管理するかといった農業面での工夫が成功の鍵となります。
営農型太陽光発電の仕組みと特徴
営農型太陽光発電は、ソーラーシェアリングとも呼ばれ、農地の上空に支柱を立ててソーラーパネルを設置し、パネルの隙間から地面に日光が届くようにして、その下で農作物を栽培する仕組みです。発電した電気は固定価格買取制度を利用して売電し、収益を得ることができます。
この方式の最大の特徴は、農地としての機能を維持しながら発電事業が行えることです。通常の太陽光発電では農地転用の許可が必要となり、一度転用すると農地に戻すことが困難になりますが、営農型太陽光発電では農地のまま一時転用許可を受けて設備を設置できるため、将来的に農地として利用を続けることが可能です。
営農型太陽光発電を導入するには、農地法に基づく一時転用許可を取得する必要があります。許可の要件として、パネルの下で栽培する農作物の収量が、周辺の同種作物と比較して8割以上を確保できる見込みがあることが求められます。また、3年ごとに農業生産の状況を報告し、基準を満たしていることを証明する必要があります。
パネルの設置高さや間隔、遮光率などは、栽培する作物の種類に応じて適切に設計する必要があります。日光を多く必要とする作物の場合は、パネルの設置間隔を広くしたり、高さを高くしたりすることで、十分な日照を確保できるよう工夫します。
栽培作物の選定と管理方法
営農型太陽光発電で成功するためには、栽培する作物の選定が非常に重要です。パネルの下は日陰になる時間が長いため、日陰に強い作物や、逆に強い日差しを避けることでむしろ生育が良くなる作物を選ぶことが基本となります。
実際の事例では、ブルーベリーやシイタケ、ミョウガ、ワサビ、葉物野菜などが営農型太陽光発電に適した作物として栽培されています。これらの作物は、比較的日陰でも生育しやすく、管理の手間も少ないという特徴があります。特にブルーベリーは、収穫作業が比較的容易で、加工品としての販路も確保しやすいため、営農型太陽光発電での栽培に適しているとされています。
管理面では、防草シートの活用が効果的です。パネルの下に防草シートを敷くことで、雑草の繁茂を抑え、草刈りの手間を大幅に削減できます。通常の露地栽培では頻繁な草刈りが必要となりますが、防草シートを利用することで管理負担を軽減しながら農作物を栽培することが可能です。
また、営農型太陽光発電では、農福連携の取り組みと組み合わせる事例も増えています。障がい者の方々に農作業を担ってもらうことで、就労機会の創出と農地の適切な管理を両立させることができます。簡単な収穫作業や日常管理であれば、障がい者の方でも無理なく取り組むことができ、地域貢献にもつながります。
営農型太陽光発電の収益モデル
営農型太陽光発電の収益は、発電による売電収入と農作物の販売収入の2つから構成されます。発電収入については、固定価格買取制度により一定期間安定した価格で売電できるため、長期的な収益計画が立てやすいという利点があります。ただし、近年は買取価格が低下傾向にあり、初期投資の回収期間は以前よりも長くなっています。
農作物の販売収入は、栽培する作物の種類や収量、販路によって大きく変動します。高付加価値な作物を選び、直売所やインターネット販売などで販路を確保できれば、通常の露地栽培よりも高い収益を得られる可能性もあります。一方で、収量が基準を下回ると一時転用許可が取り消されるリスクがあるため、安定した生産管理が求められます。
中部経済産業局が紹介している事例では、荒廃農地に営農型太陽光を設置し、自社で運営するだけでなく、他社の農地への企画プロデュースも行うビジネスモデルが構築されています。このように、営農型太陽光発電のノウハウを蓄積し、他の農地所有者への支援やコンサルティング業務に展開することで、収益の多角化を図ることも可能です。
営農型太陽光発電は、初期投資が大きい一方で、農業収入と発電収入の両方を得られるため、長期的には安定した収益を期待できる活用方法といえます。ただし、農業生産の維持が前提となるため、農業に関する知識や管理体制を整えたうえで取り組むことが重要です。
企業が保有する遊休地の活用トレンド

企業が保有する遊休地は、工場跡地や事業所の統廃合により生じた土地など、比較的大規模なものが多く、その活用方法も個人とは異なる視点で検討されています。この章では、企業保有地の活用における最近のトレンドと、実際の活用事例について解説します。
企業にとって遊休地は、単なる資産の有効活用という視点だけでなく、ESG経営や脱炭素化といった社会的要請に応える手段としても注目されています。遊休地を再生可能エネルギー発電施設や物流拠点、データセンターとして活用することで、事業の効率化と環境貢献を両立させる取り組みが進んでいます。
また、企業保有地の活用には、地域貢献や雇用創出といった社会的な意義も求められるようになっています。単に収益を追求するだけでなく、地域社会との共生や持続可能な開発といった観点から、長期的な視野で活用方法を検討することが重要です。
太陽光発電や物流拠点としての活用
企業が保有する遊休地の活用方法として、太陽光発電所の設置が広く行われています。広大な工場跡地などは、大規模な太陽光発電施設を設置するのに適しており、自社の電力として使用するとともに、余剰電力を売電することで収益を得ることができます。
近年は、ESG経営の観点から再生可能エネルギーの活用が求められており、企業が保有する遊休地を太陽光発電所として活用することは、環境目標の達成にも貢献します。自社で発電した電力を使用することで、電力コストの削減と温室効果ガス排出量の削減を同時に実現できるため、経済的メリットと環境的メリットの両方を得ることができます。
物流拠点としての活用も有力な選択肢です。EC市場の拡大により物流施設の需要が高まっており、交通アクセスの良い遊休地は物流拠点として高い価値を持ちます。自社物流として活用するだけでなく、物流事業者に貸し出すことで安定した賃料収入を得ることも可能です。
データセンターの建設も、近年注目されている活用方法の一つです。デジタル化の進展により、データセンターの需要が急増しており、広い敷地と安定した電力供給が確保できる遊休地は、データセンター用地として適しています。データセンター事業者に土地を貸し出すことで、長期的な収益を得ることができます。
地域貢献型の施設整備事例
企業保有地の活用において、地域貢献を意識した施設整備の事例も増えています。遊休地を地域住民が利用できる公園や広場、スポーツ施設として開放することで、企業イメージの向上と地域社会との良好な関係構築につながります。
農業参入拠点としての活用も、地域貢献の一つの形です。企業が農業法人を設立し、遊休地で農産物を生産することで、地域の雇用創出や農業振興に貢献できます。特に、高齢化や後継者不足が深刻な地域では、企業の参入により農地が再生され、地域農業の活性化につながる可能性があります。
農福連携の取り組みも広がっています。営農型太陽光発電の章でも触れましたが、企業が遊休地で農業を行う際に、障がい者の方々に農作業を担ってもらうことで、就労機会の創出と社会参加の促進を図ることができます。企業にとっては社会貢献活動として評価され、地域からの信頼獲得にもつながります。
脱炭素化の流れの中で、遊休地を活用したカーボンニュートラルプロジェクトも注目されています。再生可能エネルギー施設の整備や、植林による二酸化炭素吸収、バイオマス発電施設の建設など、環境負荷低減に資する取り組みが、企業の社会的責任を果たす手段として重視されています。
自治体による遊休不動産活用の取り組み

自治体が保有する遊休施設や遊休不動産も、人口減少や財政状況の悪化により増加しています。この章では、自治体がどのようにして遊休不動産を活用し、地域の活性化や財政負担の軽減を図っているのか、その枠組みと具体的な事例について解説します。
自治体にとって遊休不動産は、維持管理費がかかる一方で活用されていない資産であり、適切に活用することで財政健全化や地域課題の解決につなげることが期待されています。民間事業者との連携や、売却・貸付といった手法を活用し、遊休不動産を収益資産や地域資源へと転換する取り組みが各地で進められています。
遊休施設活用のガイドラインと方針
大分県玖珠町の遊休施設利活用ガイドラインは、使われていない公共施設の現状と課題を整理し、まちづくりの観点から資産の適正管理と有効活用の方針とプロセスを示しています。このガイドラインでは、対象施設の選定から民間事業者との連携、売却や貸付の推進まで、一連の流れと検討項目が定められています。
自治体が遊休施設を活用する際には、まず施設の現状を把握し、老朽化の程度や立地条件、地域住民のニーズなどを総合的に評価します。その上で、継続利用、用途変更、売却、貸付、解体といった選択肢の中から最適な方法を選定します。
民間事業者との連携では、公募型プロポーザルやサウンディング調査などの手法を用いて、民間のアイデアや資金を活用した活用方策を検討します。民間事業者にとって魅力的な条件を提示し、地域にとって有益な活用を実現するバランスが重要となります。
売却や貸付を進める際には、透明性と公平性を確保するため、適正な価格設定や公募手続きが求められます。また、活用後の利用状況を定期的にモニタリングし、当初の目的に沿った活用が行われているかを確認する仕組みも整備されています。
国土交通省による活用事例集
国土交通省は、地方公共団体による遊休不動産活用の優良事例をまとめた事例集を公開しています。この事例集では、空き家や低未利用な公共施設、道路や広場などの遊休不動産を、リノベーションやエリアマネジメントの手法で活用し、エリア全体の価値を高めた取り組みが紹介されています。
北九州市や浜松市、東京都豊島区などでは、都心部の遊休不動産を活用し、民間投資の呼び込みとにぎわい創出を図る家守構想が実践されています。家守構想とは、遊休不動産をリノベーションし、クリエイターや起業家向けのオフィスや店舗として活用することで、新たなビジネスの創出と地域の活性化を図る取り組みです。
これらの事例では、自治体が民間事業者と連携し、遊休不動産の再生と活用を進めることで、地域経済の活性化や雇用創出、税収増加といった効果を生み出しています。また、遊休不動産が再生されることで、周辺地域の景観が改善し、地域全体のイメージアップにもつながっています。
自治体による遊休不動産活用は、単なる資産管理の効率化にとどまらず、まちづくりや地域再生の重要な手段として位置づけられています。民間の知恵と資金を活用しながら、地域の特性に応じた柔軟な活用方法を模索することが、成功の鍵となっています。
まとめ

遊休地は放置すれば税負担や管理リスクを抱える資産ですが、適切に活用することで収益を生み出す可能性を持っています。駐車場経営や太陽光発電、営農型ソーラーシェアリングなど、立地や用途に応じた活用方法を選択し、国や自治体の補助金制度を活用することで、経済的負担を軽減しながら有効活用を進めることができます。個人、企業、自治体それぞれの立場から、遊休地を地域資源として再生し、持続可能な土地利用を実現していくことが求められています。