脱炭素補助金とは、環境省のSHIFT事業や経済産業省の省エネ・非化石転換補助金など、工場や事業場の脱炭素化に使う設備更新費用の一部を国や自治体が支援する制度の総称です。補助率や上限額は制度ごとに大きく異なり、公募期間も年度ごとに変わるため、自社の目的に合う制度を早めに見極めることが申請成功のカギになります。
この記事でわかること
- 脱炭素補助金にはどんな種類があるか
- 対象になる設備・費用は何か
- 申請から受給までの流れ
- 補助金の選び方と申請支援会社に依頼するメリット
脱炭素補助金とは?
脱炭素補助金とは、工場や事業場の脱炭素化に向けた設備投資や取り組みの費用を、国や自治体が一部助成する制度の総称です。
エネルギー価格の高騰への対応と、2050年カーボンニュートラルの実現を目的として、経済産業省・環境省を中心に複数の制度が用意されています。「脱炭素補助金」という単一の制度があるわけではなく、目的や対象設備が異なる複数の補助金の総称として使われている点に注意が必要です。
対象は工場やオフィスを持つ企業だけでなく、要件を満たせば個人事業主が使える制度も含まれます。ただし対象者・対象設備は制度ごとに個別に定められているため、自社が使える制度を絞り込むところから始めることになります。
背景には、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルおよび2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)という目標があります。この目標達成に向けて、工場やオフィスでの省エネ・脱炭素投資を後押しする目的で、環境省・経済産業省それぞれが補助金制度を運用しています。制度は毎年度、予算の状況に応じて内容や公募スケジュールが見直されるため、前年度の情報をそのまま使わず、必ず最新の公募要領を確認することが欠かせません。
脱炭素補助金の主な種類(2026年度/令和8年度)

2026年度(令和8年度)に使える代表的な脱炭素補助金は、環境省のSHIFT事業、経済産業省の省エネ・非化石転換補助金、そして都道府県・市区町村が独自に実施する補助金の3系統です。
SHIFT事業(環境省)
SHIFT事業は、工場・事業場の脱炭素化を進める環境省の補助制度で、「DX型CO2削減対策実行支援事業」と「省CO2型システムへの改修支援事業」の2メニューがあります。DX型は運用改善による省CO2化を対象に補助率3/4・上限200万円、改修支援型は電化・燃料転換・熱回収などの設備改修を対象に補助率1/3・上限1億円または5億円です(改修支援型は削減率に応じて上限が変わります)。令和8年度の公募期間は2026年6月12日から同年8月26日正午までで、改修支援型は7月15日と8月26日の2回に締切が分かれています。
参照:環境省 令和8年度SHIFT事業の公募開始について(2026年8月確認)
省エネ・非化石転換補助金(経済産業省/SII)
省エネ・非化石転換補助金は、法人・個人事業主が対象の経済産業省系の補助金で、執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が公募を運営しています。「工場・事業場型」「設備単位型」「電化・脱炭素燃転型」「エネルギー需要最適化型」の4つの申請タイプがあり、更新する設備の種類や事業規模に応じて選びます。補助率・上限額は申請タイプと採択枠によって異なるため、公式サイトで自社に該当する区分を確認する必要があります。2026年度は複数回に分けて公募が行われており、直近の3次公募は2026年8月20日から9月28日まで実施中です。
参照:省エネ・非化石転換補助金 2026年版特設サイト(SII)(2026年8月確認)
地方自治体独自の補助金
都道府県や市区町村も、国の制度とは別に独自の脱炭素補助金を設けていることがあります。国の補助金と対象経費が重ならなければ、自治体の補助金を組み合わせられる場合もありますが、可否は制度ごとに個別の確認が必要です。
例えば大阪府の「中小事業者の脱炭素化に係る自主的取組支援補助金」は、府内の中小事業者が対象で、省エネ設備更新・再エネ設備導入(照明・空調・蓄電池は対象外)にかかる費用の3分の1・上限200万円を補助します。利用には対策計画書の提出と「脱炭素経営宣言」、年間エネルギー使用量1%以上またはCO2排出量年間1トン以上の削減という要件があります。
参照:大阪府 中小事業者の脱炭素化に係る自主的取組支援補助金(2026年8月確認)
大阪府以外にも、多くの都道府県・市区町村が独自の脱炭素関連補助金を設けています。事業所がある自治体の公式サイトで「脱炭素」「省エネ設備」などのキーワードから探すと、国の制度では対象にならない設備が拾えることがあります。
| 制度名 | 実施機関 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| SHIFT事業(DX型) | 環境省 | 3/4 | 200万円 |
| SHIFT事業(改修支援型) | 環境省 | 1/3 | 1億円または5億円 |
| 省エネ・非化石転換補助金 | 経済産業省(SII執行) | 申請区分により異なる | 申請区分により異なる |
| 中小事業者の脱炭素化に係る自主的取組支援補助金 | 大阪府 | 1/3 | 200万円 |
対象になる設備・費用
脱炭素補助金の対象になりやすいのは、太陽光発電設備、蓄電池、高効率空調・給湯設備、LED照明、電動車とその充電設備、そしてエネルギー使用量を見える化するエネルギーマネジメントシステム(EMS)です。
同じ「省エネ設備」でも、制度によって対象・対象外の線引きが異なります。例えば大阪府の補助金は照明・空調・蓄電池を対象外としている一方、SHIFT事業の改修支援型は電化・燃料転換・熱回収設備を主な対象としています。導入したい設備が決まっている場合は、その設備を対象にしている制度から逆引きで探すほうが早いこともあります。
対象経費は設備本体の購入費・設置工事費が中心で、多くの制度で人件費や運転資金は対象外です。詳細な対象経費は制度ごとの公募要領で必ず確認してください。
導入したい設備が決まっている場合は、下の表のように「設備→候補になり得る制度」で逆引きすると探しやすくなります。同じ設備でも複数の制度にまたがることがあるため、この表はあくまで出発点として、最終的には各制度の公募要領で対象可否を確認してください。
| 導入したい設備 | 候補になり得る制度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 太陽光発電・蓄電池(自家消費型) | 省エネ・非化石転換補助金 | 再エネ導入を対象とする申請タイプがある |
| 電化・燃料転換・熱回収設備 | SHIFT事業(改修支援型) | 電化・燃料転換・熱回収を主対象と明記 |
| EMSによる運用改善・見える化 | SHIFT事業(DX型) | DXシステムによる運用改善を対象と明記 |
| 省エネ設備更新(照明・空調以外) | 大阪府など自治体独自の補助金 | 大阪府の制度は照明・空調・蓄電池を対象外と明記 |
申請から受給までの流れ
脱炭素補助金は、公募開始前の準備から入金まで、おおむね6つのステップで進みます。
- 情報収集と要件確認:制度の公式サイトや公募要領で、対象者・対象設備・スケジュールを確認します。公募開始は例年2〜6月が多く、早めの情報収集が申請の準備期間を左右します。
- 申請書類の準備:事業計画書、見積書、CO2削減量の算定根拠などを準備します。専門的な数値の算定が必要になる制度も多く、ここが最も工数のかかる工程です。
- 申請:電子申請システムまたは郵送で申請します。締切間際は電子申請システムが混み合うことがあるため、余裕を持って提出します。
- 審査:事務局による書類審査を経て、採択・不採択が通知されます。審査基準は制度ごとに公開されている場合とされていない場合があります。
- 事業実施:採択後、承認された計画に沿って設備導入・工事を実施します。計画変更が必要になった場合は、実施前に事務局へ相談・承認を得る必要があります。
- 実績報告・入金:工事完了後、領収書や写真などの証憑を添えて実績報告書を提出します。事務局の確認が完了すると、補助金が入金されます。
採択されても補助金がすぐ振り込まれるわけではなく、設備導入と実績報告を終えてから入金される後払いの制度である点は、資金計画を立てるうえで見落としやすいポイントです。
補助金の選び方
補助金の選び方は、削減したい設備・費用規模・対応できる事務負荷の3点から絞り込むのが基本です。
大規模な設備改修を考えているならSHIFT事業の改修支援型や省エネ・非化石転換補助金の工場・事業場型、比較的小さな投資であればSHIFT事業のDX型や自治体独自の補助金が候補になります。国の補助金と自治体の補助金は、対象経費が重複しなければ併用できる場合がありますが、二重取りにあたる重複申請は原則認められません。複数制度の組み合わせを検討する際は、各制度の事務局に個別に確認するのが確実です。
| 自社の状況 | 候補になりやすい制度 |
|---|---|
| 工場全体の大規模な設備改修を考えている | SHIFT事業(改修支援型)/省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型) |
| まずは運用改善やEMS導入から始めたい | SHIFT事業(DX型) |
| 投資額が数百万円規模で、社内対応力が限られる | 自治体独自の補助金 |
| 個人事業主または小規模な法人 | 省エネ・非化石転換補助金など、個人事業主が対象に含まれる制度 |
どの制度が使えそうか自社だけで判断しづらい場合は、次に紹介する申請支援会社に早い段階で相談する方法もあります。
申請支援会社に依頼するメリットと注意点

申請支援会社に依頼する最大のメリットは、公募要領の読み込みと書類作成にかかる社内工数を減らせることです。
脱炭素補助金は制度数が多く、申請書類も事業計画書や積算根拠など専門性の高いものが求められます。エネルギー管理士など専門資格を持つ支援会社に依頼すれば、自社に合う制度の選定から書類作成、採択後の実績報告までを任せられます。一方で、支援会社によって成功報酬型・着手金ありなど料金体系が異なるため、契約前に採択・不採択それぞれの場合の費用負担を確認しておく必要があります。
脱炭素補助金の申請支援に強い会社6選
ここでは、脱炭素・省エネ関連の補助金申請支援を行っている会社を、五十音順に6社紹介します。おすすめの順位付けではなく、各社の公式サイトで確認できる情報をもとにまとめています。
INNOVALES株式会社
中小企業向けに、生産性向上と脱炭素化につながる補助金の活用支援を行う会社です。ものづくり補助金や事業再構築補助金など複数制度に対応し、全国からリモートでの相談を受け付けています。約1000万円規模の補助金で400件以上の支援実績を公式サイトで公表しています。
SMFLみらいパートナーズ株式会社
三井住友ファイナンス&リースグループの一員として、脱炭素関連補助金の活用をワンストップで支援する会社です。制度選定から申請書類の作成、実績報告まで一貫してサポートします。2022〜2024年度に582件の補助金採択実績があり、完全成功報酬型の料金体系を採用しています。
カーボンプランニング株式会社
省エネ診断から補助金活用まで一貫して支援する会社で、省エネ・太陽光関連の補助金申請代行を専門にしています。国・都道府県・市区町村の30以上の補助制度に対応し、経済産業省登録の「エネマネ事業者」として活動しています。相談料・着手金は原則0円で、不採択の場合は費用が発生しない料金体系です。
グリーンテクノロジー株式会社
省エネ・脱炭素・GX関連設備の導入を対象にした補助金コンサルティングを行う会社です。経済産業省・環境省・国土交通省が実施する複数の補助事業に対応しています。単なる申請代行にとどまらず、現地調査に基づいて具体的なCO2削減策を提案する点を特徴として公式サイトで紹介しています。
脱炭素化支援株式会社
改正省エネ法対応や補助金申請、CO2算定支援などを行う会社で、社名の通り脱炭素化支援を専門にしています。在籍するコンサルタント全員が国家資格「エネルギー管理士」を保有していることを特徴として掲げ、CO2排出量が増加する業務は請け負わない方針を公式サイトで明示しています。
参照:脱炭素化支援株式会社
ピコットエナジー株式会社
中小企業から大企業まで、省エネ支援や脱炭素経営支援、補助金申請支援を行う会社です。ものづくり補助金や省エネ補助金の申請支援に加え、再エネ導入支援やSBTi(科学に基づく削減目標)の策定支援まで手がける点で、単発の申請代行にとどまらない幅広さがあります。
参照:ピコットエナジー株式会社
| 会社名 | 主なサービス範囲 | 特徴 | 対応地域 |
|---|---|---|---|
| INNOVALES株式会社 | ものづくり補助金・事業再構築補助金・脱炭素関連補助金 | 約1000万円規模で400件以上の支援実績 | 全国(リモート対応) |
| SMFLみらいパートナーズ株式会社 | 脱炭素関連補助金の活用支援 | 2022〜2024年度に582件の採択実績、完全成功報酬型 | 全国 |
| カーボンプランニング株式会社 | 省エネ診断・省エネ補助金・太陽光補助金申請代行 | 30以上の補助制度に対応、経産省登録エネマネ事業者 | 全国 |
| グリーンテクノロジー株式会社 | 省エネ・脱炭素・GX関連の補助金コンサルティング | 現地調査に基づくCO2削減策の提案 | 全国 |
| 脱炭素化支援株式会社 | 改正省エネ法対応・補助金申請・CO2算定支援 | 全コンサルタントがエネルギー管理士資格保有 | 全国 |
| ピコットエナジー株式会社 | 省エネ支援・脱炭素経営支援・補助金申請支援 | SBTi策定支援まで対応 | 全国 |
申請時に気をつけたい注意点
脱炭素補助金は、公募期間が短い・予算上限に達し次第終了する・審査に通っても費用が全額戻るわけではないという3点に注意が必要です。
補助金は制度ごとに目的や対象が異なり、審査を通過しても採択が保証されるわけではありません。採択後も実績報告など事後の義務が発生するため、申請前に「採択されなかった場合」「途中で計画変更が必要になった場合」の対応も含めて確認しておくと安心です。また、公募要領やスケジュールは年度ごとに更新されるため、本記事の情報も必ず各制度の公式サイトで最新版を確認してください。
よくある質問
脱炭素補助金について、よく検索されている質問にまとめて回答します。
公募期間は制度ごとに異なり、年度ごとに変わります。例えば環境省のSHIFT事業は令和8年度の場合2026年6月12日から8月26日正午まで、経済産業省の省エネ・非化石転換補助金は2026年度の3次公募が8月20日から9月28日までとなっています。予算上限に達すると期間内でも締め切られることがあるため、各制度の公式サイトで最新の公募スケジュールを確認してください。
制度によっては個人事業主も対象です。例えば経済産業省の省エネ・非化石転換補助金は法人・個人事業主の両方を対象としています。ただし対象者の範囲は制度ごとに個別に定められているため、自分の事業形態が対象に含まれるかを公募要領で確認する必要があります。
同じ経費に対して複数の補助金を重複して受け取ることは、原則として認められません。一方で、対象経費が重ならない範囲であれば、国の補助金と自治体の補助金を組み合わせて使えることがあります。併用の可否は制度ごとの公募要領で個別に確認してください。
補助金は不採択でも申請自体にかかった自社の工数は戻りません。申請支援会社に依頼している場合の費用負担は会社によって異なり、着手金がかかる会社もあれば、採択された場合のみ費用が発生する完全成功報酬型の会社もあります。契約前に不採択時の費用について確認しておくと安心です。
制度が1つに絞られていて書類作成の負担が小さい場合は、自社での申請も選択肢になります。一方で、複数制度の比較検討や事業計画書の作成に工数をかけられない場合は、申請支援会社に依頼することで採択の可能性を高めやすくなります。
いいえ、多くの脱炭素補助金は後払いです。採択後に設備導入や工事を実施し、実績報告書を提出して事務局の確認が完了してから入金されます。設備の購入費用や工事費用は、いったん自社で立て替える必要がある点に注意してください。
まとめ
脱炭素補助金は、SHIFT事業・省エネ・非化石転換補助金・自治体独自の制度の3系統に分かれ、対象設備や補助率、公募期間がそれぞれ異なります。まずは自社が導入したい設備と費用規模から候補になる制度を絞り込み、申請から受給まで6ステップの流れを踏まえてスケジュールを立てることが重要です。制度が複雑で自社対応が難しい場合は、本記事で紹介した申請支援会社に相談することも選択肢のひとつです。
公募期間や補助率は年度ごとに見直されるため、本記事の内容を参考にしつつ、実際に申請する際は必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領を確認したうえで進めてください。
脱炭素補助金と合わせて、脱炭素化そのものの基礎知識も押さえておくと制度選びの判断がしやすくなります。脱炭素とは何か?基礎から最新事例までわかりやすく解説では、脱炭素の考え方と企業の取り組み事例を紹介しています。
脱炭素補助金と対象が近い制度として、中小企業向け省エネ補助金2026年完全ガイドもあわせて確認すると、省エネ設備に特化した補助金との違いが分かりやすくなります。
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