欧州森林破壊防止規則(EUDR)は、牛・カカオ・コーヒー・アブラヤシ・ゴム・大豆・木材とその派生製品をEU市場に出す事業者に、森林破壊のない土地で生産されたことの証明を求める規則です。適用開始は2026年12月30日の予定で、EU域内に法人を持たない日本企業も、取引先のEU事業者から生産地の情報を求められる可能性があります。
この記事では、規則の仕組みと最新の適用日、対象品目、日本企業への影響、準備の進め方を整理します。あわせて、EUDR対応を支援する会社4社と、天然ゴムなどで取り組みを公表している日本企業の事例を、各社の公式情報から紹介します。
この記事でわかること
- EUDRの目的と、事業者に求められる3つの条件
- 2026年12月30日の適用日と、2026年5月のレビュー結果
- 対象になる7品目と、対象事業者の考え方
- 日本企業が対象になる場面と、情報照会への備え
- デューデリジェンスの流れと、準備の進め方
- 支援会社4社の特徴と、日本企業の取り組み事例3件
欧州森林破壊防止規則(EUDR)とは?目的と仕組み

EUDRは、森林破壊につながった土地の産品をEU市場に出させない規則で、事業者に生産地までの証明を求めます。
対象は牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材の7品目と、その派生製品です。EU市場に対象品目を出す、またはEUから輸出する事業者が、産品が規則の条件を満たしていることを自ら確かめ、国の仕組みに届け出ます。
参照:農林水産省「EUの森林減少防止に関する規則への対応について」(2026年10月確認)
EUDRが求める3つの条件
農林水産省の整理では、対象品目を扱う事業者は次の3点を確認する必要があります。生産地の位置まで示して「森林減少フリー」を証明することが、この規則の中心です。
- 2020年12月31日以降に森林減少が起きていない土地で生産された「森林減少フリー製品」であること
- 生産国の関連法規に従って生産されていること
- 上記を証明するデューデリジェンスステートメント(DDS)を作成し、提出すること
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EUDRはいつから適用される?延期の経緯と最新の適用日
EUDRの適用開始は、大企業と中規模事業者が2026年12月30日、小規模・零細事業者の多くが2027年6月30日です。
適用日は2024年12月と2025年12月の2度の改正で、それぞれ1年ずつ延びました。2026年5月に公表された欧州委員会の簡素化レビューは、基本条文をこれ以上改正する提案はしないとしており、2026年10月時点で適用日は次の表のとおりです。
| 事業者の区分 | 適用日 |
|---|---|
| 大企業・中規模事業者 | 2026年12月30日 |
| 小規模・零細事業者(多くの場合) | 2027年6月30日 |
| EU木材規則(EUTR)の対象だった小規模・零細事業者 | 2026年12月30日 |
| 追加品目(可溶性コーヒー、一部のパーム油派生品、冷凍の牛タン) | 2027年12月30日 |
参照:欧州委員会「Regulation on deforestation-free products」、欧州委員会「Report on the EUDR simplification review(COM(2026) 191)」(2026年5月4日付)
2025年12月の改正で簡素化された義務
2025年12月の改正で、デューデリジェンスステートメントの提出責任は、対象産品を最初にEU市場へ出す事業者、または輸出する事業者に集約されました。下流事業者とトレーダーは、自らDDSを提出する義務がなくなりました。ただし、サプライヤーや顧客に関する一部の情報の収集は引き続き必要です。
| 項目 | 改正後の扱い |
|---|---|
| 下流事業者・トレーダー | デューデリジェンスは正当な懸念がある場合に限る。DDSの提出は最初の市場投入時のみ |
| 小規模・零細の一次事業者 | DDSに代えて、TRACES NTでの一度限りの簡易申告が可能 |
| 位置情報 | 小規模・零細の一次事業者は、座標に代えて土地区画や事業所の郵便住所を使える |
| 対象品目 | 書籍・新聞・印刷物(HSコード49)を対象から除外 |
参照:EY Japan「欧州森林破壊防止規則(EUDR)の適用開始日を2026年12月30日に延期」(2026年3月11日付)
EUDRの対象品目と対象事業者は?
対象は牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材の7品目で、これらの派生製品も含まれます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象の7品目 | 牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材 |
| 派生製品の例 | 牛肉、チョコレート、コーヒー、パーム油、タイヤ、木製家具 |
| 対象から外れたもの | 書籍・新聞・印刷物(HSコード49、2025年12月の改正で除外) |
| デューデリジェンスステートメントを出す事業者 | 対象産品を最初にEU市場へ出す事業者、または輸出する事業者 |
チョコレートやタイヤ、家具のように、完成品でも原料が7品目に当たれば対象になり得ます。自社の製品に使う原料が7品目のどれに当たるかを、まず洗い出すことが出発点です。
日本企業はEUDRの対象になる?
日本企業の直接の義務は原則として多くありませんが、取引先のEU事業者から生産地の情報を求められる場合があります。
義務を負うのは、EU市場に産品を最初に出す事業者です。EU域外の企業が産品を輸出する場合は、最初にEU域内で市場に出す自然人または法人が事業者になります。日本は、2025年5月22日に欧州委員会が公表した国別リスク分類で低リスク国に挙げられています。
| 日本企業の立場 | EUDRとの関わり |
|---|---|
| EU域内に法人を持たず、EUへ製品を供給する | 直接の義務は原則なし。輸入するEU事業者から、位置情報や生産国の法令遵守に関する情報を求められる可能性がある |
| EU域内に子会社を持つ | 子会社が事業者として義務を負う場合がある |
義務がなくても、取引先からの情報照会に答えられる状態を作っておくことが実務の要点です。PwC Japanのニュースレターも、取引先から位置情報や生産国の法令遵守に関する情報を求められる可能性を指摘しています。
参照:PwC Japan「EU森林破壊フリー製品規則(EUDR)の概要と最新動向」(2025年11月)
EUDR対応のデューデリジェンスと準備の進め方
デューデリジェンスは情報収集、リスク評価、リスク低減の3段階で進め、事業者の立場で負担が変わります。
デューデリジェンスの3段階
KPMGは、デューデリジェンスを次の3段階として整理しています。義務の内容は、事業者の規模、サプライチェーン上の位置、生産地によって異なるため、自社の立場を先に確かめます。
- 情報・データ・文書の収集
- リスクアセスメント
- リスク低減策の実施
参照:KPMG Japan「EUDR対応支援」(2026年10月確認)
日本企業が今から進める準備の手順
同じくKPMGの支援メニューから、準備の順序を整理します。最初に、自社が対象になるかどうかのスコープを確定させることで、後の作業の無駄を減らせます。
- 義務事項を確認し、対象になるスコープを特定する
- 原料から製品までのバリューチェーンをマッピングする
- 対応の優先順位を付け、対応方針とロードマップを作る
- 生産地情報を集めるための技術を選び、運用の仕組みを設計する
- サプライヤーにデータの提出を依頼し、リスクを評価して低減策を実行する
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EUDR対応はほかのEU規制にも活かせる?
EUDRで整えるデューデリジェンスの仕組みは、CSDDDやEU電池規則など、ほかのEU規制への対応にも転用できます。
KPMGもEYも、EUDR対応で作る体制を、ほかの規制対応の土台にする考え方を示しています。生産地までさかのぼる情報の集め方は、規制が変わっても共通して使えるため、EUDRだけのための仕組みにしない設計が現実的です。
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EUDRに向けた日本企業の取り組み事例

天然ゴムでは、タイヤメーカーがEUDRを意識して、位置情報の評価ツールの導入や実地監査を進めていると公表しています。
本節の3社は、いずれも各社が自社サイトで公表した内容だけをもとに書いています。成果の数値は、公表されているものに限っています。
住友ゴム工業:実地監査とSystemEarthによる確認
タイヤを主力とするメーカーで、原料の天然ゴムの調達でEUDR対応を進めています。
天然ゴム加工業者向けのEUDR対応ガイドライン作成に協力し、加工業者への訪問とEUDR対応状況の監査を実施しています。2025年8月からは、シンガポール発のIT企業SystemEarthのツールで、サプライチェーン上流の準拠状況の確認を強化しました。
公表されている実績は、2025年にEUDR対象の天然ゴム調達サプライヤーの96%へ実地監査を行ったことです。
参照:住友ゴム工業「持続可能な天然ゴムの取り組み」(2026年10月確認)
横浜ゴム:RubberWay Geo-Mappingの導入
タイヤメーカーで、天然ゴムのサプライチェーンのトレーサビリティ向上に取り組んでいます。
2024年4月に、農家の位置情報や環境・社会問題の情報を評価・監視できるリスク評価ツール「RubberWay Geo-Mapping」を導入しました。発表では、この導入をEUDRへの対応を進める一環と位置づけています。
発表時点で、同ツールには30,000以上の農園が登録されていると紹介されています。導入による成果の数値は公表されていません。
参照:横浜ゴム「持続可能な天然ゴム調達の促進に向けてリスク評価ツール「RubberWay Geo-Mapping」を導入」(2024年5月17日)
伊藤忠商事:パーム油の人権・環境デューデリジェンス
総合商社で、食料カンパニーが扱うパーム油を重点商材として、持続可能な調達に取り組んでいます。なお、この取り組みはEUDR対応として公表されたものではなく、パーム油の調達に関するデューデリジェンスの事例です。
2024年度に、外部専門家の協力を得て、マレーシアとインドネシアの1次から3次サプライヤー89社を対象にセルフチェックアンケートを実施し、3社を選んでリモートで詳細なヒアリングを行いました。
顕在化している、または直ちに懸念される人権課題として特定された事項はありませんでした。また、多くの事業所で森林破壊防止に関する方針の整備と温室効果ガス排出量の削減の取り組みを確認したと公表しています。
参照:伊藤忠商事「商品ごとの取組み方針と内容」(2026年10月確認)
EUDR対応を支援する会社4社
EUDR対応の支援は、会計系コンサルティングファームや環境経営の支援会社が、自社サイトで案内しています。
本節では、自社サイトでEUDR対応の支援を案内していることを編集部が確認できた4社を、社名の読みの五十音順(イーワイ、エスプールブルードットグリーン、ケーピーエムジー、ピーダブリューシー)で紹介します。5社に満たないのは、日本語の自社サイトで支援内容を確認できた会社がこの4社だったためです。順位や推奨の順序を示すものではなく、掲載内容は各社の公式ページの記載に基づきます。
| 会社 | 公式ページが示す支援内容 | 支援の切り口 | 確認したページの時点 |
|---|---|---|---|
| EY Japan | サプライチェーンのデューデリジェンス支援、リスク管理体制の整備 | 他のEU規制対応の基盤になる考え方 | 2025年3月 |
| エスプールブルードットグリーン | EUDR対応支援(範囲は記載なし) | CDP回答や排出量算定などの環境経営支援と一体 | 2025年10月追記 |
| KPMGコンサルティング | ギャップ分析、方針・ロードマップ作成、デューデリジェンス実施と報告書作成 | アドバイザリーとリーガルの両面 | 2024年6月発表 |
| PwC Japan | メンバーファームが連携したEUDR対応支援 | 法律とサステナビリティの専門家 | 2024年5月公開 |
EY Japan
気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)が、EUDR対応のための基盤づくりを支援しています。
支援の範囲は、サプライチェーンのデューデリジェンス支援とリスク管理体制の整備です。料金体系や相談窓口の詳細は、記事には記載がなく、問い合わせの案内にとどまっています。
EUDR対応を、CSDDDやEU電池規則など他の規制対応の基盤にもなるものとして位置づけていることが特徴です。
参照:EY Japan「EUDRで日本企業に求められる対応と基盤づくりのステップ」(2025年3月)
エスプールブルードットグリーン
株式会社エスプールブルードットグリーンが、GHG排出量算定、CDP回答、SBT認定取得、TCFD・TNFD開示などの環境経営の支援とあわせて、EUDR対応支援を行っています。
公式のコラムには「EUDRの対応支援も実施しております」とあり、支援の具体的な範囲は示されていません。
CDP回答がEUDR対応の手助けになる点を、コラムで解説していることが特徴です。
参照:エスプールブルードットグリーン「EUDR(欧州森林破壊防止規則)とは?」(2025年10月追記)
KPMGコンサルティング
KPMGコンサルティングが、「EUDR対応支援サービス」として、現状のギャップ分析からデューデリジェンスの実施まで、ワンストップの支援を提供しています。
支援の範囲は、ギャップ分析と課題整理、対応方針の検討とロードマップ作成、デューデリジェンスの実施と報告書の作成です。
アドバイザリーとリーガルの両面から支援し、KPMGのグローバルなEUDRワーキンググループに参加していることが特徴です。
参照:KPMGコンサルティング「EUDR対応支援サービスを開始」(2024年6月13日)
PwC Japan
PwCのメンバーファームが連携し、法律やサステナビリティを専門とするプロフェッショナルがEUDR対応を支援しています。
公式のコラムには、EUDRに特化した支援メニューの詳細は記載されていません。関連サービスとして、サステナビリティ情報開示支援やGX対応支援などが案内されています。
法律とサステナビリティの両分野の専門家が、グローバルネットワークと連携して支援することが特徴です。
参照:PwC Japan「EUDRの概要と要求事項」(2024年5月28日)
よくある質問
EUDRについて、検索でよく見られる疑問に答えます。
EUDRは、森林破壊のない土地で生産された産品だけをEU市場に出せるようにするための規則です。牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材とその派生製品が対象で、事業者は生産地の情報をもとにデューデリジェンスを行い、DDSを提出します。
大企業と中規模事業者は2026年12月30日、小規模・零細事業者の多くは2027年6月30日からです。2026年5月の欧州委員会のレビューでも、基本条文をさらに改正する提案はされませんでした。
EU域内に法人を持たない日本企業が、直接の義務を負うことは原則として多くありません。ただし、EU域内に子会社がある場合は義務を負うことがあり、取引先のEU事業者から生産地の情報を求められる可能性もあります。
牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材の7品目です。牛肉、チョコレート、パーム油、タイヤ、木製家具などの派生製品も含まれ、書籍・新聞・印刷物は2025年12月の改正で対象から除外されました。
最初に、自社の製品と原料が7品目に当たるかを確認し、自社の立場とスコープを特定します。そのうえで、バリューチェーンのマッピング、データ収集の仕組みづくり、サプライヤーへの依頼へ進みます。
まとめ
EUDRは2026年12月30日の適用開始に向け、日本企業にも取引先を通じた対応が求められる規則です。
- EUDRは、7品目とその派生製品について、森林破壊のない土地での生産を生産地まで証明させる規則です
- 適用日は大企業・中規模事業者が2026年12月30日、小規模・零細事業者の多くが2027年6月30日です
- EU域内に法人を持たない日本企業の直接の義務は原則として多くありませんが、取引先からの情報照会に備える必要があります
- 準備は、スコープの特定、バリューチェーンのマッピング、データ収集の仕組みづくりの順で進めます
- 支援会社は自社サイトで支援内容を確認し、天然ゴムなどの事例も参考に、自社の原料に合う進め方を選びます