地方創生に取り組む企業は、地域の課題解決を新たな事業機会として捉え、コンサルティングによる支援から自社事業としての実践まで幅広く関わっています。本記事では、企業が地方創生に取り組むメリットや関わり方、企業版ふるさと納税などの支援制度、支援会社の探し方、実践企業の事例をあわせて解説します。
この記事でわかること
- 地方創生の基本的な意味と目的
- 企業が地方創生に取り組むメリットと分野別の関わり方
- 企業版ふるさと納税など主な支援制度
- 地方創生の支援会社と実践企業の違い、陥りやすい失敗パターン
- 地方創生を支援する会社と、実際に取り組む企業の事例
地方創生とは?

地方創生とは、人口減少と東京一極集中に対応し、地域の特性を生かして持続可能な社会をつくる国の政策です。
2014年に成立した「まち・ひと・しごと創生法」を根拠に、国と地方自治体が一体となって取り組んでいる政策の総称で、「稼ぐ地域をつくり安心して働けるようにする」「地方への新しいひとの流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「魅力的な地域をつくる」という4つの基本目標が掲げられています。当初は自治体主体の取り組みとして始まりましたが、近年は地域の課題解決そのものを新しい市場機会と捉える企業が増えており、自治体だけでなく民間企業の参画が政策の実効性を左右する要素になっています。
地方創生の定義や自治体側の取り組み内容、成功のポイントについては、地方創生とは?取り組み内容と成功のポイントを解説した記事で詳しく取り上げています。本記事では、企業がどのように関わるかという視点に絞って解説します。
企業の参画がこれまで以上に重視されるようになった背景には、自治体の財源や人員だけでは担いきれない課題が増えている事情があります。空き家の再生、地域産品の販路開拓、デジタル化による行政手続きの効率化など、民間企業が持つノウハウでなければ解決が難しい領域が広がっており、自治体側から企業に協力を呼びかける動きも一般的になっています。
参照:内閣府「まち・ひと・しごと創生」(2026年9月確認)
企業が地方創生に取り組むメリット
企業が地方創生に取り組むと、人材確保やブランド向上、新市場の開拓、税制優遇など複数の利点が得られます。
まず挙げられるのが人材面のメリットです。地方創生に関わる姿勢を発信することで、社会貢献意識の高い人材からの応募が増えたり、地方在住のまま働ける体制を整えることで既存社員の離職を防いだりする効果が期待できます。次にブランドイメージの向上です。地域と長期的な関係を築く企業として認知されることは、消費者や取引先からの信頼につながります。さらに、都市部では見えにくかった地域特有のニーズに触れることで、新しい商品・サービスの着想を得られる点も見逃せません。
新市場の開拓という観点では、人口が減少する地域だからこそ、既存の生活インフラや流通網に隙間が生まれやすいという側面もあります。買い物困難者向けの移動販売や、空き家を活用した新しい住まい方の提案など、都市部ではすでに飽和した市場でも地方では需要が残っているケースが見られます。こうした隙間を見つけられるかどうかは、実際に地域に足を運び、自治体や住民との対話を重ねられるかにかかっています。
地方創生への参画は、企業のCSR(企業の社会的責任)活動やサステナビリティ経営の一環として位置づけられることも増えています。CSR活動全般の考え方や企業事例については、CSR活動とは?企業事例からわかりやすく解説した記事もあわせてご覧ください。
最後に、後述する企業版ふるさと納税のような税制優遇も実務上のメリットです。寄付を通じて地域を支援しながら、実質的な税負担を抑えられる仕組みがあるため、資金面のハードルを抑えて地方創生に関わることができます。
これらのメリットは、単発の広報活動では得にくいという特徴があります。地域との関係づくりには相応の時間がかかるため、短期的な話題づくりを目的にするのではなく、自社の事業や採用戦略の一部として中長期的に位置づけたほうが、結果的にメリットを実感しやすくなります。
企業の地方創生への関わり方(分野別)

企業の関わり方は観光、不動産、人材、農業など分野によって異なり、自社の強みを生かせる領域が選べます。
観光分野では、体験型サービスの開発や地域の観光資源の掘り起こしを通じて交流人口を増やす関わり方が中心です。不動産分野では、空き家や遊休施設をリノベーションし、宿泊施設やシェア型の複合施設として再生する取り組みが目立ちます。人材分野では、クラウドソーシングやリモートワークの仕組みを使い、都市部の仕事を地方に住みながら受注できる環境を整える動きが広がっています。農業・一次産業分野では、スマート農業技術の導入や、地域産品の販路開拓を通じた地産地消の推進が主な関わり方です。
どの分野であっても、自社の既存事業や強みの延長線上に地方創生の機会を見つける企業が多く、まったく新しい事業をゼロから立ち上げるケースばかりではありません。小売業なら地元産品の仕入れ拡大、不動産業なら空き家の再生、IT企業なら自治体のDX支援というように、本業の延長で関われる余地がある点が、地方創生への参入のハードルを下げています。具体的な企業の分野別の取り組みは、後述する「地方創生に取り組む企業の実践事例」で紹介します。
地方創生を支援する制度
企業版ふるさと納税や交付金など、地方創生には自治体と企業の連携を後押しする複数の支援制度があります。
なかでも企業にとって利用しやすいのが企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)です。国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトへ企業が寄付すると、損金算入と税額控除をあわせて寄付額の最大約9割が軽減され、実質的な企業の負担は約1割まで圧縮されます。通常の損金算入による軽減効果(約3割)に加えて、2020年度の拡充で税額控除が最大6割まで引き上げられたことによる効果です。
| 制度名 | 対象 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 企業版ふるさと納税(地方創生応援税制) | 国が認定した自治体の地方創生プロジェクトへ寄付する企業 | 損金算入と税額控除で寄付額の最大約9割を軽減 |
| デジタル田園都市国家構想交付金 | 自治体が中心(民間企業との連携事業も対象) | デジタル技術を活用した地域活性化の取り組みを支援 |
デジタル田園都市国家構想交付金は自治体向けの交付金ですが、企業版ふるさと納税と組み合わせて民間企業と連携するプロジェクトも多く、自治体側から企業に協力を呼びかける形で関わりが生まれるケースがあります。地方創生とSDGsのつながりについては、地方創生とSDGsとは?取り組み事例や背景を解説した記事で詳しく紹介しています。
これらの制度を実際に利用する場合、まず声をかけるべき窓口は本社や事業所を置く自治体ではなく、寄付・連携をしたい先の自治体の地方創生担当部署であることが多く、地域ごとに募集しているプロジェクトや連携テーマが異なります。どの自治体と組むかが定まっていない段階では、後述する支援会社に相談し、自社の事業内容に合う地域やプロジェクトを一緒に探してもらう進め方も選択肢になります。
参照:内閣府「新しい波」企業版ふるさと納税の案内(2024年8月時点)
支援会社と実践企業の違い
支援会社は地方創生のノウハウを提供する側、実践企業は自ら事業として取り組む側という違いがあります。
地方創生に関する記事や企業一覧では、この2つがまとめて「地方創生に取り組む企業」として紹介されがちですが、性質はまったく異なります。支援会社は、自治体や他の企業に対して調査・企画立案・実行支援などのサービスを提供することで対価を得る立場です。シンクタンクやコンサルティング会社、空き家活用の専門企業などが該当します。一方の実践企業は、自社の本業や新規事業として地域資源を活用し、地方創生の取り組みそのものを事業として継続している立場です。
自社で地方創生に取り組みたい企業にとっては、まず自社が「支援を受ける側」なのか「自ら実践する側」なのかを整理しておくことが、次に紹介する支援会社選びや事例収集の精度を高める近道になります。すでに自社で事業アイデアがあり、実行段階の伴走支援だけを求めているのか、それとも企画段階から相談したいのかによっても、適した支援会社のタイプは変わります。政策提言・調査を主とするシンクタンク型と、現場での事業立ち上げまで伴走するプロデュース型では、得意な支援フェーズが異なるため、次章の一覧では両方のタイプを含めて紹介しています。
地方創生で企業が陥りやすい失敗パターン
目的や撤退基準を曖昧にしたまま参入すると、投資回収の遅れや住民との摩擦につながりやすくなります。
- 社会貢献の指標と事業としての収益指標を分けずに評価してしまい、成果が見えにくくなる
- 地域住民との合意形成を後回しにし、計画段階で地元の理解を得られないまま進めてしまう
- 短期的な成果ばかりを追い、地域に根付くまでの中長期的な投資回収の見通しを持たない
- 事業がうまくいかない場合の撤退基準をあらかじめ決めておらず、損失が拡大してから見直しに入る
- 地域外から参入した企業が、事前調整のないまま地元の既存事業者と競合する形になり、思わぬ反発を招く
これらの失敗の多くは、参入前にKPIと撤退基準を明文化しておくことである程度防げます。特に地域との信頼関係づくりには時間がかかるため、初年度から大きな成果を求めすぎない計画を立てることが、結果的に持続可能な取り組みにつながります。
地方創生を支援する会社
地方創生の支援会社は、自治体や企業に調査、企画立案、実行支援などを提供する専門組織を指します。
以下は、各社の公式サイトで地方創生関連の支援内容を確認できる6社を、会社名の五十音順に並べたものです。掲載順に優劣の意味はありません。支援内容は「政策提言・調査型」と「実行プロデュース型」に大きく分かれるため、自社が求めているのが調査・戦略立案なのか、現場での実行支援なのかを整理してから選ぶと選びやすくなります。
| 会社名 | 主な支援内容 | 対応領域 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| NTTデータ経営研究所 | 自治体DX・地域DXの企画支援 | 行政手続き改革、データ利活用 | サービスデザイン手法による現場改革の受託実績 |
| さとゆめ | 地域プロデュース、伴走型コンサルティング | 企画立案から起業・運営まで一貫支援 | 分散型ホテルなど自ら事業運営にも参画 |
| 日本総合研究所 | 政策提言・調査研究 | 地域ブランド戦略、人材シェアリング | 独自の政策提言レポートを継続発信 |
| 野村総合研究所 | 公共政策の調査・コンサルティング | 産業創出、地域再生、官民連携 | 自治体・住民と連携したビジョンづくり |
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 政策研究、経済調査、経営アドバイザリー | 地域経済、地方企業の成長支援 | 主要都市に拠点を構え地域密着で支援 |
| LIFULL(LIFULL地方創生) | 空き家データ提供、活用プロデュース | 空き家利活用、地域人材育成 | 700超の自治体と連携した空き家バンク運営 |
NTTデータ経営研究所
NTTデータ経営研究所は、自治体や企業のデジタル技術活用による地域課題解決を支援するコンサルティング会社です。サービスデザイン手法を用いて、市民や職員を起点にした行政手続きの見直しや、自治体DX・地域DXの企画立案から実行までを支援しています。山形県酒田市や三重県明和町など、複数自治体のフロントヤード改革を受託した実績があり、デジタル化を切り口にした地域課題解決を得意としています。
さとゆめ
さとゆめは、地域に伴走しながら事業を生み出す地域プロデュース会社です。企画立案から起業、運営までを一貫して地域に伴走する事業プロデュースを行っており、全国50以上の地域で活動し、JR東日本と沿線全体をホテルに見立てる「沿線まるごとホテル」などの分散型ホテル事業を手がけています。支援するだけでなく自ら事業運営にも関わる点が特徴です。
参照:さとゆめ公式サイト
日本総合研究所
日本総合研究所(JRI)は、地方創生をはじめとする社会課題の調査研究と政策提言を行うシンクタンクです。地域ブランド戦略や人材シェアリング、コンパクトシティ化など、多面的な切り口から政策提言レポートを発表しています。「地方創生2.0」など独自の政策提言レポートを継続的に公開しており、自治体や企業が中長期の方針を検討する際の参考情報源になっています。
参照:日本総合研究所公式サイト
野村総合研究所
野村総合研究所(NRI)は、公共政策分野の調査とコンサルティングを行う国内最大級のシンクタンクです。産業創出・振興、地域再生、デジタル社会基盤整備など、官民連携による政策実現を支援しています。山形県鶴岡市などで自治体・企業・住民と連携し、地域資源を生かした将来ビジョンづくりに携わった実績があります。
参照:野村総合研究所公式サイト
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)は、MUFGグループのシンクタンク・コンサルティングファームです。政策研究や経済調査に加えて、地方創生政策分野で自治体・企業への実践的なアドバイザリーを提供しています。東京・名古屋・大阪の主要都市に拠点を構え、地方建設業の業務改革支援など地域密着の実績を持っています。
LIFULL(LIFULL地方創生)
LIFULLは、空き家の利活用を通じて地域活性化を支援する事業「LIFULL地方創生」を展開しています。空き家データの提供から活用プロデュース、相談員の人材育成までを一貫して手がけており、700を超える自治体と連携し「LIFULL HOME’S空き家バンク」で全国の空き家情報を集約している点が特徴です。
地方創生に取り組む企業の実践事例
実践企業は、自社の事業として地域資源を活用し、地方創生に継続的に取り組んでいる企業を指します。
以下は、各社の公式サイトで取り組みが確認できる5社を、会社名の五十音順に並べたものです。掲載順に優劣の意味はありません。
アソビュー
アソビューは、体験型レジャーの予約サービス「アソビュー!」を運営する企業です。地域のパートナーとして、体験商品の開発、販路開拓、販売促進という3つの支援を自治体や地域の事業者向けに行っています。静岡銀行との資本業務提携を結び、地方自治体・金融機関と連携した観光活性化に取り組んでいる点が特徴です。
参照:アソビュー公式サイト
面白法人カヤック
面白法人カヤックは、神奈川県鎌倉市に本社を置くコンテンツ制作会社です。「ちいき資本主義」の理念のもと、移住支援サービスや地域通貨といったデジタル基盤の提供に加え、地域への直接投資を組み合わせたまちづくり事業を展開しています。地域独自の経済圏を掲げる「鎌倉資本主義」を提唱し、専用サイトで継続的に取り組みを発信している点が特徴です。
ランサーズ
ランサーズは、クラウドソーシングサービスを運営する企業です。全国300万人以上のフリーランス人材を生かし、自治体や地域企業が抱える人材不足の解消を支援しています。「エリアパートナープログラム」や地方創生専門サイトを通じて自治体との連携体制を構築している点が特徴です。
参照:ランサーズ地方創生サイト
リノベる
リノベるは、中古物件のリノベーションを手がける企業です。老朽化した建物を、地域に開かれた複合施設として再生するプロジェクトに取り組んでいます。1974年竣工のNTT溝ノ口ビルを、シェアキッチンやダンススタジオを備えた複合施設「BOIL」として再生し、2021年7月に開業したことが公式サイトで紹介されています。
参照:リノベる公式サイト(2021年7月時点)
ローソン
ローソンは、コンビニエンスストアを全国展開する企業です。自治体と提携したアンテナショップの運営や、地元産品を生かした商品開発を通じて、地産地消・地産外消を進めています。2026年6月時点で北海道に13店舗、岩手県に2店舗の地元木材を使った木造店舗を展開しており、林業支援と地域資源の活用を組み合わせている点が特徴です。
参照:ローソン公式サイト(2026年6月時点)
よくある質問
地方創生に取り組む企業について、よく検索されている質問にお答えします。
人材確保やブランドイメージの向上、新市場の開拓、税制優遇など複数のメリットがあります。特に企業版ふるさと納税を活用すると、寄付額の実質的な負担を抑えながら地域貢献ができます。
シンクタンクやコンサルティング会社、空き家活用の専門企業など、支援内容が自社の目的に合うかどうかで選ぶのが基本です。まずは各社の公式サイトで実績や対応領域を確認することをおすすめします。
投資回収に時間がかかることや、地域の商慣習・人間関係への配慮が必要になる点が挙げられます。あらかじめ撤退基準を決めておくことが、リスクを抑える鍵になります。
なります。国が認定した自治体の地方創生プロジェクトへの寄付に対して、損金算入と税額控除をあわせて寄付額の最大約9割が軽減される仕組みです。
参加できます。大手企業のような大規模投資でなくても、地元産品の販売連携やクラウドソーシングの活用など、規模に応じた関わり方があります。
計画段階から地域住民や既存の地元事業者との合意形成を進めることが基本です。特に地元の既存事業と競合しうる分野では、事前の調整不足が反発を招きやすいため注意が必要です。
まとめ
地方創生は自治体だけの取り組みではなく、企業にとっても人材確保やブランド向上、新市場開拓につながる機会です。関わり方は、調査や実行を請け負う支援会社の立場と、自社事業として実践する立場の2つに大きく分かれるため、自社がどちらを求めているかを整理してから、支援制度や具体的な企業の事例を参考に検討することをおすすめします。焦って成果を求めず、地域との信頼関係づくりに時間をかける姿勢が、結果的に持続可能な取り組みにつながります。